【安部慶彦さんインタビュー】中小企業診断士の大海へ~ポートフォリオを組み替え続けるロマン派士業~

【安部慶彦さんインタビュー】中小企業診断士の大海へ~ポートフォリオを組み替え続けるロマン派士業~

【第2回 挑戦は一度だけ】
過去の記事:第1回

「弁護士が扱うのは過去。未来を向いた仕事がしたい」と中小企業診断士を目指した安部慶彦さん。2021年末に勉強を始め、1次試験、2次試験とストレート合格。弁護士としての仕事をしながら、2023年5月に中小企業診断士登録し、地元埼玉で中小企業診断士の活動をスタートした。第2回目は、中小企業診断士試験に向けた勉強法について聞いた。

資格学校の問題集にとことん向き合う

自身の勉強法について、「これ!」と決めたテキストや問題集ととことん向き合うスタイルという安部慶彦さん。中小企業診断士試験に向けて、資格学校やオンライン講座など調べた結果、1つの資格学校に決めた。動画視聴が中心で好きな時間に学習できるという点に加えて、ストレート合格したら学費免除、さらに祝い金という条件にひかれた。

1次試験は資格学校の短答式過去問集に向き合うと決めた。主な勉強時間を平日の夜と決め、出張時の移動時間も活用し、問題集を繰り返し解いた。さらに、動画講義をすべて2倍速で視聴することで、隙間時間も活用した。弁護士である安部さんは、1次試験7科目のうち経営法務と財務は試験免除となる。また、大学時代、経済学を副専攻していたこともあり、経済学についても、習得にそれほど時間はかからなかった。

一方で、運営管理は苦手で「一般企業、なかでも製造業の経験がないので、2次試験の事例Ⅲも含めて苦労しました」という。それでも短答式問題集を10回以上繰り返し解くことで克服し、1次試験を無事突破した。

常に挑戦は一度だけ

2次試験に向けても、資格学校の問題集と動画講義の2倍速視聴という戦略を変えず、一直線に合格にたどりついている。他の参考書などが気になることや、勉強法を変えたくなることもあったのではと質問したが「これと決めたら浮気はしない」と迷いがなかった。

インタビュー中淡々と受験期間を振り返る姿からは、スランプとは無縁に思われた。しかし、実際は1次試験前の5~6月ごろ、勉強に対する熱量が少し下がっていたという。そもそも経営者にアドバイスできるようにとの思いで勉強を始めたのだ。企業経営理論を学び終えた時点で目的は達成したようなものだと考え、受験をして資格取得することにこだわりがなくなりつつあった。

さらに、「家では当時1歳半くらいだった息子の寝かしつけをしていたけれど、何度も一緒に寝落ちしてしまって、あっ!勉強できなかった。となった」と一瞬柔和な父親としての顔を見せてくれた。家族との時間を犠牲にしてまで、受験をする意味があるのかと悩みもした。そんな時、科目合格や1次試験まででもいいやという気持ちなかったのだろうか?それに対しては、「合格でも不合格でも、挑戦は1度だけと決めていた」と安部さんらしい明快な回答だった。実は司法試験も挑戦は1回だけと決めており、不合格だったら一般企業に就職する予定だったという。

合格しなければ受講料が無駄になることや、挑戦を支えてくれている家族の思いも受けとめ、再度受験に対する気持ちを奮い立たせて迷いの時期を乗りきった。2次試験については、解答欄の文字数の少なさと、法律用語とも異なる独特の表現に合わせるための「チューニングに苦労した」と振り返る。司法試験の解答用紙はA4サイズ8枚あるという。求められる知識は膨大であるが、解答スペースは十分にあった。対して中小企業診断士2次試験は20文字や40文字の中に、キーワードを詰め込まなくてはいけない。そこで、動画講義の解説を参考に過去問を繰り返し解くことで、2次試験に合わせた答案作成を習得していった。苦手と話す事例Ⅲは58点だったが、事例Ⅳで高得点を出し、見事合格した。

テクニックよりも知識の定着

弁護士業務と試験勉強のやりくりについては、弁護士は個人事業主の集まりなので、むしろ企業勤めよりも時間は捻出しやすいと教えてくれた。優先順位付けや効率化が得意なので、急ぎではない業務も早めに片付けて空いた時間を勉強に充てるなどの工夫をしたことで、十分な勉強時間を確保できたと話す。試験勉強におけるコツについて「重要なのは出題意図の理解と反復学習。これはすべての試験にいえる」と説明。物量をこなして知識を身につけることを意識しており「知識が定着していなければ、そもそも合格ラインにたどりつかない」と基礎力の重要性を述べた。

インターネット上には、合格者の経験談や受験のテクニックなどが多数掲載されているが、安部さんはそういった情報を知らなかったという。「試験期間中は知らなくてよかった。出回っている情報は玉石混交であり、惑わされずに、これと決めた勉強を続けるべき」後輩受験生に向けてそうアドバイスする。司法試験、中小企業診断士試験ともストレート合格の安部さんの言葉は、試験に向き合う多くの受験生の参考になりそうだ。








内田 和典

内田 和典 取材の匠メンバー、中小企業診断士
埼玉県出身。大学卒業後、食品メーカーに入社し、20年余り調味料の開発に携わる。加工食品の原材料から製品開発までを経験。2021年4月からは食品工場で購買業務に従事。2021年に中小企業診断士試験に合格し、2023年10月に登録。東京都中小企業診断士協会城北支部に所属。

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