【第1回 順風からの転機、そして挑戦へ】

金融機関に25年以上勤め、2022年に中小企業診断士として登録した新さん。第1回では、エリートコースを歩んでいた新さんのキャリアの転機となった出来事や、中小企業診断士を目指すことになったきっかけについてうかがった。
まさかの部署解散
新卒で入社した会社で、一貫してキャリアを積み重ねてきた新さん。オペレーション部門からスタートし、コールセンターの責任者や業務プロセスの改善など、数々のプロジェクトをリードしてきた。
「私、ワーカホリックなところがありまして。特に若い頃は休みも取らず、深夜残業や元旦出勤なども当たり前でした」と当時を振り返る。
持ち前の熱意と高い実行力を武器に、同期の中でもいち早く管理職へと昇進。重要なプロジェクトを任され、まさにエリート街道を突き進んでいた。
しかし、順風満帆に思えた日々に、突然の転機が訪れる。役員の退任をきっかけに、社内の風向きが一変。なんと、新さんが部長を務めていた部署が、突然解体されることになったのだ。
これまでの活躍とは裏腹に、社内での存在感は急速に薄れ、居場所を失いかねない状況に追い込まれていく。
「なんとかしないと…」そう強く感じた新さんは、現状を打開すべく、起死回生のプロジェクト立ち上げに動き出した。
ところがその矢先、思いもよらぬ知らせが届く。一番信頼していた部下が、自ら手をあげて別の部署へ異動するというのだ。巻き返しを図ろうとしていたタイミングでのこの出来事は、新さんにとって大きな痛手となった。
何気ない一言が示した道しるべ
状況に頭を悩ませていた新さん。そんな彼に、一筋の光を灯す出来事があった。それは、去っていった部下との何気ない会話だった。
彼女はコンサルティング業界出身の優秀な女性。「どうしたらあなたみたいに優秀になれるのか」と尋ねた新さんに、彼女はこう答えたのだ。
「中小企業診断士という資格があって、それを学べば、私が知っているようなことは大体学べますよ」
当時、人繰りに頭を悩ませていた新さんは、この言葉にハッとさせられた。「優秀な人がいなくなるのなら、自分がその人と同じような知識を身につければいいのではないか」と閃いたのだ。
振り返ってみると、自身が中心となって進めていたプロジェクトは、業務改善や外部委託の活用、人事労務、IT、契約交渉など、中小企業診断士の知識がまさに求められる領域だった。
中小企業診断士のカリキュラムを初めて見たとき、「これまでの自分の業務知見を整理し、不足している知識を体系的に学べる資格だ」と直感した。
初めての挑戦とその結末
資格取得を決意した新さんは、すぐに行動に移した。40代前半というキャリアの転換期を迎えていたことも、彼の決断を後押しした。
「無駄な時間は使いたくない」そう考えた新さんは、費用を惜しまず、大手資格学校の充実したプランに申し込んだ。さらに、複数の資格学校の講座を併用し、まさに「短期集中」で合格を目指す戦略を取った。
迎えた初めての1次試験では、500点を超える高得点を獲得。「これならいけるだろう」と手ごたえを感じながら、2次試験に挑んだ。
「完全に油断モードでした。2次試験は、国語の問題の発展系みたいなものでしょ、くらいに思っていました」
しかし、結果はまさかの不合格。合格点までわずか2点足りなかった。この現実に、新さんは大きな衝撃を受けた。
試験終了の3分前、最後の事例問題で新たなアイデアが浮かんだものの、時間切れを恐れて書き直すことを断念した。その判断が悔やまれてならなかった。
それでも、「自分は合格できる水準にある」、そう確信した新さんの中で、合格への執念はさらに強くなっていった。

W.T 取材の匠メンバー、中小企業診断士
大学院修士課程を修了後、コンサルティングやITソリューションを手がける企業に入社。自社パッケージソフトの開発を経て、会計システムの導入支援や人事給与ソリューションの営業を担当。その後は、コンサルティングおよびITソリューション全般の企画営業に従事。
