【佐藤弘直さんインタビュー】焦らず進む”から始まった、合格への道

【佐藤弘直さんインタビュー】焦らず進む”から始まった、合格への道

【第1回 焦らない力がくれた、合格への道しるべ】

製造業に従事しながら、3年計画で中小企業診断士資格の取得を目指した佐藤弘直さん。落ち着いたペースで着実に学びを重ね、2025年に中小企業診断士として登録した。第1回では、資格を目指したきっかけや、仕事・家庭と勉強を両立するうえでの工夫について聞いた。

中小企業診断士を志した原点

中小企業診断士という資格の存在を初めて意識したのは、業務改善のプロジェクトを担当していた頃だった。

製造業において、現場のオペレーション改善は日常の一部だ。だが、どれだけ効率化を進めても、その背後にある経営判断や仕組みにメスを入れなければ、根本的な改善にはつながらないと痛感する場面が増えていた。

「現場を見れば何が問題かはわかる。でも、その背景にある構造や判断はもっと上の視点で見ないと理解できない。」

次第に経営全体を体系的に学ぶ必要性を意識するようになった。ちょうどその頃、同期との間で「経営的な視点を持とう」という話が出たことも後押しとなり、中小企業診断士という選択肢が浮かび上がる。

「広い分野を横断的に学べる感覚が魅力だった」と語るように、実務とリンクしやすい知識体系も魅力となった。専門知識にとどまらず、経営者の視点から全体を見る力を養えることも、学ぶモチベーションになっていった。

自分を知ることが戦略になる

試験勉強のスタートと同時に、佐藤さんは3年計画を立てていた。7科目すべてを一気に受験するのではなく、確実に積み上げていくスタイルだ。

「一気にやって全部ダメだったら嫌になっちゃうんです」と語る表情は柔らかい。自分の性格やリズムを知っていたからこそ、自然な選択だった。

1年目は1科目合格、2年目に2科目、そして最終年に残り4科目の合格で1次試験を突破。「計画通りというか、予定の範囲内で進められました」と淡々と話す様子には、ブレない心構えがにじむ。

複数年度合格を目指す場合、2次試験に関わる試験科目は後ろで受験するという定石があることを後になってから知ったが、「もう少し早く知っていれば、スケジュールの組み方も変わったかもしれません」と苦笑する。それでも冷静に現実的な対応をとり、自分に合わせた計画を立てていたからこそ、着実に成し遂げた。

「普通でいる」ことを守り抜く

勉強を続けていた頃、2次試験の直前に第一子が誕生した。

妻が入院していた期間も、毎日病院に顔を出すことを欠かさなかったという。「試験が近いから行かない、とはしませんでした。ここまでやってきたし、この1週間で大きく変わらないと思っていたので」

生活の変化の中でも“普通の毎日”を保つことを意識していた。焦りすぎず、家庭の時間を削ることなく過ごす姿勢が、受験勉強との両立を可能にした。「日頃の家事貢献で補うしかないですね」と語るように、限られた時間の中でも積み重ねた信頼が、家族とのバランスを支えていた。

過度なプレッシャーをかけず、日常に勉強を馴染ませた姿勢が、結果的に平常心を保つ力となっていた。家庭の理解を得ながら、落ち着いて試験に向き合えたことが、何よりの支えだったと振り返る。

焦らない力こそ、もっとも強い武器

「特別なことはしていません。ただ、自分のスタイルで、コツコツとやっただけです」

その一言に、すべてが凝縮されている。勉強そのものを無理に特別なものにせず、自分の暮らしに溶け込ませていく。努力の痕跡をあえて目立たせず、日々の延長に置いたからこそ、試験当日にも動じることはなかったのだろう。

中小企業診断士試験は、決して一発合格がすべてではない。むしろ、自分のペースで積み重ねた経験こそが、確かな手応えとなって返ってくる。

佐藤さんの歩みは、それを静かに、しかし確実に伝えてくれる。








奥村 泰宏

奥村 泰宏 取材の匠メンバー、中小企業診断士
グラフィックや商品企画、空間設計など、20年以上にわたって幅広いデザイン実務に携わる。現在は製造業の取締役として、経営の意思決定や組織運営にも深く関わる。中小企業診断士としては、現場と経営のあいだに立ち、課題の本質を見極める支援に取り組む。デザインと経営の両輪を理解する立場から、経営者が自らの想いや強みをかたちにできるよう伴走し、「デザインを使いこなす視点」を伝える活動に力を注いでいる。

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