
前回に引き続き、2021年から独立中小企業診断士としてご活躍されている松木さんにお話いただきます。最終回では、養成課程での苦労話や培ったスキルについてうかがった他、診断士を目指す方々に向けてのメッセージをいただきました。
養成課程で身につけた能力
――養成課程で苦労したご経験についてお聞かせください。
2020年は新型コロナウイルスが発生した特殊な状況でした。例えば、小売店の実習では、本来、街頭アンケートを取ることになっているのですが、コロナ禍のため実施できず、お客様の生の声を収集することができませんでした。飲食店支援でも、テイクアウトやデリバリ―に特化した支援策を出してほしい、という声がありましたね。印刷業や製造業も同様で、今までの型通りには進められない難しさがありました。
一方で、コロナ禍で非常に厳しい状況にあるにも拘わらず、実習を受け入れてくださった中小企業の会社さんには、今でも非常にありがたく思っています。経営者の方々も現状を打破するために、皆さん本気でしたし、実習生も、何かためになる手を打ちたいという想いのもと、熱意を持って取り組みました。支援策発表の際には、社長さんだけではなく、従業員さん含めて複数人の方々が、お話を聞いてくださることが何度かあって、気持ちが引き締まりました。
――苦労されたご経験を通して培ったスキルはありますか。
具体的な提案力です。
診断士がすべきことは大きく分けて、診断と助言があります。現場の方が求めていらしたのは、できるだけ具体的な助言でした。例えば、精肉店の支援をさせていただいた際、実現性が高くて翌日からでも実施できるご提案をして、即決で採用いただいたケースもありました。
絵に描いた餅ではない、実行可能なご提案をする力は身についたかと思います。
養成課程に興味がある方、診断士を目指す皆さんへ
――養成課程に向いていない人、向いている人はどのような人だと思いますか。
資格を取得すること自体が目的という人には向いていないと思います。
モチベーションの高いチームメンバーと切磋琢磨して取り組む場ですので、資格だけが目的になると、気持ちや時間の面で厳しいだろうと感じますね。
向いている人は、中小企業診断士になって中小企業の支援を心からやりたいという想いがある方です。ただ、金銭面や要する時間などのハードルがあります。そこさえクリアできるなら問題ないかと思います。
――養成課程に興味をお持ちの方に向けて、コメントをお願いします。
本音を言うと、私も試験に合格したかったという想いが今でもあります。ただ、試験合格までには時間がかかることも多く、簡単なものではありません。
早く診断士として活躍するための一つの手段として、養成課程を検討するのもよいかと思います。まずは説明会に行ってみてはいかがでしょうか。養成課程修了者のお話を聞くと考えが変わるかもしれません。診断士にお仕事を依頼するお客様や、相談者からすると、資格を取得した過程は全く関係がありません。求められるのは、その場の対応や結果のみです。
志のある方はぜひご検討いただければと思います。
――最後に、診断士を目指している方に向けてメッセージをお願いします。
診断士の資格は、自分の可能性や、人生の選択肢も広げてくれると思います。
試験勉強のための勉強会や、養成課程を通じて様々なご経験を持つ方とお話できる機会があるなら、それはかけがえのないプライスレスなものだと思います。
合格を目指す途中で苦労することもあるでしょうけど、その苦労に見合う価値ある資格だと思いますので、ぜひ最後までチャレンジを続けてほしいと思います。
その先には、小規模事業者さんや、困っている方々、診断士に相談をしたい方々が、あなたを待っていますよ。

町中悟 取材の匠メンバー、中小企業診断士
大阪府出身。日本、イギリス、カナダで、ホテルスタッフ、コピーライター、バリスタ、アパレルスタッフ等、を経て、IT企業に入社。管理部長や事業推進役を担当。国内外の中小企業から大企業までを経験した後、2021年に中小企業診断士として独立。趣味は、競馬、帽子、読書、野球観戦。