【第1回 受験勉強への「覚悟」を決める】
2020年8月から受験をスタートし、仕事と子育てを両立しながらわずか2年弱での短期合格を果たした豊田さんに、中小企業診断士試験を突破するための秘訣を聞いた。第1回は中小企業診断士試験を目指すきっかけについてクローズアップする。
きっかけはサプライヤーさんとのやりとり
大学院(生命科学系)修了後、メーカーを初めとする複数社の勤務を経て、現在、化学系のメーカーで品質に関する業務(以下「品質」)を行っている豊田さん。中小企業診断士試験に興味を持ったきっかけは、会社と取引のあるサプライヤーさんの「悩み」だったという。
「取引のあるサプライヤーさんが、品質を良くするために設備投資をしたいとおっしゃるんですが、設備投資のためには『お金』が必要ですよね。サプライヤーさんによっては、設備投資をしようと思っても儲けが少なくて難しい、となってしまうことも多いんです。でも、品質をよくすることって、本当は、生産性を高めて、利益をより大きくすることですよね。こうしたサプライヤーさんが設備投資をして、品質を高めることは、引いては私たちの会社のためにもなります。だから、品質の仕事をするにあたって、少しでも『お金』の話も分かっておかないといけないな、と思ったんです」
こうして、2021年2月ころに中小企業診断士試験の受験を思い立った豊田さん。2021年度の1次試験まで時間もなかったことから、合格へ向けた「3年計画」を立てた。1年目の2021年度は生産管理、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策にだけ注力。2年目以降(2022年度か2023年度)で1次試験突破を目指すことにした。
1度目の受験で「ワクワクした」
「実際に1次試験を受験してみて、過去問を解くことも大事なんですが、数年分の過去問を解くだけでは解けない、知らない問題が出ることに気づいたんです。合格まで一筋縄ではいかないな、という感じが、『面白いな』と思いました」
2021年に初めての1次試験を受験し、初見の問題を前にした豊田さんだったが、むしろ勉強に向けてやる気が湧いてきたという。必ずしも資格試験に慣れているわけではないという豊田さんだが、その心が折れることはなかった。その一方で、努力不足を感じて「悔しさ」も覚えたという。
「教科書に書いてある知識なのに間違えていることもあって悔しかったです。1次試験は特に、自分の能力は関係なく、とにかく努力すれば必ず合格点をとれるはずなんです。だから1回目の受験で、自分の努力が足りなかっただけだと、そう思ったんです。努力が足りないなら、努力をするだけです」
2022年度の受験に向けて「覚悟」が決まった豊田さん。「3年計画」で進めても3年で受かるとは限らないと、2022年度での1次試験突破へと目標を切り替えた。
夫の協力と「今年で絶対受かれ」のプレッシャー
「努力する」と一口にいっても、そのためには十分な勉強量が必要になる。小学生の母でもある豊田さんは、2021年の受験開始以来、夫の理解を得て、子育てに協力してもらっている。夫に受験を相談したときも「そうか、じゃあ頑張ってね」と快諾してくれたというが、夫も、子育てだけでなく、自分の仕事もこなさいといけない。「2022年度の2次試験のころには、夫から『今年はやりたいだけ勉強しても良いから、絶対、今年で受かって』と言われて、プレッシャーをかけられました。診断士試験が思ったよりも大変で、このままだと子育ての負担が大きくなることが、夫にもわかったのだと思います」
当時を振り返りながら笑う豊田さん。夫のプレッシャーもあって2022年度での最終合格を目指すことになったが、必ずしもプレッシャーに強いわけではないそう。
「2次試験前は、ずっとお腹が痛かったです」
強いプレッシャーの中でも、モチベーションを維持し、勉強の質と量とを両立した。
安部慶彦 取材の匠メンバー、中小企業診断士
埼玉県出身。2016年に弁護士登録後、都内大手法律事務所にて企業法務に従事。法務アドバイスを重ねる中で、クライアントを真に理解するためには経営知識が必要であると実感し、2023年、中小企業診断士資格を取得。現在、法務・税務・経営の三本柱で中小企業のサポートをしながら、埼玉県よろず支援拠点のコーディネーターも務める。