【第1回 大企業18年目社員が痛感した3つの気づきと新たな道】

製造業の大手企業でDX人材育成を担当している菅田裕之さん。新卒から18年目となる現在の会社で、16年間材料開発エンジニアを務めた後、2年前にDX人材育成部門へ異動した。今年、中小企業診断士試験に合格し、現在は「埋もれた財産を価値あるものに変える」支援を目指している。菅田さんが中小企業診断士を目指したきっかけは、会社と社外での体験を通じた3つの気づきがあった。
技術開発と組織運営で得た2つの気づき
まず、環境の仕事がしたくて開発エンジニアとして働いていた菅田さんは、技術開発とは異なるアプローチで課題解決する方法があることに気づいた。世の中や人のために開発をしても、その製品がまた新たな課題を生み出す状況に直面することがあった。この経験から、「開発と並行して、しくみで課題を解決する方法もある」と考えるようになった。
もう1つの気づきは、エンジニア時代のマネージャーとして組織の統廃合とメンバーの再配置を経験したことから生まれた。「組織のあり方、作り方、配置で、人はやっぱり生き生きしたりしなかったりする」。組織の中には十分に能力やモチベーションが活かされていない「埋もれた人材」がたくさんいることに気づいたのだ。
社外派遣で痛感した3つ目の気づきと「技」への憧れ
決定的な転機となったのは、「地域社会への恩返し」という社内企画での社外派遣プログラムへの参加だった。派遣先の一般財団法人では、運営者がそれぞれツアーガイドやプロモーション、歌人など、目の前の人を直接喜ばせる「技」や「価値提供できるもの」を持っていた。
簡単な活動説明の後、「何の仕事がしたいか」と問われた時、菅田さんは何も思い浮かばなかった。自分の課題意識やモチベーションを起点に、0から1の仕事を作り出した経験がないことに気づいた。それに加えて、大きな企業で長期目標の一部分を担う仕事をしていた自分には、目の前の人を直接喜ばせる「技」がないことも痛感したのだ。
10年以上大企業で働いてきたにも関わらず、財団法人の中では何も新しく生み出すことができない。「会社の外では十分に力を発揮できない」という深い無力感を感じた。しかし同時に、その場で出会った人々が持つ日本の技術や文化を伝える技に強く憧れを抱いた。この体験が「目の前の人を直接喜ばせる仕事に就きたい」という強い思いの原点となる。
3つの気づきが導いた中小企業診断士という選択
こうした体験を通じて、菅田さんの中で3つの思いが明確になった。
1つ目は、技術開発の限界から生まれた「しくみで課題を解決したい」という思い。技術開発と並行して、しくみによる課題解決アプローチへの関心である。
2つ目は、組織統廃合の経験から生まれた「埋もれた財産をうまく活用する」という思い。組織の中で眠っている人材の能力を引き出し、価値あるものに変えたいという思いである。
3つ目は、社外派遣で出会った人々への憧れから生まれた「目の前の人を直接喜ばせる技」への思い。日本の技術や文化を伝える仕事への強い関心だ。
これら3つの気づきを満たす仕事を探す中で、中小企業診断士という資格に出会った。中小企業診断士の仕事が「診る」「書く」「話す」という要素から成り、分析的な思考や資料作成、人の話を聞くことが好きという特性を生かせると感じた。また、会社でマネージャーとして経験した法務、財務、人材育成、リーダーシップ、組織運営、オペレーション、マーケティング、情報システムなどを体系的に学び直せる機会だと感じたことも、中小企業診断士を目指すきっかけとなった。
次回は、菅田さんがどのように勉強時間を確保し、特に難関といわれる2次試験をどう乗り越えたのか、その具体的な方法と挫折体験についてお聞きする。

栗野 将徳 取材の匠メンバー、中小企業診断士
BtoBマーケティングの実務経験と中小企業診断士としての理論的知見を組み合わせ、企業の成長支援に取り組んでいる。特に新規事業立ち上げフェーズにおける集客からコンバージョンまでの一気通貫した仕組み作りを得意とし、多くの企業の0→1達成をサポートしてきた実績を持つ。
