【第2回 教材は一つに絞って徹底的に使い倒す】
過去の記事:第1回

大手電機電子メーカーに入社して以来、32年間にわたり経営企画・経営管理業務を担当してきた菅野さん。2020年に役職定年を迎えたことをきっかけに、自身のこれからのセカンドキャリアとして選んだのは中小企業診断士であった。今回は1次試験、2次試験の対策から合格までのプロセスとその勝因をうかがった。
地道な積み上げスタイルで1次試験を突破
菅野さんの勉強スタイルは、通信教育(スタディング)を活用して自宅リビングで夜に2時間ほど毎日欠かさず行うというものである。予備校も検討したものの、コロナ禍であったこと、そして自分のペースでこつこつと学習を進める方法が自分に合っていると思い選択しなかった。
一般的に夜の時間帯をベースにした勉強スタイルは、残業や飲み会などのさまざまな不確定要素があるために、継続性のハードルが高いといわれている。しかしその点について菅野さんは、「コロナ禍で完全在宅ワークが続いており、飲み会などの頻度も少なく十分な学習時間を確保できた」という。一方で、在宅での学習は長くなればなるほどマンネリ化を招く恐れがある。そこで菅野さんは、週末は学習場所を図書館やカフェに変えるなど、気分転換も兼ねた工夫でこの問題を乗り切った。
1次試験の勉強を開始してからわずか7か月という短い期間であったが、初めての1次試験を無事に一発でクリアした。菅野さんにその勝因についてうかがうと、「経済学と中小企業政策は初めての学習で暗記には苦労したが、何より学ぶことが楽しかった」と受験勉強の大変さを少しも感じさせないくらいの笑顔で教えてくれた。そして「基本的に複数の参考書や問題集に着手するよりも、これと決めた一つの教材を徹底的にやり抜く方が効果的だと思う。スタディングの教材を何度も繰り返し、ノートにまとめるという昔ながらの勉強法で地道に取り組んだことが奏功した」と自信に満ちた表情で語ってくれた。
合格の一報を妻に伝えると、お祝いの言葉とともに、「子供たちよりも勉強していたんじゃない!」とねぎらいの声をかけてくれた。普段から勉強している自分の姿を見て応援してくれていた妻の気持ちが本当に嬉しかった。
1回目の失敗を糧に、受かるべくして受かった2次試験
こうして、順調に1次試験を突破した菅野さんは、2次試験も1次試験と同様にスタディングの教材で対策を進めた。しかし、結果的には初めての2次試験は残念な結果に終わってしまう。この時の失敗を菅野さんはこう振り返る。「スタディングの2次試験の教材は、解答を導くロジックを中心に書かれている。そのため、過去問を解いてみても、いま一つ自分の中で腹落ちせずに納得感を得られなかった。それでも、学習時間が不足していた面があったので、結果的には“準備不足”ということになる」
1回目の反省を踏まえ、翌年変えたことが二つある。一つは、中小企業診断士受験予備校「TBC受験研究会」を親会社にもつ「早稲田出版」のYouTubeを参考にしたことだ。これは過去問の解説が丁寧になされていた。スタディングの教材の補助的な位置づけで活用したところ、解答の導き方に納得感を持つことができたという。もう一つは他の受験生と交流を持ったことである。同じ会社内の受験生とお互いの過去問の解答を持ちよってディスカッションしながら思考を深めた。
こういった取り組みにより、解答の組み立て方、作り方をレベルアップさせて見事2回目の挑戦で合格を勝ち取った菅野さん。会社のデスクで合格発表サイトに自分の受験番号を見つけた時の様子を、「心臓がキュっとなる」という独特な言い回しで表現してくれた。1回目の失敗を糧にして見事リベンジを果たした瞬間であった。

杉本 剛 取材の匠メンバー、中小企業診断士
大阪府豊中市出身。東京協会中央支部所属。大学では薬学を専攻し卒業後に薬剤師資格を取得。大学院では創薬研究に携わり学位(医学修士)取得後、製薬会社に入社する。自社医薬品の育薬(有効性と安全性のデータを蓄積し新薬をより良いものへと育てること)と営業支援業務に従事する。その後、マーケティング部門で自社製品の成長戦略の策定と新薬開発プロジェクトに参画する。医療やヘルスケア分野に強みを持つ。