【第1回 論理的思考で診断士試験に挑む】

大学の研究室から企業の経営企画へ。理系の素養を強みとして、数字と論理を武器にキャリアを築いてきた岸田誠史さん。第1回では、岸田さんが中小企業診断士への挑戦を決意した背景をうかがった。
数字に強く合理性を重視
「家賃が高くても、通勤による体力的・時間的ロスを最小限に抑えられるという点で、費用対効果は高い」
このような明快な判断のもと、現在、岸田さんは勤務先から徒歩10分圏内という場所に住まいを構えている。こうした合理的な考え方は一貫しており、将来のライフステージの変化についても冷静に見据えている。
「今の自分にとっては、都内での暮らしが最適解。ただ、将来的には郊外など、住環境の条件が変わる可能性もある」と静かに語る。
理系の大学院で生物学を専攻していた岸田さんは、製造業に就職後の配属面談で、事業管理部門に抜擢された。数字への強さや論理的思考力が評価されたという。
配属後は7年間にわたり、エレクトロニクス関連の事業管理を担当。その後、経営企画部門に異動し、現在は管理会計に基づく業績管理や、四半期決算に伴うIR対応などを担っている。企業の業績と向き合い続けて10年、数字を通じて経営の中枢にかかわるキャリアを積み重ねてきた。
積み重ねの先に挑む診断士試験
岸田さんには、学生時代に研究室で取り組んだテーマが、学会発表にまでつながった経験がある。当初は自分には無縁だと思っていた学会の場だったが、先人が残していった研究を丁寧にひもとき、データを地道に積み上げていったことで、自身の研究内容が形を成して発表にこぎつけた。
「運がよかった部分もある」と謙遜しつつも、「やってきたことが無駄じゃなかったと感じられた」と当時を振り返る。この経験を通じて、ものごとを体系的に学び、積み重ねていくことの大切さを深く心に刻んだ。
社会人となってからも、その姿勢は一貫している。スキルアップにも戦略的に取り組み、企業の業績管理には欠かせない会計とITの知識を強化するため、日商簿記検定試験2級や基本情報技術者試験など、業務に直結する資格を計画的に取得してきた。
こうして得た知識やスキルを体系的に整理していく中で、次第に意識するようになったのが、中小企業診断士という資格の存在だった。製造業の経営全体を見渡し、専門分野にとどまらず幅広く貢献できる視点を求めた結果、たどり着いた答えだった。
「専門性を際立たせるだけではなく、経営全体を広く見渡す力をつけたい」
そんな思いを胸に、診断士試験への挑戦を決意した。
趣味のゲームよりも没頭
診断士試験の勉強を始めてから、岸田さんの日々の過ごし方は、少しずつではあるが着実に変わっていった。
かつては趣味として熱中していたゲームも、自然とプレイ時間が減っていった。完全にやめたわけではなかったが、勉強に疲れたときの息抜きとして短時間だけ遊ぶ程度にとどまり、以前のように何時間も没頭することはなくなった。
一方で、診断士試験の勉強そのものが、岸田さんにとっては一種のゲームのようでもあった。膨大な知識をインプットし、過去問の演習でスコアを伸ばしていく過程は、まさにゲームのクエストを一つずつ攻略していく感覚に近かったという。分野ごとの弱点を分析し、得意分野を伸ばしていく過程も、まるでゲームのキャラクターの能力を育てていくような面白さがあった。達成すべきミッションは明確で、進捗が見える分だけモチベーションも維持しやすかった。
2年間での合格という明確なゴールを掲げた岸田さんは、戦略的に学習計画を立てて、自身の現在地を冷静に把握した。次に攻略すべきステージと必要なスキルを見極めながら、一歩一歩、着実にレベルアップしていった。
だが、努力を重ねた先に待っていたのは、想像以上に厳しい現実であった。

西晃 取材の匠メンバー、中小企業診断士
東京都在住。早稲田大学第一文学部中国文学専修を卒業。独立系SIer(現・総合商社系SIer)で17年間勤務後、中国資本IT企業に転職。20年以上にわたりERP関連業務に携わる。2024年11月に中小企業診断士として登録し、東京都中小企業診断士協会城西支部に所属。保有資格は全国通訳案内士(中国語)、ITコーディネータ、情報処理技術者(PM、DB)など。2014年に中国全省制覇、2023年に日本全県制覇を達成した旅好き。
