【第1回 キャリア再出発 中小企業診断士挑戦へ】

現在は、独立中小企業診断士として活躍している岩水さん。彼が中小企業診断士を意識し始めたのは、2008年の北京オリンピックの頃だった。当時、製薬会社の社員として中国のパートナー企業の経営サポートに従事していた彼は、経営に関する知識も経験も持たずに、現場で数多くの問題に直面しながら対応していた。これらの経験を通じて、彼は自分に経営の知識があればもっと効果的に問題解決ができたのではないかと痛感していた。
中小企業診断士挑戦へ
日本に戻り、岩水さんは新薬のプロダクトマネージャーとして、新薬全体を見渡す立場に立つようになった。プロダクトマネージャーとして、薬の市場導入から生産計画、マーケティングまでを担当していたが、50代後半に差し掛かると、次に挑戦する薬が見当たらず、興奮を覚える仕事が減少していくことを感じた。「プロダクトマネージャーの仕事は40代が最前線でやるもので、50代を過ぎるとチャンスが少なくなる」と彼は振り返る。いくつかの薬を市場に送り届ける経験を経て、次のステップとして中小企業診断士の勉強を始めることを決意した。
資格取得への挑戦
岩水さんは1次試験に合格し、2次試験の合否がわかる前に退職を決意。「もう通る前提でやめました」と断言するが、2次試験の手応えは全くなかった。彼は落ちた場合には養成課程に進む覚悟をしていた。合格通知が来るまでの間、養成課程の説明会にもすでに参加しており、万が一に備えて準備をしていた。「もうどう転んでも、戻ることはないので」と語った。この時、彼は自分の転機を自らの決断で切り開いていたのである。
合格通知を受け取った瞬間、彼は「まあまあ良かったなって感じですね」と語った。既に会社を辞めていた彼にとって、合格は通過点に過ぎなかった。養成課程をスキップできたことは大きな喜びだったが、それ以上に新しい挑戦への期待があった。中小企業診断士の資格を手にした彼は、次のステップへと進む準備が整っていた。
退職と家族の反応
岩水さんは55歳で退職した。この年齢での退職は、会社でのキャリアに一区切りをつけ、新たなステージに進むための決断であった。彼の家族もその決断を理解し、少し離れた立場から見守っていた。彼は「長い人生を考えた時に、60とか65で道を変えるよりは、ある程度早めに変えた次のステージに行った方が面白いかなと思ったんで」と語る。この決断は、自らの意思で次のステージを切り開くものであり、その明確な自己決定が感じられる。
製薬会社での残りのキャリアと55歳での新たな道の選択。その天秤にかけられた判断は、彼にとって大きな転機となった。製薬会社でプロダクトマネージャーとしての興奮と、新たな中小企業診断士の領域。どちらがエキサイティングだったかが、彼の判断基準となった。彼のその時の判断が、今後どのような結果をもたらすのか、興味深いところである。
このように、彼のキャリア転換の決断とその後の挑戦は、彼の人生における重要な転機となった。家族の反応や新たなステージへの準備、合格後の喜びと影響を通じて、彼の新たな挑戦が始まった。
次回は、岩水さんの受験生としてのチャレンジについて詳しく語る。彼がどのように試験に取り組み、困難を乗り越えていったのか、その過程をご紹介する。

保科 彰治 取材の匠メンバー、中小企業診断士
ITシステム開発の技術者。エンベデッドシステムスペシャリスト。印刷業、食品EC、飲食業の経営支援経験あり。音声・画像処理、プリンター関連のソフトウェア開発・製品サポートに豊富な経験を持つ。趣味は体を動かし、その動きを探求すること。