【第3回 変えたのは自分、変わるのも自分】
過去の記事:第1回、第2回

打ちのめされた2回目の2次試験。そこから再起を果たし、合格を勝ち取った阿久津康史さん。最終回は合格にいたった転機と受験生の皆さん、そしてご家族への想いをうかがいました。
凹み尽くして自分と向き合った
――もっとも苦労されたのが2次試験とお見受けしています。
独学だったので、自分がどの位置にいるのかわからなくてモヤモヤしていました。過去問は解けても本番で点数が伸びなくて、何かが足りていないと思いつつ、何が足りていないのかわからなかったんですよね。
――模試は受けられなかったのでしょうか。
模試は受けていて、結果はあまりよくなかったのですが、模範解答を信じなかったんですよ。キーワード採点をするような模試だったので、「キーワードが入ってないだけだ。書き方は間違ってない」と、変な自信を持って本試験にも臨んでいたんですね。
――もしかすると勉強法に自信があった。
1次試験は勉強した分だけ結果で返ってきて割と余裕で合格していたので、2次試験も時間をかけて勉強をすればそれなりの結果が返って来るという思い込みがありました。
――合格した年にはどんな転機があったのでしょうか。
答案作りの中でもう少し理論を使おうと思いました。与件文をパズルみたいに組み立てるそれまでの解答法では点数が伸びないことがわかったので、EBAの100字訓練サービスを使い、定型的なパターンを覚えて、設問解釈から理論に変換する練習を始めました。例えば、機能別組織のメリットとデメリットを聞かれた際に、知識で答えられるようにするイメージです。フレーズやフレームワークをカードに記入して、毎日持ち歩いて暗記をしていました。
――道具を溜め込んでいくようなイメージでしょうか。
そうですね。ありきたりな解答を書けるようになりました。「みんなが書くような解答がよい」と言いますけど、合格した年はそれができていてよかったと感じています。
それでも変えなかったこと
――合格した年は、2次試験の勉強に多くの時間を割いたのでしょうか。
最初の年からそうだったんですが、1次試験が終わるまでは2次試験対策をそこまでしていないんですよ。1次試験に落ちたら元も子もないので。
――ちなみに2次試験1週間前に禁煙を始め、試験の休憩中は副流煙を浴びていたと聞きました。
それはぜひ書いておいてください(笑)まず禁煙、試験の直前に絶対しない方がよいです。私は歯の施術の関係で必要だったんです。試験当日は副流煙を求めて喫煙室で休憩時間を過ごしました。「タバコを吸いたい」という気持ちと向き合いつつ、次の事例の準備をしていました。
――ご自身を落ち着かせる習慣は保ち続けたのですね。そして念願の合格。その時の率直な感想はどうでした。
もう、とにかく嬉しかったですね。あの喜びは一生忘れないですね。255点での合格でした。
どのように自身と向き合うか
――これから独学で中小企業診断士を目指す方にメッセージをお願いします。
独学は費用面などよい点もありますが、2次試験は独りよがりな考えに陥る可能性があるので特に気をつけた方がよいですね。受験当時の自分にアドバイスができるのなら、答案を他人にみてもらえる、例えば受験生支援団体の勉強会などをすすめると思います。
――社会保険労務士とのダブルライセンスを狙う方にもぜひ。
取得をしてみて資格の両立が難しいと感じています。特に時間的にです。副業での資格の両立は限られた時間の中ではとても厳しいです。どの資格をどう使うか、資格をどう組み合わせるかは勉強前からイメージを持っていた方がよいでしょう。
資格を取ってみえたもう一つの世界
――最後に、合格後ご家族からは何とお声がけがありましたか。
おめでとう、と。子どももわかっていましたね。試験勉強をやっている父の姿を通して、何度か落ちたということも最終的に合格したことも、子どもの目線でみえていたと思います。合格後の思い出として印象深いのは、合格がわかって真っ先に自分で寿司を買いに行ったんですよ。全部で一万円くらいの。その晩は大トロパーティでした(笑)ただ、私か食べたかったんじゃないんです。ありがとうの気持ちで、家族のために何かしてあげたかったんですよね。

H.M 取材の匠メンバー、中小企業診断士
1992年生まれ。東京都出身。町役場に6年勤務し健康増進啓発、秘書・特命業務、コミュニティバス導入、米軍基地対応や議会運営などに従事。現在は役所業務、まちづくりの経験を基に、自治体との取り組みを希望する企業への支援を行っている。業務や趣味で全国47都道府県に来訪しブログや動画プラットフォームで発信を続けている。2023年に中小企業診断士登録。