【矢野達也さんインタビュー】中小企業の実態に触れて診断士受験を決意。徹底して「穴を埋める」その学習法とは。

【矢野達也さんインタビュー】中小企業の実態に触れて診断士受験を決意。徹底して「穴を埋める」その学習法とは。

【第3回 心にともった火の行方】
過去の記事:第1回第2回

大手食品メーカーのマーケティング部門で活躍している矢野達也さん。難関の2次試験は見事一発合格を果たす。今回は矢野さんの2次試験対策と、中小企業診断士合格・登録後の活動状況について大いに語ってもらった。

2次試験のための「引き出し」を作る

矢野さんが2次試験対策に着手したのは1次試験終了後。その春に参加した診断士受験生支援団体のセミナーで、先輩診断士から助言を得ていた。1次試験から始める初学者は2次試験のことは考えず、まず1次試験対策に集中した方がよいと言う。そのアドバイスを信じた。

2022年8月、1次試験後に自己採点で通過を確信した彼は、多くの受験生が手にする先達の再現答案集と事例Ⅳに特化した問題集で2次試験の勉強を開始する。ところがまったく歯が立たない。2次試験の設問に対して1次試験の知識をどう生かすか、2次試験用の知識にどう変換するかが大事なポイントだと早々に悟った。

「そこで市販の対策シートをベースに、どんどん書き加えて自分オリジナルの冊子を作ったんですよ。2次試験では企業に対する助言系の問題が多い。だからいろんな問いに対する解答の際の引き出しになるように、必要な知識を集約しておくんです。例えば『客単価の向上策』・『主要顧客に依存するメリットとデメリット』・『OEMのメリットとデメリット』・『直販の課題と対応策』といった切り口で。極端に言うと、与件文を読まなくても設問を見るだけである程度は書ける、その位になるまで繰り返し眺めていました」

A6サイズ程度の紙の束を、単語帳に使うリングでまとめた手製の冊子。矢野さんはそれを例の紙袋から出しつつ話す。ところが、いくつか切り口をあげた際も冊子の中身は見ていない。それだけ頭の中にインプットされているのだと充分理解できた。

受験生支援団体や『白書』の活かし方

2次試験対策では、受験生支援団体が開催する勉強会に参加したことも功を奏した。会では過去問を題材にして受験生から事前に解答を集め、当日は受験生同士でお互いの解答に対し意見を述べ合う。このプロセスで多くの気付きがあり、急速に解答の「型」を会得していった。

ただ矢野さんも例に漏れず、事例Ⅳには苦労する。毎日問題に触れて繰り返し解いていたが、一向に正答にたどり着けない。それでも本番は絶対に白紙部分を作らない、ここまではわかっていますよというアピールをしようと試験に臨んだ、と矢野さんは振り返る。蓋を開ければ事例Ⅳが一番の高得点だったというのが、この試験の不思議なところだ。

矢野さんは試験勉強中、「中小企業白書(日経印刷)」もすべて読んだと言って実物を見せてくれた。確かに大量の付箋があちこちから飛び出している。この「白書」について、いかにも彼らしい逸話を披露してくれた。

「『白書』はわりと面白いと思ったんですよ。ところどころ中小企業の事例のコラムがあって、こんな風に頑張ってるんだとか、金融機関がこんな支援をしているんだとかいうのが書いてある。自分もこうした取り組みに関われたら、という思いがモチベーションになりました」

地域活性化の実現に向けて

2023年9月に診断士登録した矢野さん。現在は東京都中小企業診断士協会中央支部と神奈川県中小企業診断協会に入会し、企業内診断士として活動している。研究会の方は「かながわ農食支援グループ」に参加。地域企業と交流していろいろな悩みを聞く機会を得た。

「モノは作ったけどお客さんに伝わらない。売れないので量を作れず、競合に対して割高になってしまう。ブランディングができずにそんな状態で悩まれるケースは結構あると感じますし、ブランド作りの応援ができたら楽しいだろうと思います」

「誰を対象とするのかというターゲティング、お客さんのインサイトを深く洞察したうえでの商品企画、それを伝えるコミュニケーションについてもお伝えできることがあると思います」

勤める会社でも副業が解禁になっているという矢野さん。地域活性化について夢は拡がる。社外で得た経験を本業にも還元することで、新たな刺激を与えられると意気込んだ。彼の心の中の火は、診断士資格という追い風を得てその勢いを増していた。








北川 雅也

北川 雅也 取材の匠メンバー、中小企業診断士
1965年石川県生まれ、神奈川県在住。大学卒業後、証券会社へ入社。未上場企業のIPO支援に従事する。その後、中小IT企業に転職、経営企画担当として中期経営計画策定、予算管理に取り組む。管理部門担当役員に就任後は、年功序列型人事制度から役割型人事制度への改革、計2件のM&A(企業買収)を担当するなど、経営戦略上の実務に携わる。2024年中小企業診断士合格、登録。東京都中小企業診断士協会三多摩支部所属。

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