【第1回 自分の強みを作るために】

大手化学メーカーの営業職としてグローバルに活躍するH.Tさん。多忙な日々を送る中で、2025年に中小企業診断士の資格を取得した。その経緯と今後の展望について話を聞いた。第1回では、現在の仕事と中小企業診断士の資格取得を志すに至った背景に迫る。
海外旅行好きが高じて選んだ仕事
H.Tさんは、2年間の受験期間を経て、中小企業診断士に合格した。
もともとは素材系の商社で営業職を経験し、転職を経て現在は大手素材化学メーカーの事業部に所属している。主な業務は営業とプラントの生産管理であり、東アジアを担当しているため、中国、韓国、台湾への出張が中心となる。
「この仕事を選んだきっかけは、海外にいきたいという少し不純な動機だったんです。もともと素材に関心があったわけではなく、仕事を理由に無料で海外にいけたらいいなという軽い気持ちから選びました」当初は海外で仕事をすることを目的として選んだ職であったが、現在は仕事の面白さに気づき仕事に大きなやりがいを感じているという。
H.Tさんの勤務先では、化学製品を生産するプラントと呼ばれる工場施設が全国に点在している。そのプラントで製造される製品の原料となる化学品の生産管理および販売を担っている。多様な業界と関われることが魅力だと語る。製造された原料は、パソコン、車、雑貨、衣類など幅広い業界で使用されており、様々な分野に関与できるのだ。
「プラントで生産された製品は海外に輸出されるほか、国内では販売店や代理店を通じて販売されます。営業が主な業務ではありますが、お客様からの注文をもとに生産計画を策定したり、製造部や研究部門と連携して製品改良を進めたりなど、チームで業務を進めています」
当初描いていた海外を飛び回る仕事のスタイルを実現し、充実した日々を過ごしている髙 H.Tさん。そんな彼が中小企業診断士の資格を知ったのは、偶然の出来事だった。
学んだことを仕事に活かす
「大学では、まったく勉強してこなかったんです」そう笑いながらH.Tさんは話す。社会人生活が始まってから、当時の上司に読書をすすめられたという。日頃から読書や勉強を習慣化されていた上司の姿に触発され、当時は一人暮らしで時間を持て余していたこともあり、試してみることにした。
「本を読みだしたら、意外と面白かったんです。最初は自己啓発本からスタートし、気がつけばマイケルポーターの『競争の戦略』のような分厚い本も読むようになっていました。学んだ内容を仕事で活かすことで提案書の質が向上し、受注を獲得する機会も増えていきました」
新たな知識を学び、それを仕事に活かして評価される。このサイクルに夢中になっていったという。その後は経理に興味を持ち、簿記2級の勉強を始め、20代で資格を取得。さらに英語力を向上させたいと考え、TOEICのスコアを400点から800点へと伸ばした。仕事とは直接関係ない分野も挑戦し、大学生時代に取得を断念した宅建の資格まで、社会人になってから取得した。
「これまで勉強してきた内容を総まとめできるような資格がないかと調べたのです。そのときに見つけたのが、中小企業診断士でした」
中小企業診断士であるという強み
「私は文系の出身なので、化学メーカーの職場では技術的な知識においてはどうしても周囲に比べて弱い部分があります。今後の人生を考えたときに、何か自分なりの強みを築きたい。それが資格として形になれば、さらに価値があると思いました」
これまで培った勉強ノウハウを最大限に活用し、 H.Tさんは2年間にわたる中小企業診断士の受験生活へと踏み出した。

清野 裕樹 取材の匠メンバー、中小企業診断士
神奈川県横浜市出身。総合人材サービスの会社で顧客の人事・人材課題の解決支援に従事。企業内診断士として、チャレンジする人と組織の支援をテーマに活動。企業の事業計画書作成支援、受験生支援の講師業、「ふぞろいな合格者答案」の執筆等を手掛ける。趣味はランニングとお酒。毎朝6キロ走ってから仕事に行くのが日課である。
