【第1回 転職の先に見えた「支援のかたち」】

製造業向けの生産管理システムを通じて企業支援に取り組む中川淳一朗さん。これまで三度の転職を経験している。悩みながら選び取ってきた転職の先に、「中小企業診断士」への挑戦があった。今回はその歩みと、中小企業診断士を志した理由をひもとく。
中小企業診断士に囲まれた職場
「うちの部署、6人中5人が中小企業診断士なんですよ」
そう語る中川さんの職場には多くの中小企業診断士が在籍し、企業診断や経営支援に取り組んでいる。
製造業向けに生産管理システムを提供するソフトウェアメーカー。
取引先は、少量多品種のモノづくりを行う「町工場」のような中小製造業だという。
中川さん自身も、自社ソフトを活用した原価改善のサポートを行い、取引先の課題解決に向き合っている。
まさに、事例Ⅲの世界だ。
中川さんが現在の職場に転職したのは、2024年9月のこと。
「以前の職場にいるときから、診断士試験の勉強は始めていたんです。そんなとき、『中小企業診断士もしくは、中小企業診断士を目指している人』を募集している会社を見つけて。資格を活かせるし経験にもなるな、と思い面接を受けました」
試験結果が出るより前の転職だった。中小企業診断士として活動する未来を見据えての選択だ。なぜそこまで中小企業診断士にこだわるのか。
その背景には、これまでの転職経験を通じて培ってきた、とある問題意識があった。
転職支援の現場で感じたジレンマ
中川さんはこれまでに、4つの職場を経験してきた。
最初の職場は、専門商社だった。残業もほとんどなく、給与にも恵まれていた。いわゆる「働きやすい環境」だったという。
「プライベートも充実していたし、待遇にも不満はなかったんです。そういう面だけみるとすごくよかったんですが…」
日々がスムーズに過ぎていく。それゆえに「このままでいいのか」と考える時間が増えていった。将来への漠然とした不安を感じた中川さんは、自らの力をもっと試したいと考え、転職を決意した。
2つ目の職場は、転職エージェント。一変して、厳しい世界だった。数字で評価され、成果を出せば、その分だけ認められる。
どうすれば成果に結びつくかを常に考え、仲間と議論し、行動し、改善を重ねる。熱量の高い日々を「部活みたいだった」と振り返る。遅くまで仕事に取り組むことも多かったが、やりがいを感じていたという。
一方で、心に引っかかる思いもあった。
「転職が正解とは言いきれない場面でも、転職してもらうことが成果につながる。その構造に、もどかしさを感じるようになりました」
成果と支援のはざまで揺れるなか、もっと別のかたちで人のキャリアに関われる道があるのではないか。そんな思いが芽生え、二度目の転職に踏み切る。
変えるべきは人か、会社か
キャリアや働き方に迷う人たちの、力になりたい。
中川さんは3つ目の職場に、個人の働き方に寄り添うキャリアコンサルタントの道を選んだ。
働く一人ひとりと向き合い、その人らしい選択をともに探す日々。個人支援の道をこのまま深めていくことも考えていたという。しかし、次第に感じ始めたのが、「個人の努力だけでは越えられない壁」の存在だった。
「今いる場所や企業があまりに厳しいと、どれだけ本人が頑張っても限界がある。そもそも、働く企業そのものがよくなることも大事だと痛感しました」
働く環境そのものが変わらなければ、支援には限界がある。個人にも、組織にも関われる存在になれたら、もっと意味のある支援ができるかもしれない。そうした想いから、中川さんは「中小企業診断士」を目指すと決めた。
次回は、試験勉強を続けるために工夫した、中川さんの取り組みを紹介する。

三葉晃大 取材の匠メンバー、中小企業診断士
1991年兵庫県生まれ。東京都在住。大学卒業後、アミューズメント系メーカーに入社。法人営業として全国100社以上を担当し、現在は営業部門のマネジメントに従事する。入社以来10年以上にわたり、一度も病欠がない、安定した体調管理が密かな自慢。2025年に中小企業診断士試験に合格。東京都中小企業診断士協会・城南支部に所属。
