若い女性は、なぜ野毛のせんべろに通うのか?

NO IMAGE

※にほんブログ村ランキング参加中です! 1日1回、皆様の温かいポチをお願いします!

にほんブログ村 士業ブログ 中小企業診断士へ にほんブログ村
 

「行ってらっしゃい!」

ハシゴ酒が当たり前の横浜・野毛の飲み屋では、会計を済ませて店を出るとき、こんな声をかけられます。つい背中を押され、先日も旧友と6軒を巡ってしまいました。お互い還暦を過ぎているというのに。

こんにちは。「売れプロ」11期、日本経済新聞社に勤める中小企業診断士の水野泰広です。“横浜のチベット” の異名を持つ田園都市線沿線に住む私ですが、コロナの期間中、在宅勤務の運動不足を解消すべく、港の見える丘公園や山下公園から、みなとみらいエリアへ、海沿いをウオーキングする機会が増えました。大さん橋から望む みなとみらいの夕景、夜景は、いつまでも眺めていられるほど好きです。疲れた心をリセットできます。

◆ 野毛「せんべろ」の誘惑 若い女性客でにぎわう

さて、帰路は市営地下鉄の桜木町駅からなのですが、そのまま電車に乗れることは、ほぼ100パーセントありません。駅がある桜木町ぴおシティの地下には、人気の安い立ち飲み屋、いわゆる「せんべろ」(1000円でベロベロに酔える店)がズラリと軒を連ね階段を昇れば、そこは魔境・野毛の入り口だからです。この界隈には新旧合わせて約600軒の飲食店がありますが、ここ数年で明らかな変化が見られます。それは、若い女性客が圧倒的に増えたことです。

野毛一帯の繁栄は、戦後の闇市からスタートしています。周囲を福富町や黄金町などの風俗街に囲まれ、決して治安の良いエリアではありませんでした。近くには現JRAの場外馬券売り場があり、週末ともなれば、赤鉛筆を耳にはさみ、競馬新聞を片手に怒声を上げる 赤ら顔のおっさんたちが、昼から飲み屋を占拠していました。私も時にその一員でしたが(笑)、決してモメ事を起こさぬよう注意していたものです。

 

◆ オヤジギャル、今は昔 スタイリッシュに乾杯

そんな街を、今は若い女性たちが席巻しています。立ち飲み屋では日の高いうちから2,3人、あるいは10人近いグループが笑顔でジョッキを酌み交わし、ピンでさっそうとハシゴする強者(1軒に長居しないのが暗黙のルール)もしばしば見かけます。バブル期に中尊寺ゆつこさんのマンガから “オヤジギャル” が話題になりましたが、当時のような野暮ったさ、ふてぶてしさはありません。きれいな身なりの方が多いことも特徴です。

◆ 都心の最新ビルも影響? 2+2=4つの理由

(ここからが本題ですが) 理由を考えてみました。一つは、野毛固有の要因です。

1.店の入れ替わりと好循環

三菱重工横浜造船所が1983年に移転して不況に陥った野毛を、2004年、みなとみらい線開通による東急桜木町駅の廃止が追い打ちをかけます(ちなみに、横浜松坂屋前の路上ライブからメジャーになった ゆずが、同年に「桜木町」という曲をリリース。彼女&この駅との別れをかけて歌っています)。その影響で野毛は極度の客離れが進み、閉店を余儀なくされる飲食店が相次ぎました。テナント料の相場が下がり、チャンスと見た若い経営者、女性経営者が進出しはじめます。

立ち飲みイタリアンやスペインバル、ビストロほか若い女性が安心して入れ、しかも「野毛価格」の店が増加。徐々に女性の姿も目立ってきたそうです。2012年のテレビ東京「出没!アド街ック天国」などでの紹介から拍車がかかり、老舗の料理店やハモニカ横丁の魅力も見直されます。新たなターゲットに向けた店舗、メニューが次々生まれる好循環があり、毎回違った店をハシゴできるほど、多彩で魅力的なお店がそろってきた印象です。

