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みなさま、こんにちは。
売れプロ12期生 中小企業診断士の尾崎友和です。
前回、「人への投資」というテーマで投稿させていただきましたが、今回はそれに関連して「リスキリング」について記載してみたいと思います。
◆「リスキリング」とは
「リスキリング」とは、経済産業省では「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義付けられています。
急激な技術革新やビジネスモデルの変化への対応、従業員のキャリアアップ、業務の生産性向上などを目的として、業務や職業に関連した新しい知識やスキルを習得することです。日本語では「学び直し」と訳されています。
◆「リスキリング」が注目されている背景
では、今なぜ「リスキング」が注目されているのでしょうか。
①産業構造と技術の変化に伴うデジタルトランスフォーメーション(DX)推進
2020年に開かれたダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)において、「リスキリング革命」が議題として取り上げられました。第4次産業革命とも称される産業構造と技術の変化に対応するには、2030年までに全世界で10億人もの人々に、より高度な教育やスキル、仕事を提供していかなければならないと提唱されました。この第4次産業革命では、バイオやロボティクスなどもキーテクノロジーとされていますが、やはり最も注目されるのはDX推進です。そのため、「リスキリング」もDX人材の育成の文脈で語られることが多くなっています。
②人的資本経営に向けた「人への投資」
経済産業省が取りまとめて2020年9月に公表された『人材版伊藤レポート』では、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出し、中長期的な企業価値向上につなげていく人的資本経営の重要性が強調されています。加えて、その実現に向けて人材戦略に関して、5つの共通要素が存在すると示しています。その一つとして挙げられているのが、「リスキリング・学び直し」です。
③「新しい資本主義」の実現に向けた「人への投資」
さらに拍車を掛けたのが、2020年10月の岸田文雄首相による所信表明演説です。岸田首相が掲げる「新しい資本主義」を実現するには、「人への投資」は不可欠であるとし、個人の「リスキリング」支援として5年で1兆円を投じると表明しました。これにより、「リスキリング」がさらに活発化しています。
◆「リスキリング」の効果を高めるには
上記のように大変注目されている「リスキリング」ですが、ただ闇雲に実施しても期待した成果が出ないケースが相次いでいるようです。ここからは、「リスキリング」の効果を高めるためのポイントについて考えてみたいと思います。
①自社に必要な人材像やスキルを明らかにする
まずは、自社の経営戦略を実現するために、必要な人材像やスキルを明確にすることが欠かせないと思います。「リスキリング」は経営戦略と連動している必要があり、それによって対象となるスキルや人材は企業によって異なってきます。
②経営戦略における「リスキリング」の重要性を従業員に共有する
「リスキリング」は企業からの一方的な推進だけでなく、従業員の主体的な姿勢もセットとして引き出していかなければ効果は上がらないと思います。そのためにも、自社の経営戦略において、なぜ「リスキリング」を行う必要があるのか、どれほど重要なのかを従業員に理解・納得してもらう必要があると思います。
③学習環境を整備する
学習環境の整備も重要です。例えば、就業時間外だけでなく就業時間中でも学習できる時間を設けることで、従業員は負担を軽減できるだけでなく、業務と学習成果をスムーズに連動させることができます。
また、継続して学んでいける仕組みを整える必要があります。「学習管理システムを導入する」、「1on1などの場で本人のキャリア観と学びの進捗をすり合わせる」、「インセンティブを用意する」、「コミュニティを作る」などの施策も、学びを習慣づけるためには効果的だと思います。
④習得したスキルの活用の機会を作る
「リスキリング」を通じて、どれほど多くの知識やスキルを習得したとしても、実践しなければ意味がありません。スキルの習得には、学習と実践をセットで行うことが近道となるので、業務において活用する機会をぜひ設けていただきいと思います。あわせて、実践した結果に対するフィードバックの機会をつくることで、従業員のさらなるモチベーション向上も期待できます。
◆助成金・教育訓練給付金の活用
人材を教育・育成するとなると投資が必要となり、企業への金銭的負担も大きくなります。それだけに、助成金・教育訓練給付金は企業にとって有用な制度です。現在、「リスキリング」に関する助成金・教育訓練給付金は3種類あります。自社のニーズをふまえて有効活用いただきたいと思います。
①DXリスキリング助成金 (注1)
