【第2回 合格のための三本柱】
過去の記事:第1回
2020年8月から受験をスタートし、仕事と子育てを両立しながら1年3ヶ月での短期合格を果たした豊田さんに、中小企業診断士試験を突破するための秘訣を聞いた。第2回は質と量を両立する具体的な勉強方法等について伺う。
過去問を利用した戦略的な勉強
資格学校の出版する書籍は利用したものの、資格学校の講義はほとんど利用せず、ひたすら過去問を中心とした勉強を行った。仕事・子育てを両立する豊田さんに、資格学校の講義を視聴する時間の余裕はなかった。「特に2次試験では、難しい小問が出題されたとしても、必ず点数が取りやすい小問もあわせて出題されますよね。全体で合計60点とれば合格だから、点数が取れる小問で40点、難しい小問で20点とることを目標にして、そのための戦略を立てました」
この目標を達成するために、2次試験の過去問を累計で100事例以上は解いた。もちろん、ただ闇雲に過去問を解いていた訳ではなく、明確な理由がある。
「まず難しい小問で0点を取らないためにどうすれば良いか考えました。私の場合は、初見の問題で点数が取れないことがわかったので、あらゆる種類の問題を解けるよう、古い過去問にも取り組みました」
まず目標を立て、これを達成するための手段を考えるのは中小企業診断士として必須のスキルだが、診断士試験でもこれは同じ。豊田さんは、的確な自己分析に基づいて、目標達成に向けた戦略的な勉強を実現した。
苦手の「見える化」で質の高い学習を
目標を達成するためにはPDCAによる成果管理が重要だ。仕事柄、問題点を「見える化」するように指摘することが多いという豊田さん。「過去問を解く中で自分の苦手なところを見える化して管理していました」過去問を解いた後の振り返りができていなかったと謙遜する豊田さんだが、実際には、自身の勉強結果を徹底的に「見える化」した。
1次試験・2次試験の過去問を解いた後、答え合わせ(2次試験は同友館「中小企業診断士2次試験 ふぞろいな合格答案」シリーズを利用した自己採点)を行い、その結果をすべてエクセルに記載した。この結果、どのような問題で間違えるのか、どのような知識が足りていないのかといった、自分の苦手の傾向が見えてくる。ここまで来れば、あとは苦手を潰していくだけだ。「苦手な問題ばかりやっていたら、モチベーションが保たないので、得意な問題も織り交ぜながら過去問を回しました」過去問を中心に「量」をこなした豊田さんだが、単純に「量」をこなすのではなく、「質」の高い勉強も実現した。
質と量の実現―電車の中で解く過去問
いくら質の高い勉強をしていたとしても、2次試験の事例を100題も解こうと思えば、当然、それには相当な時間がかかる。豊田さんも、合格までの総勉強時間としては1000時間前後に達するというが、仕事と子育てがある中で、いつ、試験勉強を進めたのか。「自宅から会社まで通勤するのに、ちょうど1時間くらい電車に乗るんです。始発駅に近い駅を利用しているので、朝の電車の中で2次試験の事例を解いていました」
社会人受験生は平日の隙間時間の活用が重要だといわれるが、豊田さんは通勤時間を活用した典型的な隙間時間の活用例だ。「朝早く起きてまず設問解釈をしておくんです。その後、電車の中で実際に解答を作る。それで、帰った後に答え合わせをしていました」もちろん、平日の隙間時間の活用だけではない。土曜日の午前中に食事の作り置きを用意した後、土曜日の午後か日曜日の終日は勉強に割いた。毎週、夫が子供を連れ出して、勉強時間を確保してくれたのだという。
「診断士試験合格には『覚悟』が必要だと思うんです。やろうと決めたら、とにかくできるまでやる。これが大事だと思います」質と量の両立、そしてそれを進めるだけの「覚悟」、これが短期合格の三本柱だった。
安部慶彦 取材の匠メンバー、中小企業診断士
埼玉県出身。2016年に弁護士登録後、都内大手法律事務所にて企業法務に従事。法務アドバイスを重ねる中で、クライアントを真に理解するためには経営知識が必要であると実感し、2023年、中小企業診断士資格を取得。現在、法務・税務・経営の三本柱で中小企業のサポートをしながら、埼玉県よろず支援拠点のコーディネーターも務める。