【第1回 試験勉強は始めない(習慣1と習慣2)】

N.Kさんは、法人営業20年のベテラン。笑顔が素敵な男性である。何を聞いても、常に笑顔で、好奇心旺盛に答える。強みはロジカルシンキングとお客様の期待に確実に応えること。営業の最前線で忙しい毎日を送る中、わずか1年の勉強で、2025年度に中小企業診断士試験に合格した。彼のストレート合格を支えたのは、誰でもできる5つの習慣。
N.Kさんのストレート合格への道を3回シリーズで追う。
診断士試験を目指した理由
「いつか会社の経営メンバーに加わるのではないか」、N.Kさんは漠然と心に抱いていた。大好きな会社で、将来性もある。居心地のよい人間関係。仕事はとても充実していた。年齢を重ね、社内の地位があがっていくにつれ、周囲の期待に応えたい、恩返しをしたいという気持ちも芽生えた。もともとビジネス書を読むのが好きだったこともあり、経営の勉強をしてみようと考えた。
すぐに診断士試験を受けると決めたわけではなく、大いに悩んだ。世の中にはたくさんの選択肢がある。そして、思いがけない再会があった。N.Kさんの決断にもっとも影響を与えたのは、大学の先輩。遊び仲間だった先輩が、中小企業診断士になり、資格学校で講師をしている姿を見た。裾野の広い中小企業診断士の仕事の素晴らしさを知った。営業の仕事で中小企業の社長と接する機会が多かったので、中小企業診断士として仕事をしている自分の姿をイメージできた。診断士試験に挑戦すると決意した。
では、N.Kさんはどうやって試験勉強を進めていったのか。
習慣1 最初の1週間は勉強をしない
「けっこう大事なんですけど、なにかをやろうと思って、最初って気合いが入っているので、勉強だったら、ごっそり本を買ってきて毎日2時間やるぞ、みたいな形でスタートするパターンがすごく多いと思うんです。だけど、それってめちゃめちゃしんどくて、絶対続かないんです」。N.Kさんは試験勉強が長続きしなかった苦い経験を持っている。診断士試験では同じ失敗は繰り返さない。そこで取りいれたのが、習慣化スキル。我慢をするとか、無理をするとか、自分にストレスをかけるとか、そういうことはしないで、勉強をする環境をつくるのが何より大事だと考えた。
「勉強を始めなかったんですよね」、一見不思議な話であるが、N.Kさんにとっては、この発想の転換が必要だったのだ。普段の生活では夕食後、ソファーに寝転がって、テレビを見たりスマホを眺めたりして、だらだらと過ごしていた。試験勉強を決意してからも、夕食後の同じ時間帯、同じように過ごした。勉強をしない。でも、場所は机の前。2時間から3時間、机から離れなかった。1週間経つと、夕食後、自然と机の前に座っていた。
習慣2 少しだけ勉強して3週間を過ごす
机の前に座っているだけの1週間を過ごしたあと、すぐにトップギアで勉強を開始したわけではない。N.Kさんは慎重だった。
夕食後の時間帯、机の前にいる生活を続ける。少しずつ勉強をしてみる。30分勉強して、残り2時間30分はだらだらと過ごす。まだ無理はしない。自分の気持ちと体が勉強になじむのをひたすら待った。いつの間にか勉強する時間が増えていた。3週間が経過した。
これで環境は整った。このあと積み重ねた勉強時間は約1,300時間。1日平均3.5時間以上である。ストレート合格の平均勉強時間は1,000時間とされている。忙しい営業マンがわずか1年で到達した累計時間の偉大さがわかる。 次回は本格的な試験勉強をしていた時期の習慣を2つ紹介する。

加藤 央 取材の匠メンバー、中小企業診断士
エンジニアリング会社で経営企画に従事する企業内診断士。2025年中小企業診断士登録。実務補習で「伴走支援」に出会い、中小企業診断士の仕事の奥深さに魅了された。企業法務、人事労務、海外事業支援、経営企画などの経験を生かして、「伴走支援」を実践躬行する。
