【第2回 意地をかけて臨んだ試験、2次試験合格を叶えた「正しい解き方」とは】
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診断士試験の勉強を65歳で始めた齋藤さんにとって、最大の関門は2次試験だった。4度の不合格を経てたどり着いたのは、「正しい解き方」という気づき。第2回では、試験との向き合い方をどう変え、合格をつかんだのかをうかがった。
4度の2次試験不合格、やり方を変えなければ
2次試験は4回連続不合格となってしまった。「4回目に落ちた直後、やり方を変えなければだめだと思いました。自分はやり方を間違えていたのだと。それまでは正解を求めて解いていたのですが、そうではなく、正しい解き方をすることが必要ということに気付きました。」
齋藤さんの言う「正しい解き方」とは、限られた試験時間内で合格水準に達する答案を仕上げるために必要な解き方のことだ。問題用紙が配られ、開始の合図とともに表紙を開いたら、闇雲に与件文を読み始めず、まずは設問文に目を通す。取り組む問題の優先順位をつけ、時間配分を決める。そういった明確な「解き方の工程」を用意することが、齋藤さん自身の合格のために必要だと思ったのだ。そのようなやり方で教えている資格学校を探して見つけることができ、通信での受講を始めた。
翌年は2次試験の受験資格はあったものの、あえて受験をしないことに決めた。「そのころは会社に行きながら朝5時に起きて勉強していました。そんな生活を3年も4年もやっていたので、これ以上体がもたないぞと思い、2次試験はお休みをして、1次の3科目だけ受験しました。」その分、時間的な余裕が生まれ、じっくりと2次試験対策を行うことができた。
そして迎えた5度目の正直?
こうして「正しい解き方」を身に付けた齋藤さんだったが、その年の試験を気持ちよく終えることはできなかった。「これまでの2次試験後と全く違いました。受験生の正答率が高いであろうできなければならない問題、逆に正答率が低い、できなくてもいいような問題というのが、はっきりわかりました。そのうち、できなかったらまずい問題をいくつか間違ったことに気づき、これは落ちた、と思いました。」
すっかり落ち込んだ齋藤さんは、資格学校に再現答案を送るとともに、勉強を継続するためにすぐに翌年の対策講座への申し込みを済ませてしまった。合格発表を見ることもしなかった。
しかし、後日届いた1本のメールに目を丸くした。「発表の翌日に再現答案を送った受験校から、『おめでとうございます』というメールが来たんです。それで合格したと知りました。『ええ!?』と、とにかくびっくりしましたね。」
最終的には、正しいと思う解き方、工程に沿って、落ち着いて試験問題に取り組んだことが功を奏したのだろう。自身ではできなかったと思いこんでいたが、総合的には合格点に達していた。
「できなかった部分に気付いた時は落ち込んだものの、それは妙な手ごたえとして自分の中に残りました。その前に不合格になった時にはそれすら感じなくて、なぜ点数がとれないのかがわかりませんでしたから。」
結果として、得意な事例Ⅲは74点、自信のなかった事例Ⅳについてはあえて解かずに飛ばした設問があったが、そのおかげで生まれた時間により計算ミスを発見、結果、6割には満たなかったものの、54点にとどめることができた。取り組む問題の優先順位をつけるという「正しい解き方」が齋藤さんに合格をもたらしたのだ。
意地と悔しさが叶えた合格
この間、齋藤さんの合格へのモチベーションを支えてきたものは何だったのだろうか。
「もう意地ですね。これまで自分が受けた資格試験は正解・不正解がはっきりわかる、いわゆる大学受験と同じようなものでした。でも診断士2次試験は違いますね。だからこそ、受からないのが悔しいという気持ちがありました。」
「でも、今になって思うと、もっと勉強しないといけないですね。中小企業政策はもう1回勉強し直さなきゃ。実務を始めるとどんな補助金が使えるかという質問に答えられないといけませんからね。」
合格後も、齋藤さんの本当の「勉強」はまだまだ続く。

前田 久美子 取材の匠メンバー、中小企業診断士
2021年中小企業診断士に登録。エンタメ系IT企業にて、経理、内部監査、アプリ事業のマーケティング職を経て、経営企画部門にてグループ会社管理、全社朝会の企画運営、基幹システム導入のプロジェクトマネジメント、管理会計などに従事する幅広い経験を持つ。しくみづくりから運用、数値分析、コミュニケーションまでOKな全方位バランス型人間。ビールが好きで、いつかブルワリーのコンサルティングをしたいと思っている。