【第3回 苦しい時期は未来への架け橋】
過去の記事:第1回、第2回

家事、育児、仕事をこなしながら約1年半の勉強で中小企業診断士試験に合格したT.Tさん。資格を得られた今、どのようなビジョンを描いているのか。自身の経験を客観視しながら新たな挑戦に悩む人たちへのメッセージを送る。
挑戦したからわかったこと
もともとは語学の方に興味があったT.Tさんだが、地方公務員という現在の仕事としては関わりが薄い。それは中小企業診断士の資格も同じだ。それでも試験に挑戦し資格を取得した意義は大きいと思っている。特に役立っていると感じるのは業務改善の現場。「どのようにしたら全体の負担が少ないか」という1段高い視座でものごとをみるようになった。「資格を取る前までは、業務について何かを指摘しても『なんとなく根拠が弱いな』と感じていた。それが今はきちんと理屈を持って言える」と自信を持つ。
T.Tさんのように、過去の学びや現在の業務とのつながりが少ない人にも資格取得をすすめられるかと質問してみた。「何かこれをやりたいということであれば、それはもうおすすめしますし…。あとは、包括的にいろんな知識がつくから『思ってもみない出会い』というのもある。私の場合はITとかの情報系分野とか。自分の枠を超えるものにも触れられる、いいチャンスだと思います」。
そしてまだまだ数が少ないと言われる女性診断士。自分自身の状況も踏まえ「女性はライフステージの変化で働き方、生活様式が大きく変わる」と感じる。「資格の取得でその変化に対応できるようなスキルを持てる可能性もあると思います」。女性の挑戦もそっと後押しする。
「子どもに何かを残したい」という思い
具体的な今後の展開については、「しばらく今の職場で企業内診断士かな」とつぶやくT.Tさん。既出の通り、間接的でも学んだことが生きていると感じる。幅広い業務の中では、いつかもっと直接的に資格を生かせる場もあるかもしれない。一足飛びに「独立」を考えずとも、やれることはまだ多い。
一方で、これからやってみたい挑戦として「ブログや投稿サイトなどで、まとまった文章を書くこと」をあげた。「試験を受けたチップスのようなものを備忘録として投稿してもいいし、それ以外のことでもいい。何か、書いてみたい」。
「何かを書きたい」という希望もまた、「残す」ことにつながるのかもしれない。第1回も語った「子どもに何かを残したい」という思い。「子どもに何を残すかは、もう人それぞれ。私は、自分が中小企業診断士や『ワーキングマザー』という立場で頑張ることで、子どもにプラスの影響を与えられるような生き方をしていきたい」。母親の顔に戻って、そう語る。大変だった過去が今、未来への原動力となっている。
好機はいつか訪れる
そんなT.Tさんは自分の長所について、「コスト意識のなさ」をあげている。すぐに結果につながらなくても焦らないそうだ。後がなかった2回目の2次試験。一般的にはプレッシャーのかかる状況。それでも彼女は「合格しなくても、学んだことは何らかの形で役に立つかなという手応えもあったので、悲観しないようにしていた」と言う。まさにその長所を体現している言葉だ。
だからこそ、思うことがある。「子どもも成長して、逆にお世話の負荷も大きくなったし仕事の都合や自分の体調なども考えると、もし今、中小企業診断士の勉強をしたいと思っても難しかった。タイミングというのはあると思う」。そしてその「タイミング」が巡ってこないと悩む人に対しては、こうエールを送る。「少しずつ準備をしていれば、予想外に別の形で花開いたり、何年か越しにとうとう受験の好機が巡ってきたり…。そういうことも、人生であると思いますから。今できることを少しずつやれば、目に見える結果という形でなくとも、行きたい方向には進んでいけると思っています」。あたたかな視線を送るT.Tさんの姿を、いつかきっと子どもは誇りに思うに違いない。

宮本咲子 取材の匠メンバー、中小企業診断士
長崎市出身・在住。大学卒業後、地元の金融機関に就職。4年の勤務の後、結婚による転居のため退職。以降10年程度、専業主婦として国内外の転勤に帯同。その間に出会った中小企業診断士の資格に興味を持ち、勉強を開始。現在は会計事務所の事務員として在宅勤務をしながら、長崎県よろず支援拠点コーディネーター業務にも従事し、創業や事業計画策定などの支援を行っている。一般社団法人長崎県中小企業診断士協会所属。
