【第1回 好奇心の先で出会った、中小企業診断士という資格】

化学メーカーで研究開発の仕事をしている山本祥晴さんは、2023年度に中小企業診断士試験を突破した。30代前半での、ストレート合格だ。「中小企業診断士の資格は、人生の質を豊かにしてくれる」と、合格後の活動を振り返ってくれた山本さん。理系の修士号取得という経歴から中小企業診断士に興味を持った「契機」、ストレート合格するための「作戦」、そして診断士活動に込めた「思い」を、3回シリーズでお届けする。初回は、「契機」についてお尋ねした。
顧客とも他部署とも接点を持つ研究開発職
「外にも積極的に出ていく研究開発職」それが、山本さんの話をうかがう中で感じた印象だ。山本さんは大学院の修士課程で有機化学を研究した後、8年ほど前に主にB to Bビジネスを行う化学メーカーに入社した。現在担当するのは、新製品の開発。開発といっても、研究室にこもって実験を繰り返すような日々ではない。山本さんの仕事は「顧客のニーズ」が出発点となる。だから、顧客の話を聞くことが重要だ。そこから、要望に合う製品を紹介したり、技術的なフォローを行ったりする。営業や企画、工場の担当者とともに仕事をする機会も多い。有機化学の専門知識をもとに、社内外のステークホルダーと関わりながら開発を進めていくのが山本さんの役割だ。
成熟産業の中で自らを成長させる道を模索
山本さんと中小企業診断士という資格との出会いは、偶然だった。社内に他の中小企業診断士がいたわけではない。コロナ禍で趣味のサッカーやフットサルがあまりできない中、当時自分で行っていた勉強の本を探すために書店に出かけたとき、たまたま中小企業診断士の本が目に入った。手に取ってみるとコンサルティングの資格だということで関心を惹かれたという。山本さんは当時、経営の視点を持つことに興味を持っていたからだ。
MBAにも魅力を感じていたが、かなりの時間と費用がかかる。「中小企業診断士は、自分で勉強すれば取ることができるかもしれない」山本さんはそう考えた。それが、この資格を目指すきっかけだった。
山本さんが働くのは、成熟期を迎えている業界だ。その中で日々の仕事に取り組むうちに「この業界は今後どうなっていくのだろう」とビジネスのあり方や経営の視点に興味を持つようになった。特に将来が不安だったわけではない。とはいえ、研究開発の現場は高い専門性が求められる一方、掘り下げた知識をほかの分野に応用しづらい面がある。こうしたことを考えるうちに、ビジネスの幅広い分野を体系的に学ぶことができる中小企業診断士への関心を深めていった。
中小企業診断士を目指すのに、文系も理系も関係ない
山本さんが中小企業診断士への挑戦を決めた背景には、知らないことを学ぶのが好きだという探求心も影響しているように感じられる。「学ぶことが苦ではない」、「新しいところに踏み出すということは面白い」と山本さんは語る。普段の仕事でも、これまでと同じ仕事を繰り返すよりも新しいことの方が楽しいという。これは仕事に限ったことではない。趣味でPythonを使ったプログラミングをしたり、WordPressのサイトを構築したりと、常に何かに挑戦している。
中小企業診断士の1次試験は、「経済学・経済政策」や「経営法務」、「企業経営理論」など、文系寄りの科目が多い。しかし山本さんは、「文系だからとか理系だからとか、そんなのは関係ないと思っています」と言う。自身の専門分野にこだわることなく好奇心を広げていく中でたどり着いたのが、中小企業診断士だった。

R.I 取材の匠メンバー、中小企業診断士
情報通信業で企画や管理の仕事に従事。経営について体系的な知識を身につけるため、中小企業診断士を目指すことを決意し、2024 年度試験に合格。受験を通した一番の収穫は「自発的に学び続ける面白さ」を実感できたこと。診断士と農林水産業、英語(通訳案内士にも興味あり)を結びつけていけないか、方向性を探索している。趣味は、程よいペースでのランニング。
