【第1回 勉強時間を確保するための転職】

前職での経験から、中小企業診断士資格取得を決意した山部浩平さん。その決意には、並々ならぬ想いがありました。
駆け出し診断士の初仕事
――現在のお仕事を教えてください。
生命保険会社で人事採用の仕事をしています。残業はなく、休みを取りやすい環境なので、本業とは別に中小企業診断士として地元埼玉県の和光市商工会で働き方改革に関する経営相談の仕事を始めました。2020年5月に中小企業診断士登録ができたので、商工会にあいさつにいったところ丁度タイミングよくお仕事をいただけました。
――経営相談のお仕事はいかがですか。
経営者とお話ししながら生産性を上げるための事業計画を策定する仕事なのですが、経営者の支援ができているという実感があります。いよいよ、中小企業診断士の仕事が始まったと思いました。
中小企業診断士の魅力の一つとして、経営者の役に立つことを一番に考えられるというのがあると思います。会社に所属していると、お客さまの利益と自社の利益がぶつかってしまうことがあります。そうではなく目の前の経営者のことを一番に考え、喜んでもらえることができるのでとても嬉しいです。
経営知識をつけてキャリアアップを目指す
――中小企業診断士を目指したきっかけを教えてください。
前職で、経営計画や予算を役員と一緒につくる仕事をしていたのですが、経営陣の方針が納得できませんでした。ただ、自分でもどう納得いかないのか、どのように直せばいいのかがわからなかったのです。
労働環境が過酷だったということもあって会社を辞めたのですが、その後の転職活動はあまりうまくいきませんでした。
そこで資格を取って転職に活かそうと考えました。経営に対する知識をつけ、会社のため、従業員のため、お客さまのためになることを言えるようになりたいと思いました。とはいえ、具体的に学びたい知識は決まっていなかったため、公認会計士や税理士などの専門領域がある資格ではなく、修得できる知識の幅が広い中小企業診断士を選びました。
人生の決断と妻への想い
――中小企業診断士を目指すにあたってどうされましたか。
中小企業診断士試験の勉強時間を確保するために、思い切って年収を下げて、残業がなく休みが取りやすい仕事に就くことにしました。試験を受けるための猶予期間として位置づけ、合格しないとこの生活からは抜けられないと自分を追い込みました。
――そこまでされたのには、なにか理由があるのでしょうか。
実は、会社を辞めたタイミングで入籍をしました。婚約はしていたのですが、このような状況だと普通は入籍をもう少し後にしようとなると思うのですが、妻はそれでも入籍しようと言ってくれたのです。そのときに、試験に合格して妻にいい生活をさせたいと思いました。応援してくれた妻には本当に感謝しています。
年収コンプレックスが消えた
――中小企業診断士になって変わったことはありますか。
年収が同世代と比べて高くないというコンプレックスが解消されました。会社からお金をもらうのではなく、個人としていただいた仕事をして稼ぐという経験を初めてしました。同じ100万円をいただける仕事でも、個人としての仕事の方が何倍も価値のあるものと感じられました。
この経験を通して、単に年収の額だけで自分の価値を判断するものではないと思いました。自分の仕事として価値を提供できていることが大きな自信になっています。
――素晴らしい変化ですが、いいことばかりでしょうか。
難しい試験に合格して「やった!」と思っても、中小企業診断士の世界では横一列になってしまいます。ここから差別化していかなければならないので、試験合格はスタート地点だと思います。さらに勉強していかないと中小企業診断士として活躍できないと思うので、まだまだ終わりではないですね。妻にいい生活をさせたいですし。

山本 淳 取材の匠メンバー、中小企業診断士
兵庫県出身、在住。大学卒業後、機械商社を経てテントメーカーにて経営企画、人事、総務などの管理部門に従事。2018年中小企業診断士試験に合格、2019年7月に登録。大阪府中小企業診断協会所属。