原価管理の研究③:「直接労務費は、変動費か固定費か?」

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原価管理の研究

『原価管理の研究③:「直接労務費は、変動費か固定費か?」』

会社経営にとって欠かすことのできない原価管理。

原価を経営的にどのように管理していくべきか?特に中小製造業を想定しながら、考えていきたいと思います。

今回は、製造業の直接労務費は「変動費」なのか「固定費」なのか?について考察します。

原価を、「変動費」と「固定費」に分けて管理する直接原価計算。

原材料費など売上や生産量に比例して増減する費用を「変動費」、減価償却費など売上や生産量によって変動しない費用を「固定費」とすることで、損益分岐点管理を行うことができます。

この直接原価計算において、直接労務費をどう考えるかは考え方の分かれるところです。

直接労務費とは、製造業でいえば生産ラインで製品生産に直接携わっている社員の人件費です。

原価を製品原価主義で「工数」と考えれば直接労務費は「変動費」となります。生産数量に比例して加工時間が変化するからです。

一方で、原価を発生原価主義で考えれば「固定費」であるとも言えます。フルタイム社員を前提に考えれば、生産量の多寡に拘わらず月給は固定であり、生産が減ったからといって余程のことがない限り人員整理が出来るわけではない為、発生費用は固定的となります。

では、どちらの考え方を採用するべきなのでしょうか?

製品原価管理の観点からいえば「変動費」にしたいところでしょう。生産現場で大きなウエイトを占める労務費を「固定」化してしまうと、現場レベルでの作業改善がコストとして数字に表れなくなり、生産性向上活動へのインセンティブが働きにくくなる可能性があるからです。

しかしながら、会社全体の損益管理からすれば、「固定費」としたいところでしょう。生産が減少したからといって実際の発生コストとして人件費が減るわけではないので、実際の業績との乖離が発生してしまうからです。

それではどうするか?

私の提案としては、直接労務費は製品単位では「変動費」として管理した上で、全社的には実際コストとの乖離を「人材余剰コスト」として、別途計上して管理してはどうかと考えます。

直接労務費は「変動費」として製品原価管理をした上で、これを削減するように現場の作業改善を促します。一方で、全社の損益管理では、工数削減によって達成された変動労務費の減少分を直接労務費とは別に「人材余剰コスト」として管理することで、会社損益との整合性をとります。ここで計上する「人材余剰費」とは生産性向上活動の成果として獲得した積極的「人材余剰資源」の維持費です。

この場合の懸念点としては、この「人材余剰費」がいわゆる余剰人員として「リストラによる人員整理」のようなイメージで思われないようにすることです。社員の間で「職場の仲間を減らすことに繋がるのではないか?」という不安があっては、ボトムアップの業務改善活動は進みません。余剰人材は「不要な人材」ではなく、新規業務を行うための「貴重な戦力」なのです。

そしてこの「人材余剰資源」という戦力を有効活用するのは、経営者の役割であり腕の見せ所です。新たな人材リソースを、生産規模拡大や、新製品開発、あるいは更なる生産性向上活動に注力するなど、戦略的に活用してゆきたいところです。

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