【第1回 家事+育児+仕事+勉強を乗り越えた「家族は組織」論】

大学卒業後から今まで、岩手県の地方公務員として順調にキャリアを重ねているT.Tさん。 その仕事と中小企業診断士という資格は、一見するとそれほど近いものとは思えない。しかも受験勉強を始めたのは育児休業中だったというから驚きだ。彼女を駆り立てたものは一体何だったのか、3シリーズで追っていく。
育児休業中に受験!? 決意のきっかけ
T.Tさんが受験を決めた直接のきっかけは、もともと中小企業診断士に興味があった夫から「誘われた」こと。その時、彼女には「ファイナンシャルプランニング技能士や日商簿記検定の資格も取っていて、独学で積み上げていたのもあるから、大丈夫かな」という気持ちもあった。妊娠を望んでいた時期には、資格の勉強をすることで気を紛らわせていたという経験も思い出していた。夫からは「一緒に受験はしなくても、(受験会場の)仙台にはついてきて」と言われていたこともあり「どうせ行くなら」と受験を決めたという。
本格的に勉強を始めたのは、2022年の4月。まだ子どもは5か月で、T.Tさんは育児休業中だった。幼子を抱えながら勉強に励み、同年8月の1次試験を夫と共に突破。そのまま2次試験にチャレンジするも、惜しくも不合格。一方で子どもが1歳になった、翌2023年1月からは職場にも復帰した。以降、2回目の2次試験へ向けて、仕事・家事・育児・勉強と「4足の草鞋」を履くことになる。
最大の敵は眠気と労力
聞いただけでハードな毎日が想像できるが、事前にその覚悟はあったのだろうか。本人は「子育てってそもそも大変だって皆言うから、もう考えないようにしていた」と笑う。実際にその場に立ってみて辛かったのは、やはり眠気や疲労感。特に職場復帰してからは大変な日々を送った。昼休みも「寝てしまうと逆に疲れそう」という思いで休まずに復習をしたり、仮眠の後、深夜に起きて勉強を始めたりと、疲労をごまかしながらの生活が続く。「昼休みとか、朝の子どもが起きるまでのわずかな時間とか、ちょっと頭がすっきりしているその時間に『スマホのメモに入れておいたのを読む』という感じで、細切れの時間を工夫して使っていました」。
しかし、こうもフォローする。「子どもがまだ歩かないで、ベビーベッドで寝ている0歳や1歳くらいだったから、まだ何とかなっていたと思う。2歳とか3歳になって走り回るような時期だったら、こうはいかなかったかな」。「たまたま寝つきがよかった」というその子の個性や、特に1次試験に向けての勉強中は「寝んねの時期」だったことも好機だった。その頃は、近くについていれば寝入った後にテキストをみる、というようなことがしやすかったという。
家族とは「持ちつ持たれつ」
共に受験勉強に励んでいた夫も協力してくれた。土日はどちらかが育児を担い、どちらかが勉強をする。そんなスタイルが定着した。
一方で気になるのが、他の家族の反応だ。育児休業を使って自己研鑽に励むことに、賛否両論あることは覚悟していたという。自身の実家からは「もっとちゃんと子どもを見て」と言われたこともあったが、実態を交えて対話。物理的に距離が近かった義両親に対しては特に気を配り、子どもを預けるのも「ここぞ」というときに限った。「自分ができることはできる限り自分でやる。 あとは『持ちつ持たれつ』。組織論のような感じで、お互いに助け合う空気にしていきましたね」。学んだことを生かしながら真摯な姿勢を見せるT.Tさんに、周囲も好意的だった。
育児をしながらの受験勉強は、デメリットばかりではなかった。良かったことの1番を、子どもが「シンプルにかわいい」ことだとしたうえで、「中小企業診断士の資格を取ることで、もしかしたら『何か残していけるのかな』ということを意識するようになった」と語る。出産前はわからなかったこの気持ちが、今後のビジョンにもつながっていく。

宮本咲子 取材の匠メンバー、中小企業診断士
長崎市出身・在住。大学卒業後、地元の金融機関に就職。4年の勤務の後、結婚による転居のため退職。以降10年程度、専業主婦として国内外の転勤に帯同。その間に出会った中小企業診断士の資格に興味を持ち、勉強を開始。現在は会計事務所の事務員として在宅勤務をしながら、長崎県よろず支援拠点コーディネーター業務にも従事し、創業や事業計画策定などの支援を行っている。一般社団法人長崎県中小企業診断士協会所属。
