【第1回 会社だけでなく外にもネットワークを広げたい】
商社で様々な経験を積みながら中小企業診断士の資格を取得した大島さん。柔和な表情がとても印象的です。第1回は、勤務先での仕事と中小企業診断士を目指した理由について、お話をうかがいました。
多様な部署を経験したゼネラリスト
――商社に長くお勤めとのことですが、現在のお仕事について教えてください。
化学品の専門商社で戦略企画室という部署におりまして、主に営業のバックオフィスで予算策定や計数管理などをやっています。新卒以来ずっと同じ会社におりまして、今の仕事はもう10年近く従事しています。今の部署では私が一番長いのではと思います。
――海外勤務も経験されているとのことですが、これまでのキャリアについて教えてください。
新卒で入社し、最初の5、6年は法人営業として化学品の原料販売に携わっていました。その後、社内のローテーション制度により、財務部門に異動になります。財務部門では為替管理や資金繰りなどを経験しました。その後海外勤務となり、台湾の子会社で管理全体を担当しました。台湾から日本に戻った後、国内子会社の管理全般を担当し、現在は営業のバックオフィスの業務で約10年間、というキャリアになります。
――最初に配属された法人営業では、どのようなことをされていたのでしょうか?苦労されたことはありましたか?
メーカーの意見が強い業界でして、お客さんの声をとにかく徹底的に拾ってきてメーカーに情報伝達をするということをやっていましたが、そこで苦労しました。メーカーの思惑通りの情報を収集できなかったり、メーカーの対応に追われ、自分たちが売りたい商品を販売する時間を作れなかったりなどがありました。自分の思うような営業ができなかったという印象です。
将来を見据えたネットワークづくり
――1つの会社で色々な経験を積んだ大島さんが、なぜ中小企業診断士を目指したのか、教えてください。
理由として大きいのは、会社以外でもネットワークを作りたいと思ったことです。新卒以来ずっと同じ会社に勤めていますので、仕事もそうですが、たとえば休日も会社の人とゴルフに行くなど、とにかく社内にしかネットワークがなかったです。今後間違いなく職業人生が伸びていく中で、将来を見据えたら、会社内だけでなく社外にもネットワークを広げたいと思いました。
――ネットワークづくりが理由というのは、珍しいですね。中小企業診断士以外にも、他の資格や他の広げ方もあるだろうと思うのですが、なぜ中小企業診断士だったのですか?
以前、中小企業診断士は独占業務がない分、診断士同士のネットワークが強固だという話を聞いたことがあったので、興味を持っていました。またネットワークとは別の理由ですが、経営の知識を勉強できるというのも魅力に感じ、中小企業診断士を目指すことにしました。
仕事の見え方が変わった
――中小企業診断士の資格を取られてから、お仕事での変化や生まれたメリットはありますか?
直接的に業務に活かせる点は、あまりないのが実態です(笑)
ただ知識を得たことで、仕事の見え方や考え方が変わったところはあります。たとえば、買収案件を進めていく際に投資採算を作るのですが、以前はマニュアルを見様見真似しながら採算を作成していました。中小企業診断士の資格取得後はその業務の見え方が広がり、買収の全体像や採算の考え方が理解できるようになりました。これは大きな変化だと思います。
――法人営業時代のご自身に今アドバイスができるとしたら、どういうことを伝えたいですか?
若かったこともあって、メーカーが求める本質的な要求をわかっていなかったと思います。これを聞いてこいって言われたら、単純にそれを聞いてきただけだったりしていました。若いころの自分には、会社経営も含めた要求というのをもっと噛み砕いて、その1歩先を読んだ情報収集をできるといいぞ、と伝えたいですね。
安田 和博 取材の匠メンバー、中小企業診断士
東京都出身、東京都江東区在住。東京都中小企業診断士協会 城東支部所属。早稲田大学第一文学部卒業後、出版専門商社(取次)にて、ネット書店運営から子会社経営管理などを経験。現在は出版関連業界専門金融機関にてコンサルタントとなる。学生時代の書店アルバイトから始まり、本まみれの半生を過ごす。またミュージシャン、パフォーマー、舞台制作という顔も持ち、音楽パフォーマンス団体の広報業務を長く担当、SNS活用に長ける。