【第1回 受験と重なる人生の転機】

加茂さんは1次試験を3回受けていますが、いずれも人生のターニングポイントといえるイベントと重なっていました。インタビューの第1回では、受験期にどのような生活を送っていたのか尋ねてみました。
受験と結婚のバッティング
――加茂さんは、なぜ中小企業診断士試験を受けようと思ったのでしょうか。
私は現在、マーケティングリサーチを専業とする会社に在籍していますが、試験勉強を始めた2016年は広告制作会社に勤務していました。といっても広告だけではなくマーケット調査も実施しており、さらに調査結果報告からコンサルティングに発展することもあったんです。そんななか当時の上司から診断士資格を紹介されて、様々な分野を網羅的に勉強することができてコンサルティングにも活かせるというので、面白そうだな、と思って2016年4月から始めたのがきっかけですね。
――その会社に先輩診断士はいましたか。
いえ、ロールモデルとなる方はいませんでした。独学だったので、始めはすべてが手探りでした。
――4月からだと、準備期間はかなり短かったのでは。
そうですね。立てた計画が甘かったこともあって、1回目の1次試験は不合格でした。
――2回目を受験したのは2019年でしたが、なぜ2年間もブランクがあったのでしょうか。
実は1回目の試験勉強中に、妻にプロポーズしたんです。それから結婚の準備と試験勉強が重複してしまって…1次試験終了後に挙式をして、翌年の2017年は新婚旅行に出掛けました。しばらくは勉強よりも妻とどこかへ出かけることに時間を使いたかったんです。
不合格を糧に転職活動
――そうだったんですね。ではその2年間はまったく勉強しなかったと?
中小企業診断士の勉強はしませんでしたが、2017年に統計検定の勉強を、2018年には簿記2級の勉強をして、それぞれ合格しました。自分の性格的に、10週間くらいかけて集中的に勉強するのが性に合っていたんです。この2つに合格して、そろそろ中小企業診断士の方も再スタートかなと思い、2019年に勉強を再開しました。
けれども、その年の1次試験も不合格でした。経営法務の点数が1マーク分足りなくて、足切りになってしまったんです。
――…それはショックだったでしょうね。ただ、現在の会社に転職されたのもこの年でした。
そうなんです。1次試験後の自己採点で落ちていると気づき落ち込んだのですが、9月の公式発表で改めて確認して、その日から転職活動を本格的に始めました。今思うと、受験で満たされなかった自己承認欲求を転職活動にぶつけたんでしょうね。志望度の高い会社に入れたので、その意味ではケガの功名と言えるかもしれません。
出産を控え背水の陣
――そして翌年の2020年に1次、2次ともに合格しました。この年は順調だったのでしょうか。
始めは、前年の知識の蓄積もあって順調だったと思います。ただ、5月に妻が妊娠していることがわかりました。夏は妻のつわりがひどくて、申し訳ないなと思いながら勉強していました。出産後の子育てを思うと、「今年を逃したら次は無いな。受験は今年で最後だろうな」と勉強しながら考えていましたね。
2020年は新型コロナウィルス対策として、その年に2次を受験しなければ翌々年まで受験できる特例があったのですが、それを利用しようとは思いませんでした。
――2次筆記試験に合格したときの心境はいかがでしたか。
受験後の手応えとしてはどの事例も55点くらいで、不合格かなと思っていたので、合格発表を確認するときは期待も緊張もありませんでしたね。自分の受験番号を見つけたとき、喜びというよりはほっとした、という感覚でした。妻の出産も翌月に控えていましたので。

鈴木 建 取材の匠メンバー、中小企業診断士
北海道札幌市在住。1970年生まれ。2019年診断士登録。その後2年間診断士資格を活用することは無かったが、75歳まで健康に働き続けるため早い段階でセカンドキャリアに移ろうと、新卒で就職した地元電力会社を2021年に退職。2022年2月独立。現在は北海道を活動エリアとしてフットワーク軽く「診る・書く・話す」診断士像を模索中。