【第3回 チームプレーでつかみ取った合格】
過去の記事:第1回、第2回

2020年8月から受験をスタートし、仕事と子育てを両立しながら1年3ヶ月での短期合格を果たした豊田さんに、中小企業診断士試験を突破するための秘訣を聞いた。第3回では、具体的な受験戦術や受験知識が今の仕事にどう活きているのかを聞く。
夫・勉強仲間とのチームプレー
土日だけでなく、平日も朝早く起きて、電車の中でも勉強する。「覚悟」が決まったとはいえ、並大抵の精神力では受験勉強を乗り切れないようにも思えるが、豊田さんにとって、診断士試験は決して孤独な戦いではなかった。「チームプレー」でモチベーションを維持したのだ。夜は寝かしつけもかねて子供と一緒に寝るようにしていた豊田さん。1次試験の勉強をしているときから、主に早朝に勉強していた。そんな折、たまたまSNSで知り合った受験生とWeb会議を繋いで「相互監視」しながら一緒に勉強することになったという。勉強の邪魔になることからもちろん音声はオフ。お互いにほとんど話したことのない勉強仲間と、合格に向けて支え合った。
特に2次試験の直前には、夫からの合格へのプレッシャーもあり(第1回参照)、早い時には朝(深夜)3時から、「話したことのない」勉強仲間と一緒に勉強を始めていたという。もちろん、こうした受験生活は、夫の助けがあって初めて成立するものだ。「家事や子育ては夫に、受験勉強はSNSの勉強仲間に助けられながら、チームプレーで受験勉強をしていました」
「診断士試験の受験体験」が仕事に役立っている
2次試験を一発で突破し、短期間での合格を果たした豊田さん。合格で得たのは中小企業診断士という「資格」だけではない。目標を設定し、それに向けた戦略を立て、PDCAを回す。「覚悟」を決めて挑んだからこそ、診断士試験の合格は、自身にとっても大きな自信につながったという。
「普段から仕事でPDCAを回すように言っていますが、実際に自分で戦略を立てて勉強して、その積み上げでハードルが高いといわれる診断士試験をクリアできたというのは、大きな自信につながっています。並大抵のことではハードルが高いと感じることはなくなりました」
本社の品質部門の立場で社内の仕組みを考える際など、診断士試験の勉強で得た知識や考え方は、豊田さんの仕事のあらゆる場面で役立つのだそう。特に企業経営理論に含まれる経営戦略や組織論などは、社内文書を作成するときの理論的な裏付けになっており、豊田さんの仕事を助けてくれているという。「社内文書を作成するときでも、どうしてこういう文章にしたのか、という点について背後にある考え方とか理論とかを説明できるようになったんです。これが仕事で本当に役立っているんです」
中小企業診断士としての「活躍」を探っていきたい
診断士試験で培った知識や経験、自信が豊田さんの仕事の役に立っているというが、中小企業診断士としての資格の活かし方はまだ明確ではないようだ。
「試験勉強で得たものは仕事で大いに役立っていますが、『中小企業診断士』という資格は自己啓発として取得するようなものでは無かったですね」豊田さんは笑いながらこう話す。
中小企業診断士としての資格を活かす具体的な「戦略」はまだないが、それは活用する具体的なイメージがついていないからだそう。しばらくは企業内診断士として活動し、中小企業診断士としてどのような活躍ができるのかを探る。 茨城県中小企業診断士協会には入会済み。まずは「中小企業診断士として、どのような活動をしてきたいのか」を語れるようにするのが、最初の目標だ。

安部慶彦 取材の匠メンバー、中小企業診断士
埼玉県出身。2016年に弁護士登録後、都内大手法律事務所にて企業法務に従事。法務アドバイスを重ねる中で、クライアントを真に理解するためには経営知識が必要であると実感し、2023年、中小企業診断士資格を取得。現在、法務・税務・経営の三本柱で中小企業のサポートをしながら、埼玉県よろず支援拠点のコーディネーターも務める。