【第３回 「２次試験は実務訓練だと思ってください」】
過去の記事：第１回、第２回
最終回にあたる第３回は、苦戦した２次試験に合格するまでの道をうかがいました。
２次試験対策の方針転換
――３年目以降の２次試験対策はいかがでしたか。
３年目は事例Ⅲで失敗しました。４年目はAASの一日講座を１、２回受けて、そこで初めてアンゾフの成長マトリクスを教えてもらい、AASの通信のテキストをもらいました。AASは十数年分の過去問解説が付いてきて、私は２次試験とは基本過去問だと思っておりましたので、十数年分解きました。
――二次試験は数年ごとに傾向が変わるかと思いますが、昔の過去問は役に立ちましたか。
古い過去問でも、受験校などの創作問題よりは本試験に近いと思います。色々な講師がそれぞれ異なる解答を言っている状況ですので、結局最後に頼りになるのは「ふぞろいな合格答案」（同友館）でした。３年目に船場勉強会でこの本の存在を教えてもらいました。
「ふぞろいな合格答案」の活用法
――ふぞろいな合格答案の具体的な活用法について教えてください。
「ふぞろいな合格答案」（以下、ふぞろい）の解答を読んで書き写しました。「私の解答がふぞろいの感覚とずれていたらおかしいのかな、大体こんな感じで書けばいいのかな」という感覚を身につけました。２次試験は、ふぞろいで高得点になるような、用語を散らす方法をとりました。この答案だったら、いくつぐらいの要素を書いておけばよいのかなというイメージです。事例Ⅱは、問題文の中に散りばめられているヒントを集めていく感じで試験を解いたところ、３年目以降Ａ評価でした。事例Ⅳも同様にA評価でした。
――苦手な事例はどのように克服しましたか。
事例Ⅰと、事例Ⅲが苦手でした。事例Ⅰは与件文があっさりしていることが多いので、採点者が書かせたい内容を受験生が想像してシンプルな解答を書く必要があると思います。事例Ⅲは、与件文に惑わされずに、データベースなど毎年繰り返し出てくる論点を指摘するのがよいと思います。実は、その時受けた大阪教育大の会場が大変な状況でした。外が大雨だったことと、台風警報が出ていたのですが、警報アプリが携帯の電源を切っていても鳴るため、ピーピー鳴って会場は大混乱でした。
――４年目と５年目の受験はどのような手応えを感じましたか。
４年目と５年目の手応えはほとんど同じでした。合格は半々かなと思っていたので、５年目は「ああ受かったのだな」と感じました。
合格後の中小企業診断士活動
――合格後今までと変わったことがありますか。
ちょうど合格した年のあたりで、会社がエンジニア向けに副業を解禁していこうという方針になり、かつテレワークを進めていたので副業がすごくやりやすくなりました。ありがたいタイミングで受かったなと思っています。実は、今勉強会でお世話になった経士会のお手伝いを時々したりしています。中小企業診断士は意外と仕事があります。
――合格後に中小企業診断士試験に対して、何か気づいたことはありますか。
２次試験でやったことは意外と無駄にはならないことですね。基本的な考え方は実は実務に役に立つと思っています。当時２次試験を受けているときは「なんで社長にしか話を聞かないのだろう」と、最初は非現実的な想定だなと思っていたのですが、実務をやってみると意外と同じ状況になることがわかりました(笑)。２次試験は実は現実的な職業訓練でもあると思います。２次試験で苦戦されている受験生の方に対しては、２次試験は試験と思うのではなく、これは実務訓練だと思ってやっていただければすごくよいかと思います。
――最後に一言、今受験している方に何か一言あればお願いいたします。
２次試験は理不尽なことがあると思います。「なんで落ちたのかわからない」と、嫌になる受験生も多いかと思います。でも、２次試験は実務的には凄く役に立つということを改めてお伝えしたいです。また、受験に役立つ情報は早めに探したほうがよいです。私はそれで２年間無駄にしていますから。
牛屋 広和 取材の匠メンバー、中小企業診断士
1986年生まれ、千葉県出身。大学卒業後建設会社に就職し、民間建築の営業を担当。現在は都内と周辺県を主な営業エリアとしている。週末は0歳の娘の育児に奮闘、勉強している父の背中を見せることで、良い影響を与えようと画策中。2021年中小企業診断士登録。中小企業診断士としてはセミナー開催、執筆・補助金申請支援、YouTube動画作成に従事。
