【第２回 弱みを認識して変えた学習スタイル】
過去の記事：第１回
年の近い同僚の女性に触発され、診断士試験の勉強を始めた長山さん。初年度は通信教育を利用したものの苦手科目のテキストが理解できず、「こりゃダメだな」と思いつつ受けた１次試験は惨敗に終わる。しかし、そこで簡単に諦めることはしなかった。
１次試験まではできるようになる、と聞いて「課金」
「通信教育が自分には合ってなかったと思います。まず、全然勉強しなかったんですね。スケジュールが立てられなかったというか。縛られないと私はできないのだとわかりました」
そこで、「１次試験まではできるようになる」と同僚から聞いた資格予備校に「課金」することを決心した。
「予備校では直接質問できるというのがとてもよかったです。それと私は中学受験以来エスカレーター式に進学していて、そもそも受験勉強に慣れていないというか…長期に渡ってたくさんのことを学んで試験を受けるという経験がなくて。まず勉強のやり方みたいなところから教えてもらいました」
授業中は習熟度が上がっていく実感があった。しかし、過去問や予想問題を解いてみると全く思った通りに得点できない。一番ショックだったのは得意科目の企業経営理論だ。絶対これだと自信を持って選んだ選択肢がことごとく間違っていた。
「それは、コツを聞きました。選択肢に書かれたことを知っているかどうかではなく、選択肢の文章の間違い探しができるかどうかだと。その方が早く正解にたどり着くと講師の先生から教えてもらいました」
地道に勉強することも大事だが、試験合格にはテクニックも必要である。とはいえ、自身を「頭脳派というよりは肉体派」と表現する長山さんはテクニックに走りすぎることもなく、一人暮らしのリモートワークで時間が使えるというアドバンテージを活かし、とにかく数をこなすという王道を突き進んだ。
「問題集を20周くらいやりました。そこまでやるとだいたい覚えてきちゃう」
“タイパ重視”の若者には珍しく、泥臭く汗水垂らすのを厭わないなかなかの努力家である。
気持ちの切り替えで運を味方に
そして迎えた二度目の１次試験。
例年安定した出題傾向だと言われていた経済学が予想外に難しく、初日の朝一番にペースを崩される。続く財務・会計でもまさかの新傾向問題が続き、「あれだけ毎日勉強したのだから大丈夫」という自信が打ち砕かれてしまった。
「終わった、足切りだと思いました。その後の企業経営理論はもう頭真っ白状態でした」
呆然としたまま帰宅すると、ふと予備校の先生の言葉を思い出した。
「諦めたらダメ、運が良ければ大丈夫、頑張っていれば運が味方してくれる、って言っていて。その先生も、最後の３問を時間ぎりぎり勘でマークしたのが正解で合格したそうです。自分もそれだと信じようと決めて、その夜は一切初日の試験を振り返らず、翌日に向けた勉強に集中しました」
二日目の最初は経営法務。問題用紙を開くと、直前に予備校で「これは出る」と言われていた問題が２問もあった。
「知ってるこれー！ って、最初から調子が出て。一番低い点数を予想していた苦手の法務が、結果的に一番良かった。こんなこともあるんだ、諦めなくてよかったなと思いました」
そうして無事に１次試験を突破した長山さん。土壇場のピンチでは、知識よりも、諦めない強い信念が結果に結びつくこともある―それは実務においても言えることだ。長山さんの場合は、気持ちを切り替えて二日目の試験に集中できたことが勝因だったに違いない。
２次試験一発合格を掴むまでの道のり
続く２次試験は同年に一発でクリアした。１次試験終了から期間も短い中、合格を掴んだ勉強法・秘訣は何だったのだろうか。
「予備校では『上級コース』に通っていて、４月頃に２次試験の概要を学びます。なので、１次終了後に初めて取り組む人よりはアドバンテージがありました。苦手な事例Ⅳは先生がかわいそうになるくらい何度も質問にいき、毎日取り組みました。それと…」
長山さんは当時のことを語り始めた。
青柳 紗千子 取材の匠メンバー、中小企業診断士
群馬県出身。大学卒業後、アパレル業界にて15年間営業として勤務。国内外サプライチェーンのあらゆる現場に立ち会う中、中小企業の抱える様々な経営課題に直面し中小企業診断士を志す。企業退職後、行政の男女共同参画分野での３年間の勤務を経て、中小企業診断士として独立開業。「人権経営」を提唱し、あらゆる人が能力を発揮できる強い組織づくりを支援している。2023年資格登録、東京都中小企業診断士協会城東支部所属。
