【第1回 沖縄との出会い】

大手製薬会社の企業内診断士である田部井可奈子さんは2024年7月に中小企業診断士登録予定だが、既に2025年沖縄での開業準備を進めている。第1回では子供時代から沖縄に出会うまでの経緯についてうかがった。
沖縄で2025年の開業を目指し準備中
「沖縄の北部に自宅兼宿泊施設となるヴィラを建築中です。2025年の開業を目安に動いています」。田部井さんは大手製薬会社に勤める企業内診断士で、2024年に中小企業診断士試験に合格したばかり。中小企業診断士登録は2024年7月の予定だが、来年に会社を退職して沖縄に移住し、夫といっしょに全くゆかりのない沖縄でヴィラを開業する予定だ。田部井夫妻が建築しているヴィラは部屋数をできるだけ少なくして、顧客がゆったり過ごすことができる宿にするそうだ。「主人と4年前に沖縄旅行に行ったことがきっかけです。青い海、温暖な気候。沖縄っていう場所が好きですね」。笑顔で大好きな沖縄の話をしてくれる田部井さんだが、今に至るまでの道のりは平たんなものではなかった。
家族の価値観を受け継ぎ大手製薬会社に就職
田部井さんの家族は、父が薬剤師、母は元製薬会社の事務員、そして祖父は医療機器の医薬情報担当者(Medical Representative 以下MR)という家庭環境で、とくにMRであった祖父からは大きな影響を受けたようだ。幼少期は両親のいろいろ経験させてあげたいという教育方針のもとでキャンプとか科学技術教室のような場でたくさんの体験をした。「基本的にいろんなことに興味があるタイプ。結構新しいことにすぐ首をつっこむ。でも飽き性なのですぐ飽きちゃうこともあるんです」と自己分析する田部井さん。大学は金融に興味があったことから商学部に進学、銀行員を志望し、金融関連企業をターゲットに就職活動を行った。
しかし、製薬関係の家庭環境から製薬業界も見るようになり、人の役に立ちたいという軸で考えていたこととMRであった祖父の影響もあり、結果的に製薬業界へと進んだ。会社ではMRとして、医療用医薬品の情報を医師・薬剤師などに伝え適正使用の推進や新薬の採用・処方拡大といった営業活動を行っていた。日々製品や疾患に関する知識をアップデートしながら担当病院の売上拡大を図る仕事だ。しかし会社での経験年数が長くなるにつれて、次第に仕事に対する迷いが生じ始めた。「業界のコンプライアンスが厳しく困っている顧客をダイレクトに助けてあげられない。また、同期が海外勤務とかでステップアップしているのを見て焦りを感じながらも、でもそこに同じように目指す気持ちを持てないなど、何をしてよいかわからない迷子になっていました」
会社で感じた限界 運命の出会い そして大病の告知
田部井さんが迷いを感じている時期に夫も悩んでいた。夫は同じ会社の別部門に勤務していたが、上層部の方針に従い決められた範囲の中で業務を遂行する日々を送りながら、自分でいろいろ考えて実行することができない業務スタイルに行き詰まりを感じていた。そんななかで、ちょっと旅行に行こう、と二人で向かったのが沖縄だった。温暖な沖縄の気候は行き詰まりを感じていた二人の心を癒した。そしてその時に夫婦で経営するゲストハウスに泊ったことが運命の出会いとなった。オーナー夫婦といろいろな話をして、自分たちのライフスタイルを大事にしながらも旅人との交流もできる、こんな選択肢もあるのかと思った。そした沖縄旅行の後、2022年から田部井さんは中小企業診断士資格の勉強を開始。しかし、2年かけて1次試験を合格してさあ2次試験だと思っていたときに、思わぬ大きな試練が待ち受けていた。

髙田 浩一郎 取材の匠メンバー、中小企業診断士
東京都在住。大学卒業後、総合物流企業に入社。国際旅行業務、国際航空業務、国際海運業務などに従事。営業部門、管理部門、またシンガポールで駐在員など幅広く経験。2023年5月中小企業診断士登録。物流を得意分野としたよろず支援ができる中小企業診断士になるために日々奮闘中。武道が好きで現在は合気道の稽古に励んでいる。趣味はギター演奏、特技は指圧。