【第2回 生成AIと共に挑む2次試験 プログラミングスキルを活かした独自戦略】
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都内のマーケティング会社でシニアコンサルタントとして活躍する栗野将徳さん。1次試験はわずか4か月の短期集中で合格したものの、栗野さんの中小企業診断士への道のりは順風満帆ではなかった。栗野さんが挫折を乗り越え、自らのプログラミングスキルと生成AIを駆使した独自の学習法で合格を勝ち取るまでの道のりとは。
2次試験の壁 勉強法が見えない闇
421点というギリギリで1次試験合格となった栗野さんは、8月中は勉強に手がつかない状態だった。「もしかしたら不合格になっちゃうかもしれないという不安で、結局手がつかなくて」と当時の心境を語る。9月に入って1次試験の正式な合格発表があり、改めて2次試験の勉強を開始した栗野さんだったが、そこには新たな困難が待っていた。
「とりあえず有名な参考書を買って勉強を始めたものの、試験問題をどうやって解くのかもわからず、短い制限時間の中で、本当に合格レベルの回答を作れるのか不安になりました」
2次試験の勉強法は1次試験とは根本的に異なる。正解が明確でないため、どのような解答が求められているのか、どのように勉強すればよいのかがわからない。栗野さんは手探りの状態で2次試験に臨むことになった。
1点差の不合格—試練の始まり
2次試験当日、栗野さんは体調を崩してしまった。「無理がたたって、よりによって当日に体調を崩して、フラフラの状態になりながらエナジードリンクを飲んで」という状況で受験した。
さらに追い打ちをかけたのが、事例Ⅳ(財務・会計)での計算ミスだった。解き方は正しかったにもかかわらず、数字の写し間違いにより大問を丸々失点。結果は239点で、合格ライン240点を1点下回る不合格だった。
「それを知った時は、本当に嗚咽を漏らしました」
1点差という僅差での不合格は、栗野さんにとって大きな衝撃だった。一時は完全に勉強から離れ、翌年9月まで中小企業診断士の勉強には手をつけられなかった。しかし、栗野さんは最終的に立ち直り、2年目の挑戦を決意する。その背景には、1年目の経験から得た確信があった。
「本当にあとちょっとで落ちてしまったというところで、勉強の方向性としては間違っていなかったと考えました」
1年目の失敗は、実力不足ではなく、勉強法の未確立と体調管理の失敗、そして些細なミスによるものだった。これらの課題を克服すれば合格は十分可能だと判断し、2年目への挑戦を決意した。
IT知識と生成AIを駆使した独自戦略
2年目の勉強法に悩んだ末に栗野さんが行き着いた答えは、自らのITスキルと生成AIを活用する方法だった。
「大学時代に趣味でプログラミングをやっていた経験があって。それを活かしてSNS上の再現答案をスクレイピングで集め、それをAIに分析させるという方法を思いついたんです」
栗野さんはClaudeというAIツールを使い、自分が書いた文章の添削をしてもらったり、集めた再現答案をAIに解析させて独自の採点基準を作ったりした。
「2年目は日本語力を鍛えることに特に注力しました。どんなによい内容でも採点者に伝わらなければ意味がない。AIの力を借りて、いかに明確に自分の考えを伝えるかを徹底的に練習したんです」
同じ年度の問題を何度も解き直し、AIの添削を受ける。このプロセスを繰り返すことで、採点者の視点を意識した答案作成技術を磨いていった。
2回目の2次試験で合格
2年目の本番では、1年目の教訓を生かして万全の体調で挑んだ。
「前年は丸々落とした事例Ⅳの第2問が解けたんです。もしかしたら合格できるかもと思いました」
そして、待望の2次筆記試験の合格通知が届いた。「素直な言葉ですけど、これまで自分のプライベートの時間を使って、家族にも負担をかけて勉強してきたので、本当に嬉しかったです」と栗野さんは当時の気持ちを語った。

小山 剛史 取材の匠メンバー、中小企業診断士
1996年生まれ、愛知県名古屋市出身。2020年、地元名古屋市に本社を置くWeb系ベンチャー企業に入社。Webコンサルタントとして法人顧客のホームページ制作やWebサイト改善業務に従事するとともに、Web広告運用やSNSマーケティング支援まで幅広く担当。デジタルマーケティング領域のノウハウを蓄積しながら、中小企業のWeb活用による販路拡大や集客力強化に貢献。2025年中小企業診断士登録。愛知県中小企業診断士協会所属。
