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大学で社会学と組織論に携わっている前山です。
今回で、売れプロの仲間たちのブログでの最後の投稿となり。 すこし寂しいところではありますが、最後まで良い情報がご提供できるよう頑張りたく思います。
企業活動と社会貢献の一挙両得実施の「CSV(共通価値の創造)」のお話
さて、今日はCSV(共通価値の創造)のお話をしたく思います。これって何? 実は経営学者のマイケル・E. ポーターとマーク・R. クラマーが提起した「企業活動のニーズ」と「社会的ニーズ」をともに満たすことにつながる企業の活動として着目されてきているものです。例えば、日本や世界各地で,コーヒーの苗木を提供して何十万人もの農業生産者の技術向上とそれによる居住生活安定をすすめて、もって収益をあげるネスレ社の活動などがよく知られています。農業生産物の質と供給の安定による収益向上と関わる人々の地域生活の安定! こうしたCSVの活動が着目されています。
個人・家族;コミュニティの向上;地球環境の改善への眼差しを含んで
また、経済活動の向上が社会的価値の向上と一体となるものとするCSVの考え方は、①「マーケティング活動を通じて、健康に良い料理、食習慣、ライフスタイルの推進」といった個人や家族の社会的価値の向上につながるもの、②「サプライヤーである農業従事者の農場の経済状態の改善」や「サプライヤーである農業従事者の食生活の改善」などコミュニティの向上につながるもの、「製品包装の環境パフォーマンスの改善」「食品ロスと廃棄物の削減」といった地球・環境にかかわるもの、といったものがあげられています。アフターコロナの時代にぴったりと感じられます。
でも、企業の貢献活動(CSR)とおんなじじゃないの?
でもこう考えられる方もおられると思います。「いやいや、すでに『企業の社会的責任』(CSR)という企業の貢献活動があるじゃないか!企業が社会に貢献するものだよね。」そう、その通りなのです。よく似ている考え方です。そこで、ちょっと考案者のポーターの言葉を見てみたいと思います。
「共有価値の創造とは、経済的価値を創造すると同時に、社会のニーズや課題にも取り組むためのフレームワークです。企業が慈善事業の寄付者としてではなく、企業として行動すれば,収益性を向上させると同時に、環境パフォーマンス、公衆衛生と栄養、手頃な価格の住宅と経済的安定、その他社会の福利の主要な指標を改善することができるのです。」
マイケル・ポーターらの考え
ここに、両者の考え方の違いがよく表れています。これまでの「企業の社会的責任」(CSR)の考え方は、企業が慈善事業の寄付者として活動するというところに力点があるものでした。
他方、ここで取り上げているCSV(共通価値の創造)は、「経済的価値を創造すると同時に、社会のニーズや課題にも取り組むためのフレームワーク」とのこと。そしてそれは、「企業として行動すれば、収益性を向上させると同時に、環境パフォーマンス、公衆衛生と栄養、手頃な価格の住宅と経済的安定、その他社会の福利の主要な指標を改善することができる」とするものです。企業活動が自然と社会の向上になってゆくものというとてもナチュラルな考えということになります。
日本企業のCSV活動
日本の企業でも、リコー、アサヒ、伊藤園などがCSV活動に積極的な企業として知られています。ただし、日本の場合には、CSVと言いながらその中身とするとCSRであるものが多いといったことも報告されています(芳澤 2021)。
CSV活動に関する批判も ~本物とするにはどうしたらよい?
おわりに、興味深い批判を二つご紹介して終わりにしたいと思います。
第一の批判は、CSV は CSR の基底部分にあたる「社会に対して負の影響を与えないとする責任」を含んでいないとするものです。そのため、CSV の取り組みは、仮に企業に高いモラルがないまま掛け声だけでも実行できてしまうものとなる、という批判です。
第二に、CSVは、もともと利潤獲得をベースとする社会貢献であるがゆえに、CSVに取り組んでいるとする企業が法令に違反するような行動をとったり、環境保護をビジネスとしている企業が生産・流通過程などにおいて平気で環境汚染・環境破壊をしたりすることが多々ある、というものです。結局のところ、CSV とは企業の行う全ての活動を利益に結びつけるために生み出された概念にすぎず、企業に法的責任や倫理的責任といった社会的責任を果たさせるためのものではない、という厳しい声があります。
過日、中小企業振興条例に触れてそれが地域全体の底上げにかかわっていることに触れました。今や、地域全体の底上げに本気で企業がコミットすること、その仕組みをシステムとして作ることが求められる時代です。CSVの考え方が本物として根付くよう、社会全体で推進することが求められていると感じています。
今後ともよろしくお願いいたします
最後に一言。前山は、社会学と組織論の観点から,企業組織と社会とがどのような関わりにあるのか? そしてその関わりの中で、働くスタッフはどのようにその人生を生かされ、またそれによって企業はどのように活性化するのか? その観点で「人をど真ん中に据えた組織改革」を追求してまいりました。その視点でこのブログでも、ワークフォース・ローカルガバナンス、CSV(共通価値の創造)、組織内の助け合い行動論(OCB)などをお話してまいりました。今後研究会なども進めたく思いますので、ご関心のある方はお声がけいただければ幸いです。
これまでお読みくださって、ありがとうございました。お読みいただいた方、また青木塾長、仲間のさらなるご活躍を祈念しておしまいといたします。感謝
前山総一郎(福山市立大学 都市経営学部 教授;文学博士<社会学>)
<参考文献>
・Porter,M.E. and Kramer,M.R., 2006,Strategy and society: the link between competitive advantage and corporate social responsibility, Harvard Business Review, pp.76-89
・芳澤輝泰,2021,「CSR・CSV の概念再整理と関係性の見直しおよび日本企業における CSV の認識度合いと実際の取り組み」『商経学叢』第67巻第3号
・前山総一郎,2022,「米国におけるワークフォース・ローカルガバナンスの形成とワークフォース仲介機関としてのコミュニティカレッジの機能」『都市経営』No.14
