【第1回 若さという壁を越える】

広告・Webマーケティング業界に勤務し、2025年に中小企業診断士試験に合格・登録された小山剛史さん。第1回では、20代という若さで診断士を目指した背景と、その決意に至るまでの想いを伺った。
合格後に見えた景色
「優秀な方たちばかりで、話をしていて刺激が多い」―そう語る小山さんの目は輝いていた。合格後は、受験生支援団体、一般社団法人愛知県中小企業診断士協会といった組織に積極的に参加。足を運ぶ先々で、多様なバックグラウンドを持つ仲間から刺激を受けているという。業種も企業規模もさまざまで、これまで会うことのなかった仲間との対話は、毎回が気づきと学びの連続だという。「少しずつ活動を広げながら、コンサルとしての幅を広げていきたいです」と小山さんは語る。刺激を受けながら、自分の進むべき道をどこに定めるかを自問自答し、可能性を日々模索しているという。印象的だったのは、活動する中小企業診断士の多くが積極的で主体的な姿勢を持つ「ギバー」であることだ。「まず行動してみることを心がけています」という小山さんの姿勢が、人とのつながりを自然と広げ、次の出会いや機会を生んでいるのかもしれない。
若さが壁になった過去
現在、小山さんはチームリーダーとして、売上向上を目的としたWebサイト構築やSNSを活用したマーケティング支援を行っている。中小企業診断士を目指すきっかけは、若さゆえの悩みや葛藤にあった。
「中小企業の社長に20代の自分が提案しても、なかなかすんなりとは通りません」と声のトーンが少し下げ、小山さんは話した。マーケティングは、企業経営そのものに直結する要素が多い分野でもある。顧客に真摯に向き合い、地道に努力を積み重ねて実績をつくることを心がけてきたが、「年齢を理由に仕事の幅が制限される」という感覚は拭いきれなかった。「もっと大きな仕事を任せてもらいたい、もっとスキルアップしたい」―そんな想いが、胸の奥でくすぶり続けていたという。
中小企業診断士の資格で’’若さ’’という壁を越える
「早く歳を取ることはできません。でも、それ以外で経営者の方に信頼していただく方法があるはずだと考えていました」。そう考え抜いた末に辿り着いたのが、資格取得だった。
数ある資格の中でなぜ中小企業診断士を選んだのか。「実務に直結し、学んだ知識が現場で活かせる。そこに強い魅力を感じました」と小山さんは語る。理由はもう1つある。ベンチャー企業に勤務しており、経営者との距離が近く、会社経営を身近に感じる環境も診断士受験を後押しした。「経営への理解を深めて、キャリアアップにつなげたいという思いがありました」と資格挑戦への動機を振り返る。
職場の支援と不退転の覚悟
資格取得には多大な時間とエネルギーが必要である。幸運だったのは、診断士受験に対して職場の理解を得られたことだ。「社長からは『勉強頑張れよ』と声をかけてもらい、上司もチーム全体で時間を確保する体制を作ってくれました」と小山さんは話す。事前に資格取得の意思を伝え、協力を仰いだ成果であった。
一方で、周囲への宣言は大きなプレッシャーにもなった。「合格しなければという重圧もあったが、不退転の覚悟を持てたのは良かったです」と小山さんは振り返る。自分を追い込みつつも、理解と支援によって学習環境を整える。こうして小山さんの中小企業診断士への挑戦が始まった。25歳のときである。
次回は、合格に至るまでの険しい3年間の道程と、具体的な勉強方法に迫る。

菅田 裕之 取材の匠メンバー、中小企業診断士
製造業でエンジニアとして15年以上勤務し、海外工場立上げ、研究から製品化までを一貫して経験。組織統廃合や新組織の立上げをマネージャーとして主導し、新卒採用では100名以上のキャリア支援にも携わる。現在はDX人材育成を担当。マーケティングを駆使し、1,400名以上への研修講師実績を持つ。2025年中小企業診断士登録。愛知県在住。趣味はキャンピングカー製作と山車祭り参加。
