【第1回 家族との時間を大事にしながら勉強を楽しむ】
製薬メーカーで活躍する杉本剛さんは、MBA取得を断念したことを機に中小企業診断士資格に出会い、短期間で見事にストレート合格を果たす。今回は、企業内で現在担当している業務とこれまでの経歴、さらに中小企業診断士を目指したきっかけを紹介する。
製薬会社の学術職として活躍
杉本剛さんは、製薬会社で活躍する41歳。薬学系の大学から大学院に進んで製薬会社へ就職。学術職としてキャリアを積みながら同業種での転職を果たし、現在は経験の幅を広げつつキャリアアップしている。薬剤師免許も持つ、理系業界の企業内診断士である。
新卒入社から経験した学術職とは、製薬会社で医薬品に関する最新情報を収集、管理し、営業職であるMRに対して、自社の製品研修や競合品の特徴をレクチャーする重要な仕事である。入社当初は、北関東の支店勤務で、20代半ばながらも20名ほどのMRを担当。相手はバリバリのベテラン社員も含まれており、知識や経験は自分より上。初めは「何か新しいことを教えてあげよう」という意識で失敗もあり、大変な難しさを感じたという。しかし、「むしろ、『先輩に教えてもらおう』との姿勢にあらためてからは、人間関係が築けてうまくいった」という。謙虚で実直な人柄で人間関係を築くことは杉本さんの強みの一つと言える。
その後、「新薬の開発、発売準備に携わりたい」という想いから同業に転職。現職の会社では、本社勤務となったが「MRの支援」という仕事は変わっていない。パンフレットの作成や医師との接点を作る業務を担当した後に、現在は、製品のライフサイクルマネージメント、いわゆる薬の導入、成長、衰退の各段階に応じた製品戦略の立案を担う。企画要素の高い仕事であり、日々充実している。
ロジカルシンキングを学んで知的好奇心にスイッチオン
杉本さんは、大阪府の出身だが、そろそろ大阪よりも東京生活の方が長くなった。元々、化学が得意で、父親は薬剤師であったことから、大学進学時には身近な薬学系を志望した。大学院から製薬会社に就職して、理系キャリアを歩んでいる。
これまでに、野球やラグビー、テニスなどのスポーツを部活動で経験する一方、趣味のアクアリウムでは、インテリアと調和した水槽の中に、グッピーなどの熱帯魚を飼育しながら癒しを求める。柔和な表情や穏やかな話しぶりからは、決して偏ることのないバランス思考を感じさせる。
そうした杉本さんは、2018年にロジカルシンキングを身につけるため、グロービス経営大学院に通い始める。単科生として、クリティカルシンキングとマーケティング・経営戦略基礎等を受講し、平日に週二日、半年ほど通学した。ここで、杉本さんは「学ぶことがすごく楽しい」と新たな学びのスイッチが入った。
家族との時間重視でMBAを断念、中小企業診断士へ
「このままMBAを取りたい」と杉本さんの向学意欲は高まった。しかし、MBA取得には、さらに必要単位の取得が必要となり、土日や平日遅くまでの通学が要求される。他方で、杉本さんの妻も正社員の仕事を持つ共働きで、現在は8歳となった娘は当時まだ幼かった。「家族との時間を大事にしたい」とMBA取得の道は断念した。
グロービスへの通学当時は、杉本さんは中小企業診断士資格を全く知らなかった。MBAを断念してから学びに飢えていた2019年1月、会社の自己啓発支援の資料冊子において、中小企業診断士の紹介文に「日本版MBA」「戦略」というフレーズを目にする。すぐに惹きつけられた。通学する必要のない資格試験の学びはとても魅力的に思えた。「これならできる!」と中小企業診断士の受験を決断。ここから合格を目指した奮闘がスタートした。
小松 弘樹 取材の匠メンバー、中小企業診断士
山形県出身。1994年に全国展開の中小企業向け金融機関に入社。本部で経営企画、人事、広報業務、また営業店では支店長を経験した後に、現在は本部で融資先の経営改善、事業再生支援を担当。豊富な経験を背景に業種や企業規模を問わない中小企業支援が強み。2021年に診断士登録、東京都中小企業診断士協会、埼玉県中小企業診断協会所属。