【松葉修さんインタビュー】父のような個人事業主を支えたい中小企業診断士

【松葉修さんインタビュー】父のような個人事業主を支えたい中小企業診断士

【第3回 誰かの未来を照らすための灯を掲げる】
過去の記事:第1回第2回

総合電機メーカーに勤務し、現在は情報システム部門の組織責任者として自身が所属する組織の改革と活性化を推進している松葉修さん(以下敬称略)。家庭では妻と娘と楽しく過ごしている。第3回目は、中小企業診断士合格後のこれからについてお話をうかがった。

個人事業主を支援する始まり

2023年、松葉は中小企業診断士試験に合格した。だが、それは彼にとって「ゴール」ではなく、「入口」だった。むしろ、ここからが本当のスタートである。実家の酒屋が廃業したあの日に抱いた「小規模事業者を支援したい」という願い。その原点に立ち戻り、松葉は今、新たな道を歩み始めている。

現在も総合電機メーカーで企業内診断士として働いている。社内でも、中小企業診断士の受験で得た知識を活かし、課題解決に取り組んでいる。主体性を持てない社員にいかに自責で仕事をしてもらうかという課題がある。事例Ⅰで学んだ「いかにしてモチベーションを高めるか」というところに、ヒントがあると考えている。部下が仕事にやりがいを感じ、自己成長を感じてもらえるように働きかけている。

強みを活かし、領域を広げる

副業での診断士活動の可能性も探っている。サポートの中心に据えるのは、IT・DX領域である。情報システム部門で培ってきた知見を活かし、中小企業の業務効率化やデジタル化を後押しする取り組みを構想している。

「DXは大企業だけの話ではない。むしろ、人的リソースが限られる小規模事業者にこそ、その力が必要だ」と松葉は語る。中小企業の現場では、表計算ソフトでの業務管理や紙ベースの業務がまだまだ主流で、少しの改善で、大きな効果を生むと感じている。

加えて、「将来的にはITストラテジストや情報処理安全確保支援士などの国家資格を取得したい」と意欲をみせている。これらの資格を通じて信頼性を高め、現場での支援に説得力を持たせることを目指している。形式だけでなく、中身のある実践的なサポートを重視している姿勢がうかがえる。

強みであるIT・DX領域だけでなく、さらに幅を広げようとしている。関心を寄せるテーマは、事業承継、外国人活用、地域活性化、そして農業や漁業といった1次産業にも及ぶ。経験はない。「経験がないからこそ、学び続けたい」と言う姿勢が、むしろ松葉の信頼感を高めている。

今は、大阪府中小企業診断協会の「農業経営研究会」や「スモールM&A研究会」に参加している。「地方には課題が山積みだが、サポートできることがたくさんあるということでもある」 

未知の分野に飛び込む不安よりも、新しい知識を得られる喜びのほうが大きいという。研究会での学びも、すべて次の一歩のための準備だ。

「何のために働くのか」を問い続ける

活動の軸には、「誰のために、何のために働くのか」という一貫した問いがある。小規模事業者・個人事業者の役に立てるように「最初は報酬がなくても構わない。とにかく経験を積みたい」と熱く語った。その言葉には、強い覚悟がにじんでいる。

企業規模が小さいほど、外部の専門家に相談するハードルは高くなる。資金的な制約もあれば、心理的な壁もある。だが、そうした小規模事業者こそ、もっとも助力を必要としている層である。本当に必要な人たちの力になりたいという気持ちが、彼の行動指針を明確にしている。

実家の酒屋を営んでいた父親の姿は、今も彼の原点だ。母と2人で店を切り盛りし、廃業という決断を下した父。その背中をみて育った松葉には、小さな商売の尊さと危うさが、誰よりも心に刻み込まれている。「あの時、父に相談できる相手がいたら…」という想いが、松葉を支援者の道へと導いている。

父が大切にしていた酒屋の灯。その記憶を胸に、今は誰かの未来を照らすための灯を掲げる役割を担おうとしている。この歩みはまだ始まったばかりだが、確かな意志と実行力をもって、静かに前進している。








西田 雄一郎

西田 雄一郎 取材の匠メンバー、中小企業診断士
京都府生まれ。地方国立大学を卒業後、銀行に入行し、法人融資等に従事。その後、大手ITベンチャー企業にて、組織構造を変革するマネージャー職や東海エリアの営業責任者を経験。2025年に屋号「かんさい経営サポート」で開業。同年に経営学修士(MBA)修了。中小企業診断士、ビズクリ認定サポーター、事業承継士として登録。事業承継協会、ケアビジネス研究会、スモールM&A研究会などに所属。

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