【安部慶彦さんインタビュー】中小企業診断士の大海へ~ポートフォリオを組み替え続けるロマン派士業~

【安部慶彦さんインタビュー】中小企業診断士の大海へ~ポートフォリオを組み替え続けるロマン派士業~

【第1回 中小企業診断士を目指す弁護士】

【安部慶彦さんインタビュー】

「弁護士が扱うのは過去。未来を向いた仕事がしたい」と中小企業診断士を目指した安部慶彦さん。2021年末に勉強を始め、1次試験、2次試験とストレート合格。弁護士としての仕事をしながら、2023年5月に中小企業診断士登録し、地元埼玉で中小企業診断士の活動をスタートした。第1回目は、弁護士でありながら、中小企業診断士を目指したきっかけを聞いた。

過去ではなく未来を見る仕事を

安部慶彦さんは大学卒業後、2年間のロースクールを修了し、司法試験にストレート合格。司法修習を終えたのち、都内大手事務所所属の弁護士としてキャリアをスタートした。所属事務所では主に企業法務を担当。その後友人とともに事務所を設立して独立。弁護士の業界紙への連載経験も持ち、専門書も執筆した。また「弁護士となる資格を有する者」は「税理士」にも登録できるため、税務を自身の専門分野と定めた安部さんは、2023年に税理士登録も行っている。

弁護士として十分な実績を持ち、また税理士としての活動もスタートしながら、なぜ中小企業診断士を目指したのか。その理由を「弁護士や税理士は過去の出来事を扱う。弁護士であれば過去に起こったことを法律的に解釈する仕事であり、税理士も過去の数字に対しての仕事。自分は未来を向いた仕事がしたい」と気がついたからだという。きっかけとなった出来事について話してくれた。

ロマンを求めて外の世界へ

転機となった出来事は2019年。都内大手弁護士事務所に所属していたときのこと。税に詳しい弁護士をという顧客の要請に適任だったこともあり、1年間証券会社に半出向という形で勤務した。詳しい内容は明かせないと前置きをしたうえで、当時の役割を語ってくれた。

「弁護士事務所から来たので、法律上のアドバイスをする裏方の仕事だと思った。でも実際は法人営業の業務で、最前線に近いところまで経験した」と振り返る。提案資料の作成にかかわり、担当営業に同行して顧客を訪問。法律に関する顧客の質問に直接回答することもあったという。一般企業のビジネス現場を経験したことで、マインドが大きく変わった。

弁護士は基本待ちの姿勢で活動している。相談したいという相手が、事務所まで来てくれるのが通例となっているからだ。一方、出向先では、自らが顧客企業を訪問し営業とともに頭を下げた。これまでと180度異なる立場を経験し、弁護士事務所での仕事を顧みたときに、いずれは違う世界で働きたいと考えるようになったという。

「先生。先生。と呼ばれる立場になって、最初のころは、世間一般からずれているなと思っていました。でもいつの間にかそれに慣れてしまっていた」

企業への半出向経験は、自身を未来志向のロマン派と称する安部さんが外の世界へと動き出すきっかけとなった。

経営のアドバイスもできる人材に

それまでも弁護士として企業にアドバイスをする立場ではあったが、法律的な観点にとどまってしまうことに、物足りなさを感じていた。弁護士の仕事の範囲では「法律的にはこうです。今後の経営判断はご自由に」となっていたと話す。本来その先まで考えた提案をし、実行してもらわなければ、アドバイスした意味がない。そう考えた安部さんに、最低限の経営知識を身につけたいとの思いが芽生えた。さらに将来的な独立をみすえて、守備範囲が広くなった方が役に立つだろうとも考えた。

経営者にアドバイスできる資格をとインターネットで検索したところ、中小企業診断士にたどりつく。今人気の資格との情報を得て、難易度や標準的な学習時間などは考慮せず「これだ」と挑戦を開始。証券会社への出向から1年ほどした、2021年末ごろのことだった。腰を上げるまでは時間がかかるが、一度動き出したら一直線に進んでいくタイプとの自己分析通り、そこからの動きは速かった。








内田 和典

内田 和典 取材の匠メンバー、中小企業診断士
埼玉県出身。大学卒業後、食品メーカーに入社し、20年余り調味料の開発に携わる。加工食品の原材料から製品開発までを経験。2021年4月からは食品工場で購買業務に従事。2021年に中小企業診断士試験に合格し、2023年10月に登録。東京都中小企業診断士協会城北支部に所属。

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