【第1回 地元企業で本気の挑戦をしたい】

小林雅典さんは現在地元の長野でコンサルティング会社に勤務しマーケティング支援や組織体制整備・研修講師などで活躍している。5年間の努力の末中小企業診断士に合格。他にも小学校教諭、認定心理士などの資格を持ちマルチな才能を有する。
試験に向き合い、小林さんが得たものとは。第1回目は中小企業診断士を目指すまでに焦点を当てた。
理想の教材を中小企業でつくる
小林さんは地元長野でコンサルティング会社に勤務するかたわら、小中学生向けのプログラミングや情報モラル教育講師のボランティアを行なっている。他にも消防団や地元の青年会に参加するなど地域で精力的に活動しているという。ハキハキ明朗な話ぶりと柔和な雰囲気から子どもたちが自然に寄ってくる様子が目に浮かぶようだった。
小林さんはもともと子どもが好きで大学でも教育関係の分野を専攻。在学中に小学校教諭の免許を取得した。卒業後は帰郷して長野県内の小中学校の教材出版を行う会社に就職。企画編集を行なった。高校まで理数系だったこともあり算数・理科などを中心に全科目の教材の企画を行なっていたが、そこで壁に直面する。地方の出版社には販路や経営資源の制約があり、教材の構想を抱いても実現に至らないことも多かった。作りたいものと作れるもののギャップへの葛藤。よい教材を作りたいという熱意はあったものの、企画提案しても社内でよい反応は得られなかった。自社と大手出版社と比較し、大手ならこの企画を実現できたのかもと思い悩んだ日もあった。
よい教材を追求して模索する中、地方の中小企業ならではの強みに気付いたころから彼の中で何かが変わり始めた。中小企業なら全国規模の市場を狙う大手企業より地元に向けた教材が作れるのではないか。販路が地元に絞られるならばと、地元の子どもたちや先生のニーズを捉えた教材の企画を考えるようになった。例えば中学生向けの問題集では、全国学力テストの結果から、長野県の子どもたちが得点できなかった問題を中心に構成したり、長野県高校入試問題を分析し、今後出題されると思われる問題を多く掲載したりするなどした。やがて大手企業では真似できないものを作れるようになっていった。
こうして企画編集の業務が軌道に乗った先で目標ができた。もっと「中小企業ならではの戦い方」を知ってさらに仕事に活かしたい。その思いから入社数年で中小企業診断士受験を決意した。
教育とのアナロジー
教育と経営。これらは、学校と企業というフィールドを全く異にする方法論に思える。その点について小林さんの考えはこうだ。
「マーケティングとか組織論みたいなところは、(教育学科時代に学んだような)心理学がめちゃくちゃ役に立っているようなところがあると思いますし。あとすごく似ていると思ったのが人事評価制度の話です」
学校の通知表の評価は教師本人の好き嫌いを排除して子ども自身の成長に寄与させるもの。それを学生時代に学んでいたが、企業の人事評価にも通ずるところがあると感じていた。形は違えど、学校も企業も人の集まりであり皆で同じ方向を見つめともに成長するというあり方が似ているのかもしれない。
また、マーケティングに関して企業経営理論などは勉強というより本を読み進めるような気持ちで楽しみながら向き合えたと小林さんは振り返る。教育もマーケティングも、相手に合わせ人の心理に働きかけて行動を変容させる点で、アプローチに共通点があったためである。
異なる分野の知見を融合させる。経営以外の専門スキルを活かす中小企業診断士は多い。小林さんの強みは彼独自の視点と知見を持つことと言えるのではないだろうか。次回は、診断士試験の受験生活について触れる。

T.T 取材の匠メンバー、中小企業診断士
東北某県内の地方公務員として10年程度勤務。福祉や税務に関する部署を経験。企業内診断士兼一児の母。それまで会計や経営とは縁遠い人生を送ってきたが、育休中に夫に触発され診断士試験に挑戦。2人で合格して診断士夫婦に。2024年に診断士登録後、もともと興味のあったDX推進による業務効率化を進めよりよい地域社会を作る一助になりたいと奔走中。
