【第3回 養成課程は戦略的に選ぶ時代】
過去の記事:第1回、第2回
松尾さんは、キャリアコンサルタントやITコーディネータの資格も併せ持つ、独立診断士です。20年以上勤めた出版社を退職し、2021年に法政大学大学院の中小企業診断士養成課程(以下、養成課程)に進み、中小企業診断士登録されました。第3回は、養成課程を通して得られたものと、そこからつながるご自身のキャリアの展望をうかがいます。
スタートダッシュが早い!養成課程の出身者
――養成課程に入って感じたことはありますか?
入学した時に印象に残っているのは、同期35人中の半数くらいが、一度も2次試験を受けずに養成課程に進んでいたことです。ある意味、戦略的に養成課程を選んでいました。特に、20代、30代の若い世代ほどその傾向が強かったですね。養成課程に進む人の多くは、2次試験に受からなかった人だと思いこんでいた私は、正直驚きました。
――“戦略的に”という点について、詳しくうかがえますか?
卒業してから気付いたのですが、養成課程の人はスタートダッシュが早いです。私は今、独立診断士と会う機会が多いですが、養成課程出身者が意外と多いなという印象を持っています。仕事を辞めているので、独立せざるを得なかったということもありますが、5回の診断実習で得た経験はもちろんのこと、授業で発表する機会があり、プレゼンや資料作成のスキルが上がるなど、スムーズに独立しやすい環境があるのだと思います。あとは、知識の面や人脈の面もあります。
――知識としては、例えば何が役立っていますか?
傾聴力です。必修科目ではありませんでしたが、コーチングの授業を受けて、そこで学びました。それを機にカウンセリングに興味を持ち、養成課程修了後にはキャリアコンサルタントの資格を取得しました。キャリアコンサルタントもコーチングと同じく、傾聴力が大切なので、養成課程で学んだことがとても役立っています。
養成課程修了後に続く、人とのつながり
―― 人脈、人とのつながりという面ではいかがでしょうか?
養成課程は、先生との距離が近いです。今でもつながりがあって、先生の仕事を手伝ったり、仕事を紹介してもらったり、相談もできます。当時の私のゼミの指導教員は、中小企業診断士ではありませんでしたが、大学教授でしたのでアカデミックな話ができました。また、別の先生には実務や進路の相談をすることもできました。その他に、私の所属していたゼミではアフターゼミといって、卒業後も毎月ゼミ生が集まって発表する機会があり、その後は一緒に飲むこともあります。先生と生徒という関係ではありますが、大学生の頃よりも近い距離で話せるので楽しいです。
――松尾さんは、楽しみながら人脈を広げられているようですね。
人脈を作ろうと思ってやっているわけではないのですが、中小企業診断士の仕事をしていると会う人とは何度も会いますし、紹介もしてもらえるので、つながっていく気がしますね。養成課程もそうですが、中小企業診断士になった後も支部活動などでもつながりが増えました。いろいろな業種の人がいるので面白いです。
経営者と従業員をつなぎたい
――最後に、松尾さんの今後について教えてください。
「人の問題がない中小企業はない。」というのが、5社の診断実習から得た私の結論です。事業承継、人材不足、人間関係など、大企業よりもその傾向は顕著でした。養成課程修了後にキャリアコンサルタントを目指したのはそのためです。中小企業診断士としては経営者側、キャリアコンサルタントとしては従業員側と、双方の目線を持つことができます。今後は、例えば従業員と社長が合わない、企業理念が伝わらないといった時に緩衝材として間に入っていくなど、両者をつなぐ役割を担っていきたいです。
山田 美鈴 取材の匠メンバー、中小企業診断士
千葉県出身、東京都在住。マーケティングリサーチ会社を経て、メーカーにて顧客満足度調査の企画・分析、営業支援等に従事。2022年に中小企業診断士試験に合格し、アパレルやサービス業を始めとする中小企業の経営診断に携わる。市場や事業者の実態をわかりやすく伝え、事業活動につなげることモットーに活動中。