【第1回 日商簿記1級合格 そして中小企業診断士試験へ】

難関資格である中小企業診断士試験に合格するには、受験範囲が広いこともあり複数年かかることが一般的である。しかし世の中には1年で合格してしまうストレート合格者が一定数いることも確かである。今回はそのストレート合格を実現した毛利和裕さんに受験に対する取り組みやコツについてインタビューを実施した。第1回は毛利さんが中小企業診断士試験を受験するに至るまでの過去について触れていきたい。
合格への大きなアドバンテージ
毛利さんにストレート合格の要因を聞くと、日商簿記1級の資格保有者であることが大きなアドバンテージであると言う。日商簿記1級は中小企業診断士試験の第1次試験免除を適用できる資格ではないが、第1次試験の財務・会計および第2次試験の事例Ⅳについては、ほぼ勉強無しで合格レベルの得点が得られたとのこと。第2次試験の事例Ⅳはボリュームがあり80分の試験時間の中ですべて解くことすら困難であると一般的には言われているが、毛利さんは可能であると言う。日商簿記1級の知識だけではなく、電卓をたたくスピードが圧倒的に速いのが大きなアドバンテージだ。もちろんブラインドタッチである。ストレート合格のもう1つの要因は、大学時代に経営学部のカリキュラムで学んだ内容が第1次試験の企業経営理論や第2次試験の事例Ⅰに共通していることだ。
日商簿記1級取得
まずは毛利さんが中小企業診断士を受験するに至る過去から触れていくことにする。初めに中小企業診断士の資格に興味を持ったのは大学生の時である。この時は中小企業診断士と日商簿記1級のどちらかを勉強しようと考えていたが、中小企業診断士試験の最後に口述試験があるということで、当時面接に苦手意識を持っていた毛利さんは日商簿記1級を選択した。そして、大学の講義で簿記があったことも理由の1つに挙げられる。某予備校の先生が講師で大学の単位も取れて、教科書代だけで授業料は追加でかからないという好条件であり、1年間勉強した毛利さんはなんと日商簿記1級に合格してしまう。
入社後の配属は営業部
スポーツ関連に興味を持っていた毛利さんは、大学卒業後はスポーツ用品メーカーに就職する。日商簿記1級の資格保有者であったが、最初の配属は営業部であった。スポーツ用品の営業の時は野球の専門店や地域のスポーツ店回りをした。その後も企業ユニフォームやワークシューズの営業で中小企業を回る日々を過ごしていた。その時感じたことが、商品の説明や売りこみだけでなく訪問したお客様の困りごとの解決や提案ができないと、商談がうまく進まないということだった。社員のエンゲージメント向上や健康経営などのフレーズに触れていくことで、お客様の決裁者の心をつかんでいくことができるのだ。そのためには経営に関する知識やノウハウを知らないと話にならない。そこで再び中小企業診断士の資格取得を考えるようになったのだ。そうして営業部で3年ほど経験を積んだ頃に、やはりというか遂に経理財務部へ異動になる。
中小企業診断士の受験勉強へ
経理部に異動してからは、日商簿記1級の知識を活用して連結決算業務や子会社経理、株主総会対応などの業務をこなし多忙な日々を過ごしていく。特に連結決算をまとめるには日商簿記1級の知識は必須で、社内に数人しかいない資格保有者として欠かせない人材となっている。そして経理財務部へ異動になったことをきっかけに、営業部のときから資格取得を考えていた中小企業診断士の勉強を始めたのである。日商簿記1級の資格保有者の勉強方法はどのようなものだろうか。それは次回に委ねることにする。

佐橋 俊介 取材の匠メンバー、中小企業診断士
1978年愛知県江南市生まれ、大阪府豊中市在住。学生時代はアメリカンフットボール部に所属しチームワークと忍耐を学ぶ。現在はメーカーに勤務しプラントエンジニアリングの営業に従事。2022年に中小企業診断士登録後、大阪府中小企業診断協会に所属し研究会活動や地域小規模事業者支援に力を入れる。プライベートでは男の子3人の父親として奮闘中。こどものゲームに付き合ううちにゲームにハマる。こどもには負けない。