身近な商品から、M&A成功の背景を知る

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皆さん、こんにちは。
売れプロ12期生の長尾俊彦です。

M&Aというと、どんなイメージを持ちますか?
中小企業白書によると、2021年のM&Aの件数は4,280件で、過去最多でした。
日本のM&Aが1,000件を超えたのが1999年でしたので、約20年で約4倍になった計算です。

多くの日本人がM&Aを意識し始めたのは、ライブドアがニッポン放送を買収しようとした2005年頃ではないでしょうか。実際、日経新聞の記事でも、2005年から「M&A」の記事が急増したとされています(*1)。同じ頃、村上ファンドが阪神電鉄などの株を大量に購入したことなども相まって、M&Aをネガティブに捉える風潮も強い時期でした。「ポイズンピル」「ホワイトナイト」など買収防衛策のキーワードを耳にするようになったのも、その頃だったと記憶しています。

M&Aに対するイメージは大きく改善している

それから約20年が経ち、M&Aに対するイメージは様変わりしました。
東京商工リサーチが経営者5,400人余りに調査した結果(*2)では、10年前と比較したM&Aに対するイメージの変化として、「抵抗感が薄れた」は約3割に上っています。「抵抗感が増した」は数パーセントですので、この10年でイメージはかなり改善したことになります。

こうしたイメージの改善は、買い手と売り手の双方にとって、相乗効果のある成功事例が蓄積されてきたことが、背景にあるのでしょう。学研ホールディングスなどの歴史ある企業も、M&Aでのグループ再編により、息を吹き返し、再び成長軌道に乗りました。また、買収先の企業とそのブランドを大切に育て、上手にグループに馴染ませている企業もあります。まさにWin-Winの関係と言えます。

その一方で、失敗も多いと言われるのがM&Aの世界。そこで、私たちが普段よく見る身近な商品の中で、Win-Winの関係を築いたと考えられる事例を通じて、M&A成功の背景を見てみたいと思います。

長い時間をかけてブランド移行した、豆乳のM&A

スーパーやコンビニなどで売られている豆乳。黄緑色に太陽と鳥のマークが入ったパッケージを思い浮かべる人も多いでしょう。あの豆乳は、21世紀初頭まで紀文食品の関連会社が販売していましたが、2004年にキッコーマンと資本業務提携し、2008年にはキッコーマンが完全子会社化しています。

しかし、資本関係がなくなった後も、豆乳のパッケージには、長らく「紀文」のロゴが掲げられていました。2015年まで「紀文」のロゴを残し、2011年から並行してキッコーマンのロゴも載せるようになって、徐々にブランド移行したのです。そして、ベースのパッケージデザイン自体は、マイナーチェンジしながらも、大枠は現在に至るまで変更していません。

 

キッコーマンのネームバリューを考えれば、M&A後、早々にブランドの切り替えを推し進める方法もあったと思われますが、あえてそうした戦略は採らなかったことになります。紀文が築いてきたブランドイメージを重視していることがうかがえますし、それだけもともとのブランド価値が強固なものだったと推察できます。

この例でユニークなのは、紀文食品は練り製品が主業なのに対し、キッコーマンは大豆を原料とする醤油が主業。豆乳も大豆が原料ですから、買い手の方が豆乳に対する親和性がはるかに高かったという点です。これにより、「大豆」をベースとする会社というイメージを強化することができ、既存ブランドである醤油や大豆製品にもプラスに作用している可能性が高いと言えます。

現在では、キッコーマンの大豆加工技術を活かして、数多くの豆乳飲料が新たに開発されています。その結果、M&A当初140億円だった豆乳飲料の売上は、10期連続で増収となり、2021年3月期の売上は411億円と完全子会社化の時の約3倍になったとされています(*3)。

また、2021年にはグループの別の企業で行っていた豆乳飲料の販売事業を、この会社に吸収し、豆乳事業を一本化して事業拡大を図っています。パズルのピースがきれいに組み合わさったようなWin-Winの事例であると言えるのではないでしょうか。

身の回りのM&A事例から、企業の考え方や戦略を知る

M&Aというと、買収した企業に入り込んで、商品メニューや制度、企業文化などをドラスティックに変える、という状況を想像しがちです。日々のニュースを見ていると、そうした事例が目に留まりがちですが、豆乳のように、買収した企業のブランドを維持しながら、買い手の企業グループのノウハウを活かして、バージョンアップしていっている例も数多くあります。

M&Aの成否は、統合効果を最大化するための統合プロセスであるPMI(Post Merger Integration)が鍵を握るとも言われています。豆乳のケースでは、社名こそすぐに変更したものの、消費者との接点の部分では、長い時間をかけて市場浸透を図っていった例でした。

普段身近に接している商品や、日々食事をする飲食店などでも、いつの間にか別の企業グループに変わっているケースも散見されるようになりました。診断士として、M&Aに関連する案件に携わる機会もあるでしょう。そうした機会に備えて、身の回りのケースにアンテナを張り、どんなM&Aが行われていて、どのように統合効果を引き出そうとしているか、そしてどんな成果を上げているのか、などを調べてみると、それぞれの企業の考え方や戦略が見えてきて、診断士活動のヒントになると思います。私自身も、今後もいろいろとウォッチしていきたいと考えています。

*1 日経NEEDSで読み解く・講演録 2008年9月18日「M&A時代の企業価値向上戦略 2005年以降急増したM&A」
*2 株式会社東京商工リサーチ「令和2年度 中小企業の財務基盤及び事業承継の動向に関する調査に係る委託事業報告書」
*3 東洋経済オンライン2021年5月26日「キッコーマン、新社長が担う9期連続最高益の重責」

 

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