【第2回 中小企業診断士への道 多年度の苦闘 ~1次試験・2次試験の壁~】
過去の記事:第1回

金融機関の法人営業担当である黒田智子さんは、日々、中小企業の経営者と向き合っている。中小企業診断士資格の取得に向け、1次試験、2次試験と立ちはだかる壁に、持ち前の明るさとあきらめない気持ちで取り組み、無事合格をつかんだ。第2回は、予期せぬアクシデントに遭遇した1次試験を乗り越え、苦闘の日々となる挑戦について詳しくうかがう。
1次試験初挑戦、まさかのアクシデント
黒田さんは診断士試験への挑戦にあたり、時間の制約から通学は難しいことや、独学は非効率と考えた結果、資格学校の通信講座を選択した。最初の1次試験で予期せぬアクシデントに見舞われる。当日、寝坊してしまい、目が覚めた時には試験開始時刻を過ぎていたのだ。さらに、会場へ向かう途中で電車遅延にも遭遇し、結果として2科目受験できなかったという。起きた瞬間の絶望感は今でも忘れられないと語る。試験会場に向かうことすらあきらめようかと思ったというが、彼女は考えを巡らせる。「科目受験があるから、来年やるなら少しでも科目が少ない方がいい」、打ちひしがれた彼女を奮い立たせた。この時行判断が、その後の受験生活へとつながっていくのである。
多年度受験へ、1次試験の科目戦略
1次試験は結果として4回挑戦した。7科目という広範囲の試験に対し、財務・会計や経済学・経済政策といった計算系の科目は比較的得意で、すんなりと学習を進められた。一方で、中小企業経営・中小企業政策といった暗記系の科目はどうしても覚えられず、苦手意識があった。これらの科目は捨て科目とし、他の科目でしっかりと点数を取ることで、足切りの40点を超えることを目指すことにした。
受験中断の危機、そして再開へ
中小企業診断士試験は、1次試験、2次試験と段階があるが、1次試験合格後、2次試験は2回まで受験することができるという特徴がある。多年度受験が続く中で、特に三度目の挑戦の前には、やめることを考えた時期があったという。2次試験まで駒を進めたものの、不合格が続き、気持ちが下がってしまい疲れてしまった。しかし、「せっかく2次試験まで進んだのに、ここでやめてしまうのはもったいない」という気持ちが強く湧き上がってきた。試験申し込みの期限はせまり、前日の夜まで悩んでいたという。受験料の振り込み用紙は持ち歩いていた。一日考え抜き、締切り時間である午後5時ぎりぎりに振り込んだ。まさに滑り込みで再挑戦を決意したのである。この土壇場での踏みとどまりこそが、最後までやり遂げる原動力となった。
手ごたえのない多年度の戦い
診断士試験の中でも、2次試験は手ごたえがつかみにくいと感じる受験生は多い。何が正解なのか明確に示されない点が、難しさを際立たせている。黒田さんも例外ではなかった。最初、「何が何だかわからなかった」という。得意とする財務・会計の知識を生かせる事例IV以外は、事例の違いもよくわからず、手探りの状態であった。 最初の試験は手ごたえがつかめなかったにもかかわらず、結果は合格点に数点届かない水準であった。これなら来年は合格できるだろうと考え、翌年、YouTubeやSNSなどで情報収集を行い、対策を練って臨んだ。「いけるだろう」と思っていたが、またしても同じような結果に終わった。
不合格が続く中で、彼女は多年度受験生の体験談から、「腑に落ちる」瞬間がくれば安定的に60点以上取れるようになるというエピソードが目に留まった。問題を解き続けることで、その瞬間が訪れると信じ、演習を重ねた。しかし、三度目の2次試験の直前になっても、その瞬間は訪れなかったという。自信を持てないまま試験日の当日を迎えた。この手ごたえのなさこそが、彼女の多年度にわたる苦闘を物語る。

清水 宏 取材の匠メンバー、中小企業診断士
埼玉県在住。大学卒業後、通信事業者においてプロジェクトマネージャー・システムアーキテクトとして、システム開発の業務に従事。2022年技術経営修士(MOT)。2024年中小企業診断士登録。診断士資格取得を機に診断士受験生向け支援活動に取り組む。趣味は、テニス・ランニング・音楽フェス/ライブ参加。
