【第2回 独学の試行錯誤――4度の1次試験がもたらしたもの】
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40代で中小企業診断士に挑戦し、5回目の受験で合格。IT業界に身を置き、資格を通じて人脈と可能性を広げている西晃さん。第2回は受験生時代のリアルに迫ってみた。
学習スタイルを模索して
中小企業診断士の試験は、1次試験・2次試験ともに難関として知られている。とりわけ1次試験は7科目と範囲が広く、合格には相応の準備と継続的な努力が求められる。西さんが中小企業診断士試験に向けて本格的に動き出したのは、40代に入ってからのことだった。独学を選択した西さんは市販のテキストを使い、まずは自分なりの学び方を模索する日々が始まった。
最初の1次試験は2019年度。通勤時間を活用して勉強してはいたものの、「正直、最初は本気で取り組んでいなかった」と苦笑まじりに語る。結果は運営管理のみ合格し、残りの科目はすべて不合格だった。
2020年度に入ると、コロナ禍によってリモートワークが導入されたことで、机で学習する習慣が徐々に定着し、この年は7科目中5科目をクリア。翌年度には残りの財務会計と中小企業経営・中小企業政策を受験し、前者は合格したものの、後者は落としてしまった。
中小企業経営・中小企業政策は、特に手を焼いた科目だった。制度や施策の暗記が中心で、資料の更新も頻繁にあるため、学習のたびに知識を整理し直さなければならなかった。「繰り返し読んでも、理解や記憶として定着しにくかったですね」と西さんは苦笑する。苦手意識と向き合いながらも、それを避けて通れないという現実の狭間で、試行錯誤を重ねた。
当時は、まだ試験への意欲が完全に高まっていたわけではなかったという。「中小企業診断士という資格にそこまで強い執着はなく、途中で諦めてもいいかな、と思っていた時期もありました」そんな気持ちに変化をもたらしたのが、2020年度に5科目を一気に合格できた手応えだった。「あと2科目だし、ここまできたらもったいない。もうちょっとがんばってみよう」と思い直し、再び学習を続けることにした。
合格の手応え、そして燃え尽き
4度目の挑戦となった2022年度、西さんはついに1次試験を突破する。
「勉強して本当によかったと思います。これまで関心のなかった分野の知識もついて、視野が広がりました」と語る西さん。YouTubeなどの動画コンテンツを積極的に取り入れ、学習方法を柔軟に変化させるなど、試行錯誤の積み重ねがようやく実を結んだのだった。
しかし、その直後に訪れたのは達成感と引換えの空白だった。1次試験に合格したことで安心し、長く張り詰めていた緊張が一気にほどけた。結果として、その年の2次試験の勉強には手をつけられず、全く準備しないまま本番に臨んでしまった。「正直、燃え尽きてしまって勉強できなかった。あわよくば…という淡い期待もあった」と振り返る。
焦らず、自分のペースで
迎えた2次試験は不合格。西さんの胸に去来したのは「次回もまた落ちて、再び1次試験のすべての科目を受け直すのだけは絶対に嫌だ」という強い思いだった。2次試験の申込をした9月からは短期集中型の性格を活かし、毎日最低でも1時間以上は机に向かい、過去問を中心に徹底して取り組んだ。週末は1日中机に向かい、2~3問を解くこともあった。
「自分の場合は、同じ問題を繰り返すよりも、たくさんの過去問を解く方が合っていました。どうすれば点数がつくかを徹底的に考えるようにしたんです」市販の過去問集を活用し、模範解答と自身の解答を見比べながら少しずつ修正を重ね、その過程で少しずつ解答のコツを掴んでいった。
そして迎えた2023年度、2回目の挑戦でついに2次試験にも合格。前年は何も準備をせずに194点であったが、今回は261点と、67点も点数を伸ばすことができた。
独学、試行錯誤、モチベーションの浮き沈み——西さんが歩んだ道のりは決して平たんではなかった。それでも、マイペースで自由を手にするための意志を貫いた姿勢は、多くの受験生にとって共感と励ましを与えるはずだ。

内山 心結 取材の匠メンバー、中小企業診断士
海外大学を卒業後、日本に帰国し宝飾品業界にて営業職に従事。店長としてマネジメント、店舗管理、社員向け研修を担当。その後IT業界へ転職し、コンサルタントおよびカスタマーサクセスに従事。業務要件整理・課題抽出・データ分析を基にしたDX支援に携わる。現在は「AsIAmコンサルティング」代表として、中小企業向け補助金申請業務・事業計画書作成・女性活躍推進研修を実施。東京都中小企業診断士協会中央支部所属。