2.しがない飲んべえの街から「場末美」へ

同じようなタイミングで馬券がネットでも簡単に買えるようになり、競馬オヤジたちが減ったことも街の雰囲気を変えました。ただし、一気に洗練されていくようなことはありません。たとえば、40年近い歴史を誇る野毛大道芸からスピンオフで生まれた「野毛くじら横丁」は、かつて闇市の露店で売られていた ちと怪しいクジラ料理にちなんだ企画。イマ風の “映える” 料理を引き立てるのは場末のカオスであり、野毛のハシゴ酒をエンターテインメントにしています。

 

 そして、もう一つが社会情勢の変化です。

3.「昼からハシゴ酒」文化の到来

首都圏に新たに誕生する施設で「横丁文化」の見直しが進んでいます。2020年にオープンした虎ノ門ヒルズビジネスタワーの「虎ノ門横丁」は、森ビルが26の人気店舗を誘致。ちょいと一杯飲める「角打ち」スペースや、その店の一品だけを味わいながらハシゴできる「はしごカウンター」が設置され、都心のオフィス街でありながら、週末も昼からにぎわいを見せています。

4月の開業後、1カ月で100万人が訪れた東急歌舞伎町タワーには、大人気の「恵比寿横丁」や「渋谷横丁」などを手がけた浜倉的商店製作所が参画。祭りをテーマにした「新宿カブキhall~歌舞伎横丁」が、国籍を問わない人々を興奮させています。また、JRのガード下を生かした「日比谷OKUROJI」や横浜駅直結の「アソビル横丁」も、1軒で終わりたくない構造です。好奇心を刺激する “温故知新” のスポットが、「昼からハシゴ酒OK」の安心感を生んだといえるのかもしれません。

4.スマホ社会と価値観の変化

5月のある日曜の午後2時。壁一面に手書きのメニューがベタベタと貼られたオヤジ好みの居酒屋のカウンター席を、若い女性たちが占拠していました。みんな慣れた手つきで、思い思いにサワーやハイボールを自作して飲んでいます。アテにはカツオの藁焼きやベーコンカツなど、こちらもオヤジ好み。場所は渋谷ですが、人影もまばらな路地裏の古い雑居ビルのいちばん奥にあり、知らなければ絶対に入らない(入れない)お店です。

いい感じで酩酊した私は、冒頭の野毛6軒ハシゴの旧友(某ファッションブランド経営者)と別の店で合流し、この状況を報告しました。結論は、「いまの時代、おいしい店&コスパの高い店は、情報処理能力に長けた若い女の子がいちばんよく知っている。有名店より、知る人ぞ知る店。野毛でもそうだったよね」。そして、間違いなくインフルエンサーにもなっていると。

◆ カッコ悪い成金趣味 「選球眼」こそオシャレ

私らバブル世代は、高級店やブランド品に頼って武装する層(成金趣味? 自分も含め)が少なからずいました。名だたる店での接待も数多く経験しています。その一方で、「コスパが高い店を選ぶ 粋な選球眼」こそ、デフレ下で育った彼女たちの「オシャレ」なのだと納得しました。野毛のせんべろ、ハシゴ酒は、そのおメガネにかなっているのです。時代が移りゆく中で、次にまたどう個性を出し、変貌を遂げていくのか――街おこしや飲食店経営のヒントになるのは間違いなさそうです。

長文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。また、9カ月におよぶ刺激的な学びの場を提供いただいた青木先生、事務局の先生方、そして同期の皆さまに、深甚の謝意を申しあげます。「売れプロ」の看板に負けないよう今後も精進しますので、次のステージに向け、「行ってらっしゃい!」と声をかけていただければうれしいです。

 

※にほんブログ村ランキング参加中です! 1日1回、皆様の温かいポチをお願いします!

にほんブログ村 士業ブログ 中小企業診断士へ にほんブログ村