【第2回 夜明け前の革命】
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大手鉄鋼・産業機械メーカーで営業職として活躍する佐橋俊介さんは、人事異動をきっかけに自身のキャリアに危機感を覚え、中小企業診断士の資格取得を決意した。第2回では、家族との時間を守りながらも試験勉強に奮闘し、戦略的に合格をつかんだその姿に迫る。
午前3時から始まる自分時間
佐橋さんは、仕事の時間、家族の時間、家事の時間の制約がある中でどのように試験勉強を進めたのだろうか。その成功の鍵は時間の作り方にあった。
「子どもを9時に寝かせるんです。9時に一緒に私も寝ます。そして朝の3時に起きて2時間勉強するっていうのを、ずっと平日も土日も繰り返しました。ほぼ毎日、二日酔いじゃなければ」と冗談交じりに佐橋さんは語る。朝3時からの静寂の時間を活用することで、佐橋さんは自分だけの集中時間を手に入れた。だれにも邪魔されずに勉強できる貴重な2時間だ。「2時間あれば2次試験の問題も1題ちゃんと解けます」と佐橋さんは胸を張る。
今も3時に起きて自分の時間を有効活用しているという佐橋さんに早起きのコツを聞いてみた。「時間をどうずらすかというだけですよ。9時に寝て3時に起きても6時間寝ているんです。11時に寝る人も5時くらいに起きる人だと6時間寝ているでしょう。早く起きたいなら早く寝る」と佐橋さん。子どもの寝た後の時間を使うことは考えなかったのだろうか。そう聞くと、佐橋さんは、「夜9時以降に何かするよりも、子どもと一緒に寝る方が自分の満足度も高かったし、それが妻の負担を下げることでもあった」と笑った。
受験計画から練る勉強計画
佐橋さんの試験勉強は時間の作り方以外の面でもとてもよく考えられている。1次試験の攻略に最初から2年かけることを決め、1年目は2次試験との関連が薄い科目に集中し、2年目で残りの科目の合格を狙った。結果、予定通り合格。1次試験の勉強は完全独学で、市販のテキストと過去問集を使い、いつも持ち歩いて隙間時間や職場での昼休みも活用した。「やるべきことをやって時間をかけていけば、1次試験はいずれ合格できる」と佐橋さんは語る。
2次試験は2度の受験での合格だ。1次試験を独学で突破した佐橋さんだが、2次試験は1年目も2年目も通信制の予備校を利用している。2次試験は解答を誰かに見てもらう必要があると考えたからだ。だが、1年目と2年目で予備校は変えた。予備校によって考え方や教え方が違い、2年目の予備校の方が佐橋さんの思考にマッチしたのだそうだ。「2次試験は1回で受かりたかったなって思ったんですけど、でもやっぱり、1年目だけで受かっちゃうと相当知識も浅かったんだろうなって思います」と振り返った。
自分のペースで続ける勉強
特に勉強仲間をつくることはしなかったという佐橋さんだが、ひとりで勉強を続けるモチベーションが下がることはなかったのだろうか。そう聞くと「同じ時間に起きて勉強してから出かける、電車の中で勉強するとか、もう日常の一部で特別なことじゃなかった」と答えてくれた。毎日の勉強時間をExcelシートで管理し、総勉強時間は2,000時間を超えたという。「Excelに0が並ぶと切なくなりますし、コツコツやるタイプなんでしょうね。朝一の勉強をしない方がストレスになっていたと思います」と語る佐橋さんからは、自身の性格に合った勉強スタイルが確立されており、気分に左右されない土台ができていることが伺えた。
次回は、佐橋さんが資格取得後にどのような展望を抱いているのかを紹介する。中小企業診断士資格取得をきっかけに新たなネットワークに踏み出していく姿勢に注目してほしい。

K.I. 取材の匠メンバー、中小企業診断士
大学卒業後、特許事務所やメーカー知財部に勤務、知財管理やバックオフィス環境整備に従事。知的財産管理やSaaSを活用した業務改善に知見をもつ。ITを生かして働く人も関わる人も楽になる職場環境を実現することが目標。