【第1回 協力会社とよりよい関係で、ものづくりをするために】

食品メーカーに新卒で入社して以来20年以上を商品開発職として過ごし、協力会社とのつきあいから中小企業診断士を目指すようになったという内田和典さん。毎朝のランニングを欠かさないマラソンランナーとしての顔も持つ。
第1回目は、穏やかな笑顔が印象的な内田さんが中小企業診断士という資格を知り、受験勉強をスタートさせたきっかけについてうかがった。
商品開発職として、相手の事情をもっと理解したい
内田さんの勤める食品メーカーは、調味料やドレッシングを主力としている。家庭用と業務用の両方があるというから、私もどこかで内田さんの開発した“味”を口にしているかもしれない。
「調味料の開発担当として、自社で扱う調味料を協力会社と共同開発する。開発後は協力会社で実際に製造してもらう、ということが仕事でした」
食品業界では、自社製品を協力会社に作ってもらい自社のブランドで売ること、専用の原材料を作ってもらうこと、いわゆるOEM生産や製造委託が一般的に行われている。委託先と委託元、という関係がある一方で、協力会社は独立した他社であり、共に自社製品を作るパートナーでもある。
「先方には先方の事情があるので、こちらの都合だけで、こういうものを作りたい、と持って行っても、よい関係でのものづくりができないんです」
お互いの事情があるなかで、内田さんは幾度も協力会社へと足を運び、協力会社の方々と一緒になって数々の商品を世に送り出してきた。自然と協力会社の経営層の方々とのつきあいも多かったという。
「相手の事情を理解するためにも、自分自身が経営のことを知らないといけないな、と思いました」
簿記2級の取得 そして5年後の中小企業診断士挑戦
協力会社に限らず、数多ある取引先とよい関係性を保ちながら、いかによりよいものを作っていくか、それは製造業にかかわる多くの方が頭を悩ませていることの一つではないだろうか。協力会社のことを、経営面も含めてより深く理解したいという思いが、中小企業診断士を目指すきっかけとなった。
「以前から中小企業診断士という資格は知っていて、いつかは中小企業診断士の資格も取ったほうがいいんだろうなぁ、とは思っていたんです。だけど2012年頃に簿記2級をとって、なんとなく満足してしまいました」そういって内田さんは笑う。
資格を知ることと、実際に資格取得を目指して勉強を始めることの間には大きな溝がある。内田さんが中小企業診断士資格への挑戦を決めたのは簿記への挑戦から5年後の、2017年のことだった。
会社の制度にも後押しされてスタートした、診断士試験へのチャレンジ
「年齢を重ねて、そろそろ挑戦してみようかな」という気持ちになったという内田さん。社内の教育支援制度も内田さんの挑戦を後押しした。
「会社の資格取得支援制度で、通信教育を受講した場合には、受講金額に対する補助が受けられたんです。そこで2017年にある資格学校の講座に申し込んで、1年間の通信教育を受講することにしました」
通信教育は資格学校から送付されたテキストを読み込んで課題を提出するというスタイルだった。
「特に、企業経営理論はすごく面白かった。このまま同じ会社に勤め続けるにしても必要な知識、社会人としてのベースとなる知識だな、と感じました」
学ぶ内容の面白さにも支えられて、無事に一年間の受講を終えた。
「課題は提出したものの、実際に受験するかはまた迷いました。だけど、せっかく受講したし受けてみようかな、と」 そして2018年、初めての1次試験を経験する。

豊田 ようこ 取材の匠メンバー、中小企業診断士
茨城県出身。東北大学大学院生命科学研究科修了。7回の転職で一次産業、二次産業、三次産業を経験。現在はメーカーの品質保証職として社内教育やISO9001関連の業務に従事。 2024年4月中小企業診断士登録。茨城県中小企業診断士協会所属。趣味は読書と刺しゅうと日本舞踊。