企業業績を読み解く目を鍛えるための、有価証券報告書の活用法

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皆さん、こんにちは。

売れプロ12期生、中小企業診断士の長尾俊彦です。

 

有価証券報告書(以下、「有報」)をご覧になったことはありますか? 上場企業などが、事業年度終了後から3ヶ月以内に開示する義務のある書類で、各社のホームページなどに掲載されています。

 

基本的に白黒で文字や数字が多く、読みづらい印象があるため、あまり馴染みがないかもしれません。しかし、実は情報の宝庫で、企業の業績を読み解く目を鍛えるのにとても良い教材です。私は過去に有報を書く立場にいた経験があり、教材としての活用法をご紹介したいと思います。

 

なぜ有報が教材として適しているのか

 

有報には、以下のような特徴があり、この点が教材として活用するのに適していると考えます。

 

①直近5期分の経営指標の表があり、期ごとの比較がしやすい

②フォーマットがほぼ全社共通で、要点を短時間で確認できる

③正確な記載が法律で義務付けられており、第三者(会計監査人)が内容を確認している

④強みだけでなく、課題や想定リスクとその対応策の記載もあり、アクセルとブレーキの両面で書かれている

2023年3月期から人的資本情報の開示が義務付けられるなど、非財務情報の記載が充実してきている

 

有報はどのような構成になっているか

 

有報は通常100ページ以上ありますが、要点は前半の30ページ前後に凝縮されています。その中から、さらにポイントを押さえて読んでいけば、企業の全容を短時間で確認できます。

 

有報の前半部分は、以下のような構成です。このうち「◎」は、経営者の「意思」を表明している重要なページです。「●」も企業を深く知るのに適しており、積極的に読みたいページです。

 

<有報の構成(前半部分)>

第1【企業の概況】

 ●主要な経営指標等の推移

 ●沿革

 ●事業の内容

 ・関係会社の状況

 ●従業員の状況︎

第2【事業の概況】

 ◎経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

 ◎サステナビリティに関する考え方及び取組

 ◎事業等のリスク

 ◎経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

 ・経営上の重要な契約等

 ・研究開発活動

第3【設備の状況】

 ●設備投資等の概要

 ・主要な設備の状況

 ●設備の新設、除却等の計画

 

どの点に着目して見ていけば良いか

 

では、具体的に、どの項目に着目すれば良いか、見てみましょう。

 

(1) 直近5期分の経営指標の表で、5年間の推移を眺める

 

有報の冒頭に、「主要な経営指標等の推移」として、直近5期分の経営指標の表があります。ここから、収益性、安全性、効率性について、概況を掴むことができます。

 

まず、売上高と経常利益をさっと眺めます。これで、5年間の傾向として、「増収増益」「増収減益」「減収増益」「減収減益」「ほぼ横ばい」のどれに当てはまるかが把握できます。

 

純資産額と自己資本比率を見れば、安全性の推移がわかりますし、売上高と総資産額を使って総資産回転率も計算でき、効率性がわかります。また、従業員数をもとに一人あたりの売上高や経常利益なども算出できます

 

実は5期分というのがポイントなのです。例えば、2023年に開示された有報の場合、2019年以降の経営指標が掲載されています。2019年はコロナ禍の前ですから、コロナの影響の有無や企業の変化などが一目でわかります。時間がなければ、この表を定期的に見るだけでも効果があります。

 

(2) 有報の前半部分で、業績の要因や企業の戦略などを確認する

 

企業の傾向がわかったら、上述の「◎」ページで、その要因や企業の戦略などを確認していきます。まず、経営方針や経営成績の分析のページを見て、経営者が現状をどう捉えているのか把握します。その上で、対処すべき課題やサステナビリティに対する考え方及び取組、事業等のリスクをチェックします。

 

これにより、過去から現在、未来に至るまで、経営者が現状をどう分析し、将来をどう見通しているかを知ることができます。

 

ずっと増収増益が続く企業は、特需的な案件やトレンドで業績が良かったのではなく、企業努力によるところが大きいと考えられます。こうした企業の戦略に学べる部分は多いでしょう。また、沿革や関係会社の状況もあわせて見てみると、M&Aに対する考え方なども見えてきます。

 

反対に、業績不振あるいは横ばい傾向が続いている企業は、要因として何を挙げているか、どのように対処しようとしているかを確認します。有報では、売上原価や販管費、設備投資の状況などもわかりますので、例えば原価の高騰が要因となっている場合は原価率の前期比を計算してみるなど、仮説を立てて原因を特定していきます。また、業績が堅調な同業他社の有報と見比べて、記載にどんな違いがあるかを確認します。

 

(3)「従業員の状況」「設備の新設、除却等の計画」で、今後の企業の重要な方向性を確認する

 

上述の「●」ページのうち「従業員の状況」には、従業員数のほか、平均勤続期間や平均年収などが記載されています。最近では、人的資本経営が重視され、女性の管理職比率や男性の育休取得率なども記載されるようになりました。

 

平均勤続期間が極端に短かったり、平均年収が低い企業は、今後人が集まらなくなり、事業の継続性に影響が生じることも考えられます。企業経営にとって、見逃せない指標になってきていると言えるでしょう。

 

また、「設備の新設、除却等の計画」には、今後の企業の設備投資計画や、除却を考えている設備が記載されています。ここを見ると、企業が何を重視して事業を展開しているのかも把握できます。(例えば、オリエンタルランドの有報には、「スペース・マウンテン」と周辺環境の一新が記載されています)

 

 

いかがでしたでしょうか?

有報で見るべきポイントは、まだまだたくさんありますが、関心のある業界の数社を選んで、上記の点を定期的に確認していくだけでも、企業業績を読み解くことに慣れてくるでしょう。私自身も、複数社の有報を紐解きながら、企業を見る目を鍛えていきたいと思います。

 

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