【河野今朝成さんインタビュー】長野県野沢温泉村で旅館を経営しながら地域貢献を考える。感謝、継続、挑戦を胸に

【河野今朝成さんインタビュー】長野県野沢温泉村で旅館を経営しながら地域貢献を考える。感謝、継続、挑戦を胸に

【第2回 家族から自分へ、自分から家族へ】
過去の記事:第1回

【河野今朝成さんインタビュー】

歴史ある温泉地、長野県野沢温泉村で「河一屋旅館」の経営と地域支援事業という二足のわらじを履く河野今朝成さん。そんな河野さんに、第2回は自身の原体験と受験中の苦悩についてうかがいました。

次期経営者候補としての苦悩

――そもそもどのような経緯で「河一屋旅館」を経営しているのですか

地域柄、雪が多くスキーが盛んで、私はスキーの選手でした。競技は、アルペン競技です。周囲には、オリンピック選手もたくさんいましたが、私自身は将来スキー関係の道につくことは考えていませんでした。あと、なにより寒いのが苦手でしたので(笑)。ですが、結局大学までスキーをやっていました。大学卒業後は東京の商社に約3年間勤務して、28歳の時に父親の手伝いのために野沢に戻ってきました。

――2代目ということですね

そうです。長男というのは不思議なもので、親には「好きなことをしてもいいよ」と言われていましたが、周囲からの目線もあり「いずれ戻るだろう」と薄々感じていました。

――故郷に戻ってみてどうでしたか

過去、この地域は「世界で一番儲かっていた村だ」と言われたくらい賑やかでした。私の父もそうですが、この地域の社長はほとんどが成功体験を持つ人が多かったと思います。ですから、良くも悪くも人の話も全く聞かない社長も多く、うちの父親もそうだったと思います。当時は、スキー客を中心とした集客で、客室も悪くクレームが絶えないうえ、社員の喧嘩や退職、薄利多売をベース、つまり休みなしという経営で私も猛烈に働いていました。当時は、多忙で精神状態がおかしくなるくらい辛い時期でしたね。

このままじゃいけないという思い

――そんな過去の原体験と診断士取得には関係がありそうですね

実は、コロナを契機に中小企業診断士の勉強をスタートしたのですが、その先に地域課題の解決の思いもありました。近年は、開発と言うべきか浸食と言うべきか、野沢に外国資本が入ってきています。また、自社だけでなく地域全体が冬の集客に依存していたことも問題に感じていました。野沢への愛着精神と自社だけではなく地域全体の経営力を高めることが、大切だと感じて中小企業診断士の取得を目指したとも言えます。

――とすると、勉強をスタートする前から地域支援事業の活動をしていたのですか

はい。実は、野沢に帰ってきたばかりの頃の精神的に辛かった時期も踏まえ、私が代表となった際に自社を変えていきたいという思いから、10年ほど前から人財育成を始めました。社内の人財育成ですが、地域の経営者なども参加できるようなしくみにして毎月開催しています。そこで、結果的に地域支援事業にもつながることもありました。

家族の一言、自身のモットー

――志高く勉強をスタートしたわけですが受験生時代の苦労を教えてください

やはり、2回目の2次試験が不合格だったという現実を突きつけられた時が一番辛かったですね。2年目は、2次試験だけを1年近く勉強していましたし、1次試験をまた最初から勉強しないといけないと思うと苦痛を感じました。あと、コロナ対応で旅館経営は忙しかったですし、体調も悪くした時期もあり、決して順風満帆ではなかったですね。

――そんなどん底をどのように乗り越え、3年目を迎えたのですか

2年目は通信で学び始めましたが、勉強仲間は周囲にいなかったこともあってコミュニケーションの機会はゼロでした。2年目が不合格だった時はまさに、「今後どうしよう」と霧の中を手探りするような状態でした。でも、不合格になったことを家族に報告したところ「どうせまたやるんでしょ」と一言返事があり、「そうだ、諦めたらいけないな」と思いました。家族の一言が大きかったと思います。

――諦めない性格はスキーに打ち込んでいたことも影響しているのですか

いえ、そんなことは無いと思います(笑)。旅館を経営していて、私がいくつか大切にしていることがあります。その中の一つが「言ったことをやる」です。とてもシンプルですが、それだと思います。2年目の2次試験不合格の後に、私から家族に「合格するから」と宣言したのを覚えています。私はこれまで、人生の中で高みを目指したことがなかったので、今振り返ると不合格という経験は良い経験だったと思えるのです。




梶川 拓哉 取材の匠メンバー、中小企業診断士
1992年、富山県高岡市生まれ。大学卒業後から新卒で地方銀行勤務。北海道、富山県、大阪府と転勤を重ねる。その中で営業、融資事務、M&A業務を経験し、現在は事業再構築補助金やものづくり補助金の申請支援に携わる。中小企業診断士の他に、事業承継士も保有。将来的には、中小企業診断士という枠にとらわれず、地域貢献事業やスポーツ支援事業、自然貢献事業など様々なことに挑戦していきたい。

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