【第3回 能力アップと人脈づくりで将来の布石に!】
過去の記事:第1回、第2回
製薬メーカーで活躍する杉本剛さんは、独学で8カ月という短期間でストレート合格を勝ち取る。今回は、中小企業診断士を登録後の活動とコンサルティング業務への想いを紹介する。
資格取得後も自分を高め続ける
杉本さんは、2次試験後の口述試験も無事に突破し、実務補習を経て2022年1月に中小企業診断士として登録する。それから2年あまりの期間に、プロコンサルタント養成塾への参加やフレッシュ中小企業診断士が集まる研究会などに参加、さらに補助金申請の支援などにも携わる経験もしている。
活動する中での思いを杉本さんに聞くと「自分のバックグラウンドは中小企業とは関係のない業界。さらに、受験勉強も詰め込みで早く終わったので、逆に自信が不足している。合格後の方が苦労しているし本当にきつい」という。例えば、これまでの中小企業診断士仲間とのチーム実習でも「財務」には縁がなく、もし現時点で診断先から財務諸表をもらって診断を求められたとしても、「一人でこなすのは難しい」実感がある。したがって、さまざまな活動を通じて、自分自身のスキルアップとともに「知り合った優秀な仲間と一緒にどういう仕事ができるのか?」という視点で人脈を築きつつ、対応できる領域を広げる目的を持って活動している。
企業内診断士からコンサルタントへの想い
資格を取得した現在も、企業内診断士として、本業の仕事を続けていく気持ちに変わりはない。勤務する会社は中小企業診断士との関連性が高くない業界であり、社内では中小企業診断士の知名度はほとんどなく、資格取得そのものが報奨対象や人事評価の加点になることもない。会社では身近な上司にしか受験を伝えていなかった。
当面は企業内診断士としての活動を想定している杉本さんにとって、現在の中小企業診断士資格の評価は、“人生をより楽しくしてくれるもの”で、これまでの活動は“サークル活動のようなもの”だという。資金収支面ではかなり支出が先行しているものの、圧倒的に出会う人の数や幅が広がり、自分の世界が拡大することを楽しんでいる状況だ。
それでも、杉本さんの心の中にはコンサルティング業務への想いが着実に芽生えている。「いつかはバックグラウンドを生かしつつ、コンサルティング業務を主軸にしてみたい」との夢がある。自分の強みの認識は明確ではなく、これから目指していくコンサルタント像の輪郭ははっきりしていない。今は来る時に備えて自分の能力を高め、人脈を広げる活動を続けている。
診断士試験はあきらめなければ運をつかめる
最後に、これから試験に挑戦する受験生に向けて、杉本さんから話を聞くと「中小企業診断士の試験は、かなり運が左右する。自分の合格は運が90%ぐらい味方してくれた。もし運悪く結果が出なくても、必ず運が向く年がくる。だからこそ、人によって違いはあっても、あきらめなければ絶対に合格できる」と力強く語ってくれた。
杉本さん自身も、2次試験本番の2週間前に参加した、資格学校主催の直前合宿で模試を受験。総数約30人のうちで総合順位が下位1割、事例Ⅰにおいては最下位の結果となった。あくまで初見問題の試験に慣れることを目的にしていたとはいえ、この時はかなり落ち込んだという。しかし、杉本さんは、受験勉強を始めた時から、月100時間の勉強時間を自分へのノルマとして、それをすべてスマートフォンに記録していた。弱気になる時には、その足跡を見返してモチベーションを取り戻した。こうして、本番の試験では事例Ⅰで6割を得点する。この教訓からも「受験勉強の道のりでは一喜一憂することなく、自分を信じて努力を続けて欲しい」と受験生に向けて熱いエールを贈ってくれた。
小松 弘樹 取材の匠メンバー、中小企業診断士
山形県出身。1994年に全国展開の中小企業向け金融機関に入社。本部で経営企画、人事、広報業務、また営業店では支店長を経験した後に、現在は本部で融資先の経営改善、事業再生支援を担当。豊富な経験を背景に業種や企業規模を問わない中小企業支援が強み。2021年に診断士登録、東京都中小企業診断士協会、埼玉県中小企業診断協会所属。