【矢野達也さんインタビュー】中小企業の実態に触れて診断士受験を決意。徹底して「穴を埋める」その学習法とは。

【矢野達也さんインタビュー】中小企業の実態に触れて診断士受験を決意。徹底して「穴を埋める」その学習法とは。

【第2回 成功に近道なし】
過去の記事:第1回

大手食品メーカーのマーケティング部門で活躍している矢野達也さん。中小企業の実態を目の当たりにして、中小企業診断士資格を目指すことにした。矢野さんが短期間で試験合格に至ったコツはどこにあったのだろうか。

短期合格に向けた戦略

矢野さんが試験勉強をスタートしたのは2021年5月。コロナ禍で出社制限を余儀なくされた一方で、通勤時間が浮いていた。さらに当時から単身赴任の日々を送っており、学習時間の確保には困らない。とは言え、1次試験の開催は8月初旬。試験日まで3ヶ月を切る中、彼は合格に向けた戦略を立てる。学習期間は短いけれど試験の雰囲気を知る必要もあると考え、その年は2科目に絞ってチャレンジすることにした。

「いろいろネットで調べると、『暗記系』の科目は2次試験にあまり関わらないという情報があったんです。だから2次試験と関連度の高い科目を後回しにして、『暗記系』科目を先にやったほうがいいと考えました。選択したのは『経営法務』と『経営情報システム』です」

1次試験7科目の中で、「企業経営理論」・「運営管理」・「財務・会計」は2次試験と密接に関係しているとされる。そこでまず矢野さんは、2次試験受験を翌年の2022年10月に設定。この3科目を除いたうち、多くの専門用語を覚える必要がある2科目を2021年度の受験科目としてチョイスしたと言う。結果として、その年は「経営法務」に合格する。普段から業務上で知財対応が必要だったことも、この科目の短期合格につながったようだ。

市販のテキストと模試を活用

1次試験の勉強は独学だったと語る矢野さん。利用した教材について尋ねると、おもむろに大きな紙袋から一冊の参考書を取り出した。この日お会いした際に抱えていた紙袋には、彼が使っていた参考書がぎっしりと詰められていたのである。その用意周到な姿勢に改めて驚いた。

「これのいいところは、テキストに加えて厳選された過去問が掲載されていることですね。テキストを読んだらすぐ問題を解く。これを繰り返しやるのが自分には合っていましたね。それに動画のサービスもあって、テキストを読んでもわからないところは映像を見て学習していました」

矢野さんは愛用の参考書についてそう解説してくれた。さらに1次試験では、資格学校が行う模擬試験も有効だったと明かす。

「模試では過去問中心に構成される参考書にはない、新たな知識に関する問題も出ます。特に『中小企業経営・政策』は直近の『中小企業白書(日経印刷)』から出題されるので、過去問だけでは対応できない。模試はそこに触れるきっかけになりました」

知識の穴を徹底的に埋める

矢野さんが持ってきた参考書は、書店にある新品よりも若干膨らみがある。彼が適当にページを開くと、ところどころ赤字で記入してあるのが見えた。それに何やら小さい紙が貼り付けられている。聞けば、過去問で間違えた箇所について要点を追記、解説ページで補足されているわかりやすい図解があれば印刷してテキストに貼り付け、知識を補強していったというのだ。

「過去問を何回も解く。できなかったところはテキストを再確認する。すると毎回間違えるところを繰り返し見るようになる。やっぱり忘れていくので、空き時間にこういう作業を繰り返していく感じですね。それに自分は、部分的に対処するより網羅的に確認できる方が合っていた」

矢野さんは自分の学びを詰め込んだ参考書を眺めながら当時を語った。知識の穴を見つけ、そこを徹底的に埋めていく。それはコツというよりも、学習方法の王道ではないか。話を聞きながら、新商品開発のために地道な作業を積み重ねていく矢野さんのイメージがオーバーラップした。

「成功に近道なし」。彼はまさにこの言葉を体現しているようだ。

次回は、矢野さんの2次試験対策と、中小企業診断士登録後の活動について迫る。








北川 雅也

北川 雅也 取材の匠メンバー、中小企業診断士
1965年石川県生まれ、神奈川県在住。大学卒業後、証券会社へ入社。未上場企業のIPO支援に従事する。その後、中小IT企業に転職、経営企画担当として中期経営計画策定、予算管理に取り組む。管理部門担当役員に就任後は、年功序列型人事制度から役割型人事制度への改革、計2件のM&A(企業買収)を担当するなど、経営戦略上の実務に携わる。2024年中小企業診断士合格、登録。東京都中小企業診断士協会三多摩支部所属。

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