「DXリスキリング助成金」は、東京都が管轄し、都内中小企業等が従業員に対して、民間の教育機関等が提供するデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する職業訓練を集合又はeラーニング等で実施する際に係る経費を助成する制度です。2023(令和5年)度の申請期間は、2024(令和6)年の2月29日までとなっています。助成金額は講習に要した経費の3分の2で、上限は年間で64万円です。申請受付期間内であれば複数回の申請も可能です。
②人材開発支援助成金 (注2)
「人材開発支援助成金」は、厚生労働省が管轄し、事業主等が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。雇用する被保険者に対して、職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されます。「人材開発支援助成金」には、7つのコースがあります。
③教育訓練給付金 (注3)
「教育訓練給付金」は、働く方々の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職の促進を図ることを目的として、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるものです。給付金の対象となる教育訓練は、そのレベル等に応じて、専門実践教育訓練、特定一般教育訓練、一般教育訓練の3種類があります。申請にあたっては、最寄りのハローワークに必要書類を持参の上、直接申請します。
◆中小企業のリスキリングの事例 (注4)
では、実際に中小企業がどのように「リスキリング」を推進しているのか、いくつか事例を紹介したいと思います。
①陣屋
神奈川県秦野市の「陣屋」は、将棋・囲碁のタイトル戦の舞台としても知られる老舗旅館です。大手自動車メーカーの技術者だった宮﨑富夫さんが2009年、倒産寸前だった旅館の経営を親から引き継ぐと、旅館管理システム「陣屋コネクト」を開発し導入。妻で女将の知子さんとIoTの活用や従業員の働き方改革も同時に進め、約3年で経営を立て直しました。昔ながらの働き方に馴染んでいた従業員に対して紙の台帳への記入やメモ書きを一切禁止し、予約管理などをすべてパソコンで行うよう命じたそうです。当初は、パソコンに触ったこともない人たちだけに反発も大きかったそうです。
しかし、「陣屋コネクト」上に管理されている情報から前回の宿泊時と同じサービスを提供できた時、「こんなことを覚えていてくれたの」と喜ばれるようになり、従業員も前向きにリスキリングに向き合うようになったといいます。「陣屋コネクト」のおかげでサービスの質も向上し、徐々にリピーターが増え始め、引き継いだ3年目には黒字化を達成することができたそうです。
②隂山建設
福島県郡山市の建設会社隂山建設は、業界に先駆けてITを建設現場に導入する「ICT施工」を取り入れました。現在は、受注から竣工まで建設現場の状況を可視化するアプリ「Building MORE(ビルモア)」を自社開発し、外販も始めているそうです。
ただ、隂山正弘社長は「従業員のITリテラシーは、とびぬけて高いわけではない」と強調しています。高齢化が進む取引先の職人に抵抗なくアプリを使ってもらう必要もありました。このため重視したのが、誰もが使いこなせるアプリを自分たちで作ることでした。また、全従業員のITの知識を底上げも進めました。今では70歳を超えた職人さんもこのアプリを使いこなしているそうです。
③久野金属工業
自動車部品のプレス加工メーカー、久野金属工業(愛知県常滑市)は、自動化できるところは徹底的に自動化し、人が付加価値の高い仕事に注力できるようにする、という方針のもと、DXを推し進めています。この10年で生産工程や受注、在庫などを管理する基幹システムを開発してきたほか、2018年には、生産設備の稼働データを取得・モニタリングできるクラウドシステム「IoTGO」を開発。外販を始めるなど新たなビジネスにも乗り出しました。同社は、デジタル化のプロジェクトをデジタル人材の育成機会にも活用し、実践を通して従業員が育つ組織を作り上げています。
以上、助成金・教育訓練給付金を活用いただいたり、他社事例も参考にしていただいたりしながら、各企業における「リスキリング」を進めていただき、自社の経営ビジョン・戦略目標の達成に向けて、技術革新やビジネスモデルの変化への対応、従業員のキャリアアップ、業務の生産性向上などを実現し、企業の競合優位性を高めていただきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【参考】
(注1) DXリスキリング助成金:
(注2) 人材開発支援助成金:
(注3) 教育訓練給付金制度:
(注4) リクルートワークス研究所ホームページ:
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