【ヒロさん(仮名)インタビュー】技術者が歩んだ200kmの学びの道:単身赴任の先に見えた未来

【ヒロさん(仮名)インタビュー】技術者が歩んだ200kmの学びの道:単身赴任の先に見えた未来

【第2回 そして、遠距離通学が始まった】
過去の記事:第1回

技術者として順調にキャリアをスタートしたヒロさん。事業部門への転属を機に単身赴任を始め、これまでの生活が一変する。自宅から遠く離れた場所で診断士受験を決意したヒロさんはどのように試験勉強に取り組んだのだろう。第2回では、そのリアルな中身に迫る。

単身赴任先と東京を往復する生活

経営・業務知識の習得手段としての中小企業診断士資格に出会い、受験を決断したヒロさんが東京都内の資格学校への遠距離通学を決めたのは、単身赴任開始から3年弱が経過した2015年の秋だった。平日は単身赴任先で自学習、そして土日は資格学校のある東京まで約200kmの道のりを移動する、そんな受験生活がスタートした。

「平日は出勤前の朝2時間、土日は5時間の勉強時間が確保できていたのは単身赴任だったから。職場への通勤時間も短いですし、共働き家庭のような家事分担もない。部屋の掃除はもっぱらお掃除ロボットにお任せでした(笑)」

とはいえ、単身赴任先では孤独を感じることもあったはずだ。特にオリジナルな勉強方法はなかったと語るヒロさんだが、苦手だった1次試験の暗記科目や2次試験対策には、学習のモチベーションを上げながら「勉強を楽しむ」工夫があったようだ。

自作の暗記カードを学習のペースメーカーに

多くの受験生を悩ませる暗記科目の対策方法には一般的に2つある。一つは、覚えたい箇所にマーカーペンで線を引き、赤や緑のシートで隠す「暗記ペン」方式。もう一つは、質問と答えを一問一答のセットにした「暗記カード」方式である。学生の頃から暗記科目が得意ではなかったというヒロさんは断然「暗記カード」派だ。なぜなのか。

「とりあえず、一枚ずつめくってゆけば確実に勉強が進んでいくじゃないですか(笑)」

暗記ペンを使った方法は暗記の対象に“入り込む”ための集中力が必要で、どうしても長続きしにくいのだという。一方、暗記カードは進めた学習量を枚数として数えることができ、アプリを使えば誤答した質問が数日後に自動で再出題される仕掛けにもなっている。これを繰り返すことによって記憶が定着してゆく。暗記カードは自分で作ることができるため、オモテ(質問)とウラ(答え)を自分なりに整理するプロセスも知識の定着に役立ったようだ。

受験仲間が切磋琢磨する勉強会の力

単身赴任中も週末の遠距離通学を貫いたヒロさん。隙間時間を活用した暗記カード学習の継続も功を奏し、1次試験を見事に一回で合格した。そのまま通い慣れた資格学校の2次試験対策講座に取り組んだが、「その時は全然準備が足りなくて」不合格。翌年も継続することにした。しかしこの当時、自分の単身赴任が一体いつまで続くのか、全く知る由もなかったという。いつも穏やかな笑みを絶やさないその表情の裏では、来年こそ必ず合格してみせるという強い決意が固まっていたことだろう。

2次試験の学習中は、講義終了後の”勉強会”にも毎回顔を出した。自主参加のため、校舎周辺の会議室を借りることも多かった。演習問題を解いたのち、参加者同士でディスカッションをして解答プロセスの研究をする。これを何度も何度も繰り返した。しかし当初は全く点数が伸びず、仲間との実力差に悩んでいたという。やがて、互いの課題や悩みを共有し刺激を受けあううち、翌年(2017年)6月頃から成績が伸びはじめ、試験直前にはA判定がでるようになったと振り返る。

こうした”受験同期生”とのface to faceコミュニケーションは、孤独になりがちな単身赴任中のモチベーションを維持するうえで特に貴重な時間だった、と当時の思い出を噛み締めるように語ってくれたヒロさんは、二度目のチャレンジで無事2次試験に合格した。







大野 秀敏

大野 秀敏 取材の匠メンバー、中小企業診断士
東京都出身。富士ゼロックス株式会社(現富士フイルムビジネスイノベーション株式会社)入社後、エンタープライズ向け商材の企画から商品開発、ローンチまでのプロジェクトマネジメントを長く担当。海外との共同開発プロジェクトリード経験多数。現在は横浜国立大学特任准教授として、研究成果の社会実装支援や地域との産学共創プロジェクトを通じたアクションリサーチなどに取り組む。東京都中小企業診断士協会所属。

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