【第2回 多年度受験を続けられたモチベーション維持の方法】
過去の記事:第1回

10年間という超多年度受験を経験した野村英樹さんは、資格取得に対するモチベーション維持の方法もユニーク。苦手科目の克服にもつながる、そのユニークな方法をうかがいました。
プロ野球の1シーズンをイメージして年間スケジュールを作成
――不合格が続く中で、もうやめようと思ったことはありませんでしたか。
正直、不合格になる度にもう辞めようと思ったことはありました。しかし、自分の場合は、多年度受験でも楽しく勉強を続けられる方法を自分なりに工夫して、モチベーションを維持することができました。
――具体的にはどのようなことをされましたか。
診断士試験の大まかな日程は、1次試験は8月、2次試験は10月です。毎年、1次試験対策の開始を4月と決めていたので、11月から翌年の3月末までの期間を中小企業診断士の受験対策以外の時間に充てることができました。自分は、この期間をプロ野球の「オフシーズン」と捉えて、関連する資格の受験を、シーズン開幕前の「オープン戦」と称して取り組むことにしました。中小企業診断士試験の学習に関連する知識を補完することが狙いでした。
――負担が大きそうですが、合格はできたんでしょうか。
中小企業診断士は不合格が続きましたが、関連する資格は、想像していたよりも簡単に合格できることがわかりました。「次はどの関連資格を受けようか?」。診断士試験に不合格になっても、関連資格の受験を考えながら年間のスケジュールを組むのが楽しくなりました。
「オフシーズン」のトレーニングで苦手科目を克服
――どのような関連資格を取得されましたか。
実際に取得した関連資格は「日商簿記検定試験」2級・3級、「ビジネス会計検定試験」2級、「ビジネスキャリア検定」、「ビジネス実務法務検定試験」3級、「マネジメント検定」、「ビジネスマーケティング実務検定」B級、「ITパスポート試験」などです。「ビジネス会計検定試験」の出題範囲は、決算書から収益性、効率性、安全性などの分析が含まれるため、診断士試験の財務会計を対策するうえでは、「日商簿記検定試験」より役に立ちました。「ビジネスキャリア検定」は、出題範囲が中小企業白書・施策以外の1次試験の科目と重なっているので、1次試験との親和性が非常に高い試験です。
――関連資格以外に取得されたものはありますか。
企業内の新規事業開発や企業・自治体の組織改革など、広く「起業」の実行を学べる社会人大学院で学位も取りました。コース名は「アントレプレナーシップ研究分野」でしたが、カリキュラムはほぼMBAの内容です。修士論文を提出する時期がちょうど2次試験と重なり大変でしたが、合格後の活動に役立っているので取得してよかったと思っています。
――関連資格や学位の取得はどのような効果がありましたか。
「日商簿記検定試験」と「ビジネス会計検定試験」の資格取得は、苦手意識のあった財務・会計の克服につながりました。特に、簿記や決算書が理解できるようになったことがよかったと思います。受験を始めた頃の2次試験の事例Ⅳは、C判定やD判定でしたが、合格した年はA判定。4科目中もっとも高い点数を得点することができ、大きな自信になりました。
――取得した資格はご自身のアピールに活用していますか。
名刺に中小企業診断士の受験期間中に取得した関連資格の名称を入れて、お客様との会話のネタにしています。しかし、関連資格の合格は、自己アピールとして活用できることよりも診断士資格の勉強を続けるためのモチベーション維持の効果の方が大きかったと思っています。
――本当に勉強がお好きなんですね。
「自分は勉強が趣味なんだ」と思い込ませていました。不合格が続いても、趣味である勉強を途中で辞めるという選択肢はなかったわけです。

古野誠治 取材の匠メンバー、中小企業診断士
東京都在住。IT関連の企業に継続して勤務。サービス開発・設計・構築、ISO認定取得などのプロジェクトを経験。コロナ禍を契機に、残り少ない会社人生を見直したことが、中小企業診断士を目指すきっかけとなった。2022年11月に中小企業診断士登録、東京都協会中央支部所属。