【第2回 中小企業診断士合格への道のり】
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大手IT企業のマネージャーであり、3児の母でもある前田さんに、中小企業診断士資格を取得するまでの経緯と今後への意欲をうかがった。第2回では、多忙ななか合格をつかみとるのに役立ったコツと、合格を知ったときの喜びを聞いた。
自分に合った勉強法がカギ
「集中できる環境をつくることが大変でした。最後にはイヤホンで雨音データを延々と聞きながら、なんとか集中して勉強することができました」前田さんは、試験勉強をしていたときの苦労をそう振り返る。
幼い子どもがいる環境で、集中して勉強を続けることは簡単ではない。時には夫に子どもたちを外に連れ出して遊ばせてもらうこともあったが、それも限界がある。そこで前田さんがまず考えたのは、試験に受かるための自分に合った勉強法である。
特に意識したのは、勉強ができるタイミングに自分のやる気を合わせる工夫だ。ふと時間が空いた時に、自分のやる気が出るのを待っていたら、それだけで時間が無くなってしまう。そこで、いま何をやろうと考えなくてもよいように、あらかじめ時間が空いたらやることを決めておくことで、素早く切り替えられるようになったという。
また、自分の中で勉強する気持ちが高まったときに、一気にやり切ることも意識していた。
「あるとき電車の中で過去問をやっていて、突然やる気スイッチが入ったんです。ここでやめたくないと思い、そのまま駅のベンチで2時間以上勉強したこともありました」
様々な制約があるなか、自分に合った勉強法をみつけられたことが、合格できた大きな要因だという。
得意を活かし苦手は割り切る
前田さんは、1次試験は2回目で合格した。1年目は通信教育を受講していたが、2年目はしっかりと講義を受けたいと考え、資格学校に通いながら勉強した。
前田さんが得意とした科目は、企業経営理論と経営情報システムだ。IT企業の経営企画部に勤める自身の業務経験が役立ったことに加え、その2科目は関心が高い内容でもあり、楽しみながら勉強をすることができた。
逆に、苦手だったのは経営法務だ。中でも法務が苦手だった。しかし、苦手科目については過度に意識することなく、合格点である6割を取れればよしと割り切る。資格学校の講師が、ここだけは覚えるようにと言ったものを中心に、最低限必要なものを覚えることにした。苦手科目を無理に克服せず、他の科目でカバーすることで、1次試験を何とか乗り切ることができた。
一方、2次試験では、受験校のカリキュラムに沿った100文字訓練のトレーニングに加え、過去問に徹底して取り組む。時間は限られていたが、10年分の過去問をひたすら解いた。
通勤電車の中で必ず受験用の動画を視聴するなど、常に時間を無駄にしないことを意識して取り組んだ結果、2次試験は見事1回目で合格することができた。
合格しても浮かれてはいけない
2年目で合格した前田さんだが、2次試験の手ごたえは全くなかったため、合格は拍子抜けだったという。
「そういえば今日は合格発表日だなと思い、まあ無いだろうと思いながら合格者番号リストを見ました。すると自分の番号があって、まさかと思いました。短期間に自分なりにできる限りのことはしたつもりではありましたが、本当に手ごたえは無かったので、意外でした」そう振り返る。
合格の喜びと実感は、家族や会社の同僚から祝福の言葉をもらったことで、徐々に湧いてきた。特に、同じ中小企業診断士資格を持つ同僚が喜んでくれたのがうれしく、自分の中でもじわじわと喜びが増していった。
しかし、前田さんはあくまで謙虚である。頑張った自分へのご褒美はまだないという。合格して終わりではない資格であるため、ここで浮かれてはいけないという気持ちからだ。

森下 剛 取材の匠メンバー、中小企業診断士
京都府生まれ。大学院修士課程修了後、製薬会社において医薬品の研究開発業務に従事。途中、がん患者の支援を目的とした新規事業開発に取り組む。2021年経営学修士(MBA)。2023年中小企業診断士登録。東京都中小企業診断士協会中央支部に所属。